第3話俺の愛する女神様
謎の女神──ソフィが作ってくれた料理を食べ終え、俺は出された紅茶を飲みながらこれから話されるであろう、転生の話とやらをソフィがするのを待っていた。
紅茶はストレートティーではなく、俺の大好きな午〇の紅茶のミルクティーに味が似ているものである。
件のソフィは少し前に色々と準備があると言って急に目の前からシュンと消えていった。
流石、女神様だと思ったと同士にワ〇ピースの見〇色の覇気を思い出した俺である。
「あなた、ただいま戻りました!」
「おう。おかえり」
「あぁ・・・・・・この会話だけでも幸せを感じるのは何故でしょう」
ここに来て、いきなり俺の事を襲い挙句童貞を奪った存在であり、俺の事を『あなた♪』とまるで最愛の人を指すかのように呼んでくる存在が彼女──女神ソフィである。
「さて、お話をしましょうか」
「あぁ頼む。いきなり転生って言われても分からんしな」
ソフィは俺の座ってる椅子からテーブルを挟んで反対の椅子へ座った。
座る際にピンクブロンドの髪がふわりと浮くと、女性特有の甘い香りがふんわりと舞う。
俺と目線が合うとにこりと笑いながら、ようやく説明が始まった。
「食事する際に言ったと思うんですが、私より偉い神様──ジジイ達は女神である私と人間であるあなたとが、くっつくのが良くないみたいです。ジジイ達曰く、可愛いと思うのなら旅をさせよと、転生させて人生やり直しさせろと言うんです。まるで私と私の最愛の人を遠ざけるように」
「それで転生なのか。偉い神様にとって何か都合の悪い事でもあるのか?何も無いならそんな事を言うはずがないと思うんだが」
何かしらの理由がある。だからこそ一緒にさせてはダメだと、そういう考えじゃないだろうか。
仮に理由があるのなら説明してもらいたい。
ぶっちゃけた話、俺はこのままでも全然良いし、出会った時にソフィに言われた通り彼女に溺れてきている。
お恥ずかしながらだが・・・・・・。
「それがイチャイチャするのが目障りだと言うんです!頭禿げてる人ってなんでこんな考え持つんですかね!?」
腕をぶんぶん振りながら、全力で心の内を吐き出す女神様。
腕を振るう度に連動してそこまで大きくはないが、それでも女ですと主張する胸がむにゅんと上下に動き出す。
「禿げてるのね・・・・・・偉い神様・・・・・・」
俺はソフィの胸を見ながら、偉い神様が禿げている真実を知った。
誰得過ぎて脳内の容量を少しだけ返してもらいたいと思った俺である。
「でも、一度転生してまた死んでしまった時、その時は・・・・・・その時こそはラブラブしても良いと言ってましたので、我慢しました」
「あぁ転生して死んでも、またここに来るのか」
「そうです。そして今持ってきたんですが、この紙を見て貰えますか?」
ソフィから四枚程、びっしりと日本語で書かれた紙を渡された。
ざっくり内容を見てみると、魔法だの特性だの外見だのと色々と書かれていた。
「何これ?どういう意味なんだ?」
「異世界に行くのに何も無しだと良くありません。なのでこの紙に書いてある物をあなたが選んで下さい。そうしたら私がそれをあなたに差し上げますから」
「ふぅん。特典的な物だと考えても良いか?」
「その考えで構いませんよ。でも選ぶのにもポイント制なので、最大で五百ポイント分選べますから、ゆっくりと考えて下さいね♪」
ソフィの笑顔を見た後、俺は渡された紙に再度目を通す。
一枚目の紙には〈魔法〉と書かれていた。
誰もが生きてる内に憧れる魔法。しかし俺の生きてた現代社会じゃそんな物は無い。
しかしあると信じて痛い行為をする輩も少なくは無い。
周りから厨二病なんて馬鹿にされる連中なんかもいるしな。
〈魔法〉と書かれた紙には色々と書かれており、創造魔法や破壊魔法といった見るからにバランスが崩れそうな魔法ばかりである。
「なぁこの魔法の紙よ。どれも強そうなんだが?」
「勿論ですよ。だって全て特殊魔法ですから!」
「・・・・・・特殊・・・・・・魔法?」
俺が首を傾げると、ふふっと笑いながらソフィはにこりと笑う。
「五千万人に一人の割合で特殊魔法を扱える人間が生まれるのです。そして、あなたはなんと!その一人に選ばれたんですよ!」
「・・・・・・そっか」
「反応、薄いですね」
「わ、わりぃ。もっと喜べば良かったな!」
「大丈夫ですよ。そんなクールな所も好きですから──あなた♪」
そう言うといきなり立ち上がり、椅子を持ち上げて俺の隣に来たソフィはそのまま椅子を置いて座り出した。
俺の右隣に座っている感じで、かなり距離も近く、何をやっているんだ?と思った俺と目が合うと恥ずかしかったのか、少し顔を赤らめて微笑んだ。
つーか、やばいな。その笑顔の破壊力は。
ドキッとしたとかじゃなくて、きゅんときた感じだ。
俺は慌てて紙に視線を戻すと、一つだけ目に入った魔法があった。
「星焔魔法?」
「星々と星に宿る焔の力を扱える魔法ですね。
実はその魔法、私の祖父が作った魔法です!」
身体をぐいっと近づけて来るソフィ。
既に俺の腕を自身の腕で絡めており、正に恋人の様にぎゅっとされている状態だ。
しかし、ソフィは祖父が好きなのかこの魔法の話になった瞬間、ぱぁっと表情を喜ばせていた。
そんな表情を見ていると自然とこちらも笑顔になってしまう。
「俺、これにしようかな」
「まだまだいっぱいありますけど、こんなに早く決められて良いのですか?全て目を通した訳ではないでしょうし」
「いいや、これにする。ソフィの表情見てたらこの魔法にしたくなった」
「ふぇっ!?も、もしかして、そんなに顔に出てましたか?すみません。祖父に育てられて、あの方の事は親の様に思っていますから」
「でも一緒に過ごしてないよな?どこに居るんだ?」
その質問を聞いた瞬間、ソフィは少し表情を曇らせてしまった。
してはいけない質問だったと思った俺はすぐに聞かなかったことにしてくれと言おうとしたが、ソフィの言葉がそれを遮った。
「・・・・・・私を庇って、もういません」
「そうか、全てを言わなくても良い。誰にでも語りたくない過去なんて沢山ある」
「優しいですね。本当に素敵な人」
過去の事を思い出したのか、瞳が少しだけ潤んでいたソフィはそれでも俺に笑顔を向けている。
「さぁ、選んでしまいましょう!暗い話は終わりです」
「一つだけ聞きたいことがあるんだが、良いか?」
「なんでしょうか?」
「いつ転生するのか気になってさ」
少し笑顔を取り戻したソフィだが、またも暗い表情を浮かべる。
それも先程よりも機嫌が悪そうだが、大丈夫だったかこの質問。
「この紙に書いてある物を選んだら・・・・・・すぐに、です」
「はぁ!?それは幾らなんでも早すぎる!」
「ふぇ?」
「せめてもう一回ぐらいソフィを抱きたい」
俺は率直に思った事を喋った。
「ふぇぇ!?あ、あなた。そんなにストレートに言われたら、私、わたし・・・・・・我慢出来ません!!」
「うお!ちょ、ちょっと待て!選んでから──」
「ダメです!ちゃんと発言の責任を取ってください!」
俺を椅子ごと押し倒したソフィ。
しかし、痛みはなく代わりにぼふっと柔らかなベッドが俺とソフィを包み込んだ。
さっきまで椅子とテーブルしか無かったのに、流石は女神様ソフィ。
そんなにソフィの瞳にはハートマークが・・・・・・。
あぁダメだこれ。完全にスイッチ入ったわ。
俺はもう諦めてソフィに任せようと決めた。
「あなた♪転生しても忘れられないくらい気持ち良くしてあげますね」
「ソフィ・・・・・・えっと、その・・・・・・」
「愛してます、あなた。ずっと私・・・待ってますから」
「うん、待っててくれ。俺の愛する女神様」
「勿論です。私の愛する人♪」
その後、五回ほど果てて俺は意識を手放した。
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