また空は見る。

@fus_havurac

第1話 始まりは。

 _ただただ、日常が過ぎていくだけ。

 いつかこの儚い生命いのちが尽きるなら…キレイで在りたいと想う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「行ってきます。」


 仏壇の前で手を合わせた。今は亡き母だった。母は私が産んですぐ亡くなったと父から聞いたが そんな父は無愛想で今一どう思ってるかなんてわからなかった。


 姿見が移すのはボブカットでセーラー服を着た私。高校生らしく見えているだろうか。


「…行ってきます。」

「あぁ。」


 父は目を合わせさえしなかった。気にはしない 日常だから。


 ふと思った。


(今日はどんな空かな 昨日は…朝日が綺麗だったな。)


 ドアを開けて秋を告げるように肌に当たる風が吹いた。正面には巻積雲けんせきうんと呼ばれる雲が広がっていた。


「わっ…」


 深い深呼吸をした。


(こんな雲 見たことない。)


 カシャ


 カメラに収めいつもの道へと歩き出した。


 いつも空を見ることで今日もまた 平凡な一日を迎えたんだと思う。友達と遊んだりすることもあるけれど 私には退屈でどうも思えなかった。

 それでも空はどこまでも続いていて…吸い込まれるように夢中で見てしまう。


「ミャーオ」


(…?子猫…野良…っぽいな…。)


「ミャーオ…」


 その猫は何処か…惹き付けられた。目が鳴き声が…匂いが。「何かを訴えかけている」そう感じ取った。

 そして鈴のついた猫は道路へ走っていった。


「あっ…まって!」


 手を伸ばして猫に触れた また「ミャァオ」と鳴いた気がした。


 そこから記憶は無い。

 私が次覚めた時は一面が白かった。


「えぇ…?」


 咄嗟に出た声にハッとしてあの猫を探した。


 後ろを振り返ったら猫がいた。でもその猫は状態こそ綺麗だけれど 生きていないのを感じた。


「…ありがとう」


 どうしてそんなことを言ったのかもわからない。咄嗟に出た言葉だった。


「ここは…何処?」


 パッと上を見上げると満天の夜空に月が光る綺麗な空だった。


「夜、なのかな?」


 そして立ち全体を見回した。白い建物に居るようだった。ここは明るく、囲まれているが天井はなく白い壁は高かった。

 後ろにはあの猫と教室1部屋ぐらいのスペースに細い迷路のような道があった。

 再び前を向き左端から外に出られることがわかった。


「人は…居ないのかな とりあえず外?にでれば…」


 その時聞こえた。


「外に出るのは…辞めた方が 貴方も殺されますよ。私の家族は…!みんな…みんな…。」


 憎しみ悲しみそんな感情を持っていると声だった。


「そう…なんですか…?」

「でも…私も気になるので」


 返事はなかった。


 あの人は泣いていた 家族を失い生きる希望すらも失ったからだろうか?

 私は猫が死んでいても悲しくは無かった。それは情が無いからなのだろうか。

 じゃぁもし 父親や友達が死んでも悲しめなかったら 私は血も涙もない人になってしまうのか。


(今はそんなこと思ってる暇じゃない ほんとにここはどこ…)




 私が覗いた世界は 暗闇の中 植物もない崩壊仕掛けた世界だった。


 アスファルトは脆く今にも沈んで落ちてしまいそうだった。凄く乾燥していることがわかった。

 泥のような水が池溜まりになり 沢山の箇所にあった。その先には長い川らしきものが流れていた。そして 大きさの異なった岩が沢山転がっていて中には私の身長を越す岩もある。

 家や電柱などはなく 池や川 そして空以外「何も無い」と言える状況だった。


 呆然とし少し歩いたそこには1人の少年がいた。

 その少年だけは血まみれで何処か遠くを見ていた_

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