第2話童貞卒業RTAはっじまっるよぉ!

俺は登校中、チャラ男にナイフで背中を刺され死んでしまった。

そう・・・死んだんだ。

それなのに意識があるのは不思議を通り越して恐怖すら覚える。

死後の世界なんて知らないし、死んだ後も意識があるのかもしれないが、俺はそんな事信じたくもない。

だが、目の前の真っ白な空間を見る度に意識があるんだなと思ってしまう。


「人の気配もないし、俺だけなのか・・・・・・」


俺はその場で座り、精神的に疲れた頭を少しだけ休ませようとした。

しかし、後ろから何かに包まれる様な感覚を覚え、後ろを見ようとするが身体が動かない。


「可哀想な子。とても可愛らしくて、見ているだけで微笑みが零れそうなくらいに愛おしい子」

「だ、誰だ!」


顔も動かせず、ただ抱きしめられている事しか感じられないこの状況。

それにさっきまで自分しかいなかった空間に突如として現れた謎の声。

驚くのも当たり前である。


「もう少しだけ・・・・・・ぎゅっとさせてください。満足したらお顔をお見せしますから♪」


声だけだと物凄く落ち着きのある女性の声だと分かる。

それも声優が演技で出すような綺麗な声だ。

俺は横目で少しでも後ろを確認しようと、俺を抱きしめているである謎の存在を見ようとした。

ハッキリとは見えないが、俺の横顔にピンク色のさらさらとした髪がふんわり当たっていた。

風呂上がりのシャンプーの匂いなのか、元々の匂いなのかは分からないが、とてつもなくいい匂いがして変に緊張してしまう。


「少し身体が固くなりましたね。もしかして・・・・・・緊張してますか?」

「当たり前だろ。顔も分からないんだぞ!」

「ふふっ・・・・・・ほんとに可愛いですね。流石、私の選んだ人・・・」

「それ、どういう意味だ?」

「さぁ、どういう意味でしょうねぇ。左手の薬指を見たら分かるんじゃないですか?」


俺は言われた通り、左手の薬指に目を向けた。

そこにあったのは銀色の指輪だった。

うん、確か左手の薬指にはめる指輪と言えば結婚指輪・・・・・・。

っておい!選んだ人ってその意味かよ!?


「ちょ、ちょっと待ってくれ!これは一体どういう・・・・・・」

「慌てちゃって可愛い子ですね。私、気に入った物は傍に置いてないとダメなんです♪」


後ろから抱きしめていた感覚が消え、俺の横をふんわりと通り過ぎた存在は、前に来て俺を押し倒した。

息がかかる程に近く、唇を少しでも動かせばキスしてしまう程に急接近した存在は俺の目をずっと見つめた。


「うん!やっぱり可愛いですね。でもでも、こんなに可愛いのに手放すのは嫌です!」


俺の顔からようやく顔を離したはいいが、体勢があまりにも良くない。

俺が下でピンクブロンドの髪の美女が上という体勢である。

どうしたらいいんだと思いながらも美女の顔を見ると本当に綺麗だなと思ってしまった。

ぱっちりと開いた目に、少しだけ膨らんだ唇。

真白色の肌にマッチしているピンクブロンドの髪がふんわりと彼女全体の魅力を引き立てていた。


「そんなに見つめてどうしたんですか?あっ、もしかして見蕩れちゃいましたか?」

「見蕩れていない。でも綺麗な女性だなとは思った」

「そうですか、そうですか。でも安心してください。今からたっぷりどっぷり私に溺れるようになりますから。ささ、先ずは服を脱ぎ脱ぎしましょうねぇ〜♪」


そう言って俺の服を脱がせようとしてくる美女。違う、何かが違う。

こんな時は普通お互いの名前とか知り合うんじゃないのか?

いきなり服を脱がせようとするのはおかしいだろ!?


「おい!やめろ!」

「大丈夫ですって、怖くないですよぉ。私、ソフィって名前です。名前も分かったことですし、イチャイチャしましょう!」

「え?いやほんと、待ってくれ!あっあっ・・・・・・」


余りにも勢いが凄すぎて、あっという間に服を全て脱がされた。

勿論、俺の大事な息子をガードするパンティもだ。

そしてこんな美人──ソフィに見られては黙っても大きくなってしまう。

そう、今の俺の息子は立派な大人へと成長を遂げていた。

頼むからいつものように落ち着きのある息子に戻ってくれ・・・・・・。


「まぁ!もうこんなに大きく・・・・・・大丈夫ですよぉ。優しくしてあげますからね・・・・・・。先ずはキスを・・・・・・しちゃいますね♪」


俺の顔にソフィの顔が近づき、唇と唇が重なる。

そして次第に深く、絡み合ったキスへと変わっていった。

・・・・・・その後はもう止まらなかった。

完全にソフィのペースで、何度も何度もソフィの愛が俺の身体へと流れ込んでくる。

俺自身も何度も果て、その度にソフィの中へと自分の息子から放たれるオタマジャクシを流し込んでいた。

いや・・・・・・強制的に流し込まれていた。

何せ体勢がずっと騎乗位だからである。

そして俺はまた果ててしまい、意識を手放すのであった。


────────────


俺は柔らかな感触を横で感じながら、目が覚めた。

ふかふかのベッドに横になっているのか、心地が良くてまた寝てしまいそうだが、股間に少しの痛みが走り眠れない。

昨日は何度、果てたか分からない。分からないぐらいにオタマジャクシを放出した。

故に股間が痛いのだ。

死後の世界で始める童貞卒業RTAはっじまっるよぉ──じゃねぇんだよ!!

いきなり美人現れて童貞卒業は流石に漫画展開過ぎて笑えない。

そして一つ思った事がある。それは股間の痛みだ。

痛みを感じるって事は完全に俺の意識は現実的なものだと言えるだろう。

つまり今俺がいる場所は現実であり非現実な世界。

普通じゃ有り得ないし認めたくないが、いきなり現れた美女が非現実を証明している。

嫌だな・・・・・・股間の痛みでこんな事考えちゃう自分が──はぁ。


「ん〜わぁうふ・・・。んん?起きていたのですか・・・」


欠伸をした後、俺の顔を覗き込みまだ眠たげな瞳をこちらに向けてくる美女。

彼女は自らをソフィと名乗った。

ソフィは眠たげだが笑顔を作り俺を見てくる。


「おはよう・・・・・・あなた♪」

「なぁ、一つ質問するぞ。お前何者なんだよ・・・・・・いきなり現れて、大事な大事な童貞奪いやがって」

「ふふっ、童貞・・・・・・奪っちゃった♪」

「奪っちゃった♪・・・・・・じゃねぇ!」


俺の中の将来ではいつか出会えるであろう、一番愛している人に童貞を捧げるつもりでいたのに。

こんな美人に奪われるとは、ちょっと内心嬉しがってる俺がいるのが悔しい。


「私が何者か?なんでしたっけ??」

「人間ではないだろな」

「あっ思い出した!女神やってるんですよ!」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


俺が黙っていると何故かソフィは目を瞑り、こちらに唇を寄せてくる。

しかし俺からキスして欲しいのか、一定の距離で止まった。

コイツ、何故いきなりキスをしようとしたのかが分からないんだが。

別にそういう雰囲気でもなかったぞ。

俺はキスなどしない。なにせ昨日沢山したからしばらくしなくてもいいわ。


「お前何やってんの?」

「え?キスする流れじゃなかったんですか?」

「どこかだよ!?何者かって聞いてんのになんでキスするんだよ!?」

「いや女神やってるんですよとお伝えしたじゃないですか。もしかして女神が分かりませんか?」

「いや分かる・・・・・・要は神様なんだろ?ソフィは」

「──っ!?!?今名前で呼びました?呼びましたよね!?あぁぁあ!!嬉しすぎますぅぅぅぅううう!!!」


余程嬉しかったのか、プルプルと震えながらベッドからガバッと上半身を起き上がらせ、そのまま仰向け状態の俺に覆いかぶさってきた。

逆レ〇プされている時は名前呼ぶ余裕なんてなかったしな。

しかしそんなに喜ぶものなのか?


「おい!上に乗るな!」

「大丈夫ですよ。襲ったりしませんから──おはようのハグです」


ぎゅーっと優しく抱きしめて、俺の胸板に顔をぐりぐりと擦り付けてくる。まるで甘えてくる動物のように。

しばらくハグが続き、ソフィは満足したのか俺から離れベッドから出た。

俺も続いてベッドから出て、乱れたベッドシーツや掛け布団なんかを綺麗にする。


「お腹、空いてませんか?」


俺の腹に腕を回し、後ろからハグしながら聞いてくるソフィ。

お前そんなに俺にくっつくのが好きなのかよ。

しかし確かに腹は減った。

意識が覚醒してから全く食を口にしてないし、そのままプレイしてしまった為、尚更腹が減っている。


「お腹空いたよ。何も食べてないし」

「それならここで食べましょう!」


そうソフィが言うと、何も無いところから簡素なテーブルと椅子が出てきて、テーブルの上に食事が出てきた。

いやどんな手品だよ・・・・・・いや手品じゃないか。

だってこの人女神様だもんな。


「美味しそうだな」

「あれ?驚かないんですか?」

「いちいち驚いてたら、キリがないだろ?それにソフィは女神なんだから、出来て当然なんだろうなと思っただけだ」

「勿論、出来て当然です!」


腰に手を立てて女神ですから!と主張するかのようにソフィは言った。

俺は椅子に座り、おかずに目を通す。

ソフィも続いて椅子に座って俺の反応に期待しているのか、俺の顔をじっーと見つめていた。

寝起きなら少しの料理だけで十分だと思う俺だが、並べられていたのはシチューやサラダ、ベーコンを玉ねぎで炒めた様な料理だった。


「昨日、エッチが終わった後に作り置きして置いたんですよ」

「それじゃあ、この料理はソフィが作ったのか?」

「そうです!作った後に温かいまま保存していたので、出来たてとなんら変わりませんよ」


いやちょっと待てよ。あの後料理を作れる程のスタミナがあるとか凄すぎるだろ。

確かに俺も何度も果てたが、ソフィもそれは同じで何度も絶頂を迎え身体をビクンと震わせていた。

もしかしてだがそれも女神だからと言う理由で通るのか?たぶん通るんだろうな。

とりあえずスプーンを使い、シチューを一口食べる。


「──美味いな」


ぶっちゃけると普通に美味い。

普通なんだが、自分の母親が作った味によく似ていた。

喧嘩の毎日だった中学時代、家に帰れば大抵の家庭なら怒られるだろうが母親は違った。

ちゃんと正義の為の拳だと言う事を知っていてくれた母親は、俺が家に帰ると救急箱を持ってきて消毒や絆創膏、ガーゼなんかを傷口に貼ってくれる優しい人だった。


「あなたの為にずっと作ってあげたいのですけど、無理っぽいですね」

「ん、なんでだよ?俺の事、あんなにも好き好きって言ってたろ」


昨日のプレイの最中、耳元でずっと愛を囁いていたソフィ。

そんなソフィは少し寂しそうな表情を浮かべている。


「だって仕事もろくにしない偉そうなジジイ共が、転生させろと煩いんですもの」

「──転、生?」

「食事が終わったら説明しますね。先ずはお腹を満たしましょう」


そう言ってソフィも食事を口に運び出す。

転生って事は生まれ変わるって事だよな。

え?いや別に俺としてはこのままでいいんだが。

なにせ自分をここまで愛してくれる人が近くにいるんだし、このまま過ごせば正直ソフィの事は好きになりそう。

まぁ先ずは食事を終わらせるか。

俺は俺の為にとソフィ作ってくれた料理を黙々と食べるのだった。

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