第4話武器と特性選び

「うーん・・・武器も選べとなると、何が良いんだろうか」


お互いに愛を確かめ合った日から既に四日が過ぎていた。

異世界に転生しなければならないという事を告げられた後、特典として魔法や俺自身の身体にもたらす特性等を選んでいいと言われ、色々と書かれた紙と睨めっこしていた。

予定としてはすぐに決めて転生しないと偉い神様が煩いらしいが、俺とソフィはそんなの関係ねぇと言わんばかりに緩りと選んでいた。

選ぶ物全てそれぞれにポイントが着いているらしく、最大で五百ポイントまでとされていて、

ソフィと身体を重ねる前に選んだ星焔魔法という特殊魔法は六十ポイントだった。

どうせならポイントを余さず使いたいと思う俺は今、異世界に持っていく武器を選んでいた。


「気になるなら現物なんかもお見せ出来ますから、ゆっくり考えてくださいね」


隣でソファーに座り、俺の腕を腕組みして傍から離れない女神ソフィ。

この四日で思った事だが、ソフィは全くもって俺から離れる事がない。

常に抱き着いて一緒に悩んだり、笑ったりする彼女はまるで甘える猫のように何時もべったりである。

俺はそんなソフィが好きで、何事も一生懸命な所も好きである。

特に料理なんかは、神様だからすぐにポンッと出せるだろうがソフィはちゃんと一から料理作るのだ。

しかも料理の腕がみるみる上がっており、今日もどんな料理を作るか楽しみでしょうがない。


「お、現物を見せてくれるのか!それじゃあ、この聖剣キャリバーっての見せてくれる?」

「聖剣キャリバーは・・・これですね」


ソフィが目の前に突如として現れた片手長剣。

刀身は白く、その周りにキラキラと金色や銀色等の装飾が一層眩しさを引き立たせていた。

これを見た子供達は多分、大はしゃぎだろう。

修学旅行で安く売ってる剣のキーホルダーでさえ、めちゃくちゃにはしゃぎ出すからなぁ子供って。

しかし、俺はこう・・・キラキラ通り越してギラギラしてる剣はいらない。

確かに聖剣だから色々と凄いんだろうけど、見た目がねぇ・・・。


「お気に召さない様子ですね」

「眩しすぎるんだよ・・・目が痛い」

「でしたら私、女神ソフィが選ぶ最推しの武器をお見せしますか?」

「ん?めっちゃ気になる・・・見せてくれっ!」


俺は気になりつい熱が入ってしまった。

童心に戻ったような感覚に少し恥ずかしさを覚えてしまう。

先と同様にソフィは目の前に武器を出して見せた。

その武器は俺が良く見慣れた物、日本人なら馴染みが深い武器であった。


「・・・太刀?」

「名を氷蘭鉄心と言います。どうぞ・・・鞘から抜いて刀身を見てください」

「わ、分かった」


鍔の部分を親指で強く押すと、カチッと音がなり、そのまま右手で柄を強く握り鞘から太刀を抜いてゆく。

刀身を見た俺は息を飲んだ。

刀身は黒く、どんなものでも呑み込みそうなくらい漆黒だった。

そして一番目を奪われたのは刃の部分。

氷のように透けていて、煌めく星のように綺麗であった。


「これ・・・凄いな!美しいって言葉じゃ──え?」

「どうかしましたか?」

「えっと、この太刀を握ってからか?なんか視界に何かの流れの様な物が見えるんだけど」


ふらっ〜とした様な、確かにそこにあって、そこに無いような物が俺に見えている。

ちょっと不気味さを感じてしまうのだが。


「それは魔剣ですからね。確か・・・・・・空気の流れが見える魔剣でしたか。因みに世界七大魔剣の一振ですよ!」

「でも魔剣って言うからには何かしら代償が有りそうなんだけど。怖いんだけども」

「確かに魔剣には命を奪う剣や、精神を蝕む様な代物がありますが、その太刀は大丈夫です」

「ソフィが言うなら大丈夫・・・かな」


しかし、ここまで美しいと思った事はない。

精々かっこいいとしか思ってなかった剣や太刀だが、これは周りの物とは違う気がした。

柄を握る感触も、何度か振るってみた時の具合も全てが俺に合っている様な気がしてならない。


「ソフィが勧めてくれたし、これにする。握った具合も良いしさ」

「お気に召してくれて良かったです♪その太刀は七十ポイントですよ」


星焔魔法と合わせると百三十ポイントになるのか。

残りは三百七十ポイント・・・大事に使わないとな。


「えっーと、続いて・・・特性を選んじゃいましょうか」

「特性ってイマイチなんだよなぁ。こう、ピンって来ないというか」

「そうですね・・・この場合は生まれ持った才能だと考えてもらえば良いかと思います。もっと簡単に説明するとスキルの様な物です」

「スキル?技能的な感じかな」

「いいえ。技能とは生まれ持った才ではなく、後から学ぶものです。なので特性をもっともぉーっと分かりやすく説明すると、ゲームとかで固有スキルとかって聞いた事ないですか?」


固有スキルとかはゲームで度々目にしてきた。

元々キャラが持つスキルでそのキャラにしかないスキルの事だ。

色んな面で探索とか戦闘とかで活躍するスキルだったはず。

あぁ〜なるほど!俺の中でソフィの説明が納得出来た。


「固有スキルは聞いた事あるぞ。それにソフィの説明が上手くてよく分かった」

「それは良かった♪では選んでしまいましょう!」


そうして紙を見て何にするか見ていたんだが、あり過ぎて困っている。

意味の分からない特性があったり、別に特性としてじゃなくても後から十分学べるだろうとツッコミを入れたくなる様な特性があったりした。

特性が書かれた紙を見てからどれぐらい時間が経ったか分からない。

こういうのは生きている内に、異世界に行ったらなんて考えている奴はすぐに決められるのだろうが、俺はそんな痛い奴ではない。

ダメだ・・・・・・頭が痛くなってきた。


「あなた・・・少し休憩しましょう。先程から唸ってばかりですよ」

「うぅ・・・」

「こっちにおいで、あなた♪ぎゅっとしてあげますから・・・」


俺はソフィの胸に顔を埋め、自らソフィの身体に腕を回した。

あぁぁ抱き心地最高過ぎる・・・・・・。


「よしよーし・・・あぁ転生してしまうと、こんな風に抱くことも出来ないなんて・・・」

「ソフィ・・・・・・眠い・・・・・・」


ソフィを抱きしめると次第に眠気が襲ってきて、うとうとし始めた。

少しぼやける視界や、ソフィの温かい体温が余計に眠気を引き立たせる。


「そのまま寝てくださって構いません。でも私に寝顔を見せちゃっても良いのですか?きっとチュッチュッてしますよ」

「好きにしてくれ・・・・・・寧ろ、されたい・・・」


俺はゆっくりと瞼を閉じると、頭を撫でられているのが分かった。

まだ少しだけ意識はあるが、そんな中で小さな声が聞こえてくる。

またソフィが何か俺に言っているのか分からないが、きっと可愛いだなんだと言っているのだろう。

でもそれが俺にとっては嬉しくて心が少しずつ満たされているのだと実感できる。


───────────


ソフィに抱かれながら寝てどれぐらい時間が経ったのだろうか。

目が覚めて起き上がると見慣れた白い空間が視界に嫌でも入る。

いつの間にか俺はベッドに寝かされていたらしい。


「ソフィは、何処だ?」


必ずそばに居てくれる人が、珍しく居なかった。いや、人じゃなくて神様か。

ベッドから出ると足元を見ていなくて、転けそうになった。

視線を下に動かすと、異世界に転生する時に持っていくと決めた武器──氷蘭鉄心が落ちていた。

流石にそのままにはしてはダメだと思った俺は手に持って、じっーと見つめる。

今考えると太刀を持っていたとしても、それを扱える能力がなければ意味が無いよな?

特性が書かれた紙に、武器を上手く扱える様なものってあったかな・・・。

俺は紙が置いてある小さな机の方に向かい、早速探してみる。

・・・・・・っと、あったあった。


「〈剣術の極〉と、もう一つが〈剣聖〉ってやつかな。具体的にどんな内容なんだろう?」

「剣を振るうあなたに必要な特性だと思いますよ。ですがどちらも似ている特性なので、選ぶなら〈剣聖〉を選んだ方がいいかも知れません」

「うお!び、びっくりした」

「驚かせてすみません・・・〈剣聖〉を選ぶ理由は名前がかっこいいからです!それ以外に特に理由がないですね」

「そ、そうか。なら剣聖を選ぼうかな」

「三十ポイントになります。特性関連はポイントが意外と少めなので、いいなぁと思ったら迷わず取ってみるのも吉ですよ」


なるほどなぁ。確かにそこそこ良さそうな特性でも三十ポイントなら他にも選んだ方が良さそうだ。

俺は紙を持ってソファーがある所まで歩き、座って紙を見始める。

そしてソフィは静かに俺の隣に来て腕を組み、手を握った。


「この特性とかどうかな?魔力の泉って言うんだけど」

「体内魔力量がほぼ無限に近くなる特性ですね。たとえ魔力が無くなろうとも瞬時に回復します。えっと・・・先程からよく考えて選ばれてますね。魔法を使うのなら最高の特性ですよ」

「よく考えて?いやそんなに考えてないけど。こんなものかなぁと思って選んでるし、やっぱり最終的にソフィにどうかって聞いちゃうし」

「沢山聞いてください。お互いに協力し、愛し合い、乗り越えるのが夫婦ですから♪」


ぎゅっと腕を組む力を強くし、顔をすりすりと擦り付けてくるソフィ。

毎度甘えてくる時に起こす行動である。

それから一時間程考えて、ようやく決める事が出来た。

決めた特性の内容はこんな感じだ。


剣聖 三十ポイント

魔力の泉 三十ポイント

並列思考 四十ポイント

闘王 三十ポイント

壊帰眼 五十ポイント


並列思考は読んで文字の如く、一度に別の事を考え処理する特性である。

マルチタスクなんて呼ばれる事もあるらしい。

闘王の特性内容は剣聖の格闘術バージョンだ。

達人並に拳を振るう事ができる。

この中で一番やばいと思う特性が最後に決めた壊帰眼である。

視界に入れた物、人・・・ありとあらゆる森羅万象を壊し、無に帰す眼を持つ事ができる特性だ。

しかしデメリットが大きく、一度使うと使用者の寿命の一年を失う。

なので壊帰眼の特性は普段から封印しておいて、いざという時に使う様にとソフィに念押しされた。

特性だけで合計百八十ポイント。武器、魔法と合わせると全部で三百十ポイントとなった。

残りが百九十ポイントで、残りの紙には外見と書かれていた。

ぶっちゃけた話、外見についてはどうでもいい。

今のままで無理に変えくなくてもいいというのが俺の考えなのだが。


「次は外見ですけど、ここは残り全てのポイントを私に任せてもらえますか?」

「え・・・外見変えるのか?」

「勿論です!転生するのですから、新しい身体とか楽しそうじゃないですか!」


えぇ・・・・・・。

しかし、ソフィに任せてもいいかもしれない。

俺の事を第一に考えてくれるソフィだからこそ、安心出来る。


「分かった・・・ソフィに任せる」

「任させました♪」


ソフィはニコニコと笑いながら、紙を見つめていた。

偶に覗こうとすると「ダメですよ・・・もう♪」と言って隠してくる。

それも含めて可愛いと思ってしまう。

ソフィの邪魔をしては決まるのもなかなか決まらなくなってしまうだろう。

さて、俺は俺で休んでおこうか。

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