第90話 外出許可
アメリ様はそうと決めたら即行動とばかりに、今すぐにと出かけたがった。
さっきまで今度の週末にでもって言っていたのに、気が変わったらしい。
だけどエドさんもラス様たちも外出中で、留守番役は私たちだけ。
必然的に私たちのお出かけ決行は明日以降ということに。
街にはどんなものが売られているのかアメリ様に尋ねてみると、人気の場所や彼女のお勧めな店などを教えてくれた。
「貴族向けの宝飾店は値段ばかりお高くて似たりよったりな店が多いが、町娘に人気のある雑貨屋などは手頃な素材ながらも普段使いのできるアクセサリーが売っているんだ。あとは、市場の露店商なんかにも掘り出し物があったりするから面白い」
「庶民向けの雑貨屋は実家の傘下になっていた商会が得意分野でしたので、多少は扱う商品の品目に心当たりがあるかもしれません。市場には行ったことがないので露店商の方も気になりますわ。そこに売っている面白いものって、どんな物です?」
「露店っていうのは、市場通りの区画に出店する簡易的な店のことだよ。敷物の上に商品を並べただけの店や組み立て式の屋台を店にしていたりとか、荷馬車が店舗代わりになっているのもあったなぁ。其々の店主によって様々な形態の店がひしめき合って賑やかなのさ。売り物も多岐にわたる。野菜や果物だったり、串刺しの肉を焼いて売っていたりとか、ちょっと胡散臭いが
「食料品から胡散臭い物まで、……市場ってとても楽しそうな場所ですわね。それにしても、壊れた魔導具なんて買う人がいるんですか? 買っても使えないのでしょう?」
「フフフ。やはりクララちゃんは魔導具に反応するんだねぇ。新品の魔導具は高額だから庶民には気軽に買えないんだ。中古品でも中々お高いお値段だから、ポンコツになっても物によっては使えそうなやつを捨て値で売っているんだよ。掠れた文字しか転写できなくなった印刷魔導具とか、一応つくけど点滅する照明魔導具とかだね。そういった物でも工夫したり面倒をみれば、庶民たちにとっては意外と使えるものらしい」
「まぁ! それはぜひ覗いてみたいですわね。もしかしたら私に直せる物があるかもしれませんし、楽しみでちょっとウズウズしてまいりましたわ。近ごろは魔力回路の仕組みや術式の基礎も理解できたので、以前とは違った目で魔導具を見ることができそうです」
「ほう、クララちゃんは勉強も頑張っているものな。アクセサリーよりも魔導具を見たがる貴婦人なんて、君くらいかもしれないねぇ」
「ウフフ、皆さまが根気よく教えてくださったから色々と楽しく身につきましたのよ。魔導具だけじゃなく、もちろんアクセサリーも楽しみにしております。本当ですってば。先ほどは明日以降と言っておりましたが、明日にでも行きたいくらいなのですわ」
「フフフ、どうだかなぁ。まぁ、アタシもクララちゃんと買い物に行くのは楽しみだ」
「はい。では明日、エドさんかシルバさんに連れて行ってもらいましょうよ」
「そうだねぇ、いちおう護衛は必要か。案内はアタシに任せておくれよ?」
「はい。色々とアメリ様おすすめのお店を教えてくださいませね」
「心得た」
他にも色々と話題が尽きなくて、お皿の上でフヨフヨ揺れてるベリーを眺めながら二人で夕方までお喋りを楽しんだのだった。
夕方になってラス様とシルバさんが帰宅したので、明日アメリ様と買い物に行きたいと告げてみた。
「んー。それならば、うちの取引先にも魔導具を扱っている店があるんだけど、クララさん興味ある?」
「えっ、ホントですか。もちろん興味ありますわ! 公爵家の御用達ということは、かなり名前の通ったお店なのでしょう? いったいどこの商会ですの?」
「ああ。公爵家御用達とはいっても、商会っていうか個人商店なんだよ。君の実家が国内の商売から手を引いてしまったから、大きく魔導具を扱っているのはエリバスト傘下の商会だけになっているのが表向きの現状なのだけれど、あそこは値段設定が高額なわりには微妙な品質なんだよね。うちの取引先はエドに紹介してもらった知る人ぞ知るような隠れた個人商店でね、店主が商売っ気がなくて面白い人物なんだ。たぶんクララさんとも気が合うんじゃないかなぁ」
「まぁ、面白そう。ぜひ行ってみたいですわ」
「ハハハ、そう言うと思ったよ。それじゃぁ明日は、エドに付き添わせよう。残念ながら俺は明日も仕事だから、アメリと街を楽しんでくると良い」
「わぁ、ラス様ありがとうございます」
そんな感じで、外出の許可をもらったうえに魔導具店を紹介してもらえることになったのだった。
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