宴の主役 VS 招待された招かれざる客と当て馬クソ兄貴  (暗闇公視点)

第81話 そして誰も居なくなった??




 王城の談話室では、各々が雑談に興じている。

これからパーティー開始までの待ち時間を考えると、もう少しゆっくり登城してもよかったのかもしれないな。



 娘の婚約披露パーティで開始前から招待客クララさんにイチャモンをつけてきた挙げ句に失神した某侯爵エリバスト夫人や、気分が悪くなった他の招待客たちは係員に介抱されたり医務室へと運ばれていったので、室内の雰囲気はそれなりだ。

うん、まあまあ良好である。

……たぶん。



 いつの間にか元の甲冑貴婦人に戻って俺の隣に寄り添っているクララさんが、クイクイっと俺の袖を引く。

「ラス様、部屋の真ん中だとまだ皆さんに注目されているようで、ちょっと落ち着かなくて。だから奥の方で順番を待ちませんか?」

「ん? そうだね、どうせ俺達が呼ばれるのは最後の方だし、そうしようか」

「はい。あちらの窓際辺りが空いていて良さそうですわ」



 二人して、ゆったりと奥の窓辺へと移動する。

あの一悶着のあとで、更にちょっかいを掛けてくる勇敢かつ物好きな貴族は居ないようで何よりだ。

多少ジロジロとした視線を感じるが、三倍くらいの眼力を込めて睨み返しておいたので俺の意図は伝わったんじゃないかと思われる。

マジでお前ら鬱陶うっとうしいんだよ。

 クララさんが小声で眉間みけんのシワが増えますよって茶化してくるから気になって、ちょっとだけ眉の間を撫でてみた。

まだ大丈夫。ちゃんとのびたはず。





 そうこうしているうちに、案内係が数人ずつ室内の参加者たちを先導し始めた。

これから爵位順にパーティー会場の広間に入場するというわけだ。

「お呼び出し申し上げます。ペッツソル伯爵御一行様、パラボル伯爵御一行様、トッペラン伯爵御夫妻、どうぞこちらへ……」

お仕着せ姿の係員が家名を呼べば、該当の者たちが彼の後に続いて会場へと移動してゆく。






  しばらくの後、……室内が静まり返り、誰も居なくなった。

いや、ちがう。俺とクララさん以外が居なくなったんだよ。

「うーむ。同じような嫌がらせで芸が無いな」

「そうですわね。私も、もう少しひねりがあってもよろしいかとは思いますわ」

「どうせ呼び出し用の名簿に名前がなかったんだろうな」

「そういうことですわね」

「なあ、クララさん。このまま帰ってしまおうか?」

「それでも良いかと思いますけれど、すんなり帰るのもつまらないですわよ?」

「そうかな?」

「私はそう思いますわ」

キッパリと言いきったクララさん。

 ついでとばかりに、室内の様子を確認せずに俺たちを放置したままの案内係たちにまで駄目出しをする。

「召使いや侍従たちの管理教育体制にも問題があるようですわ。指示が出ていてあえて私たちを置き去りにしたのか、それとも配慮と確認が足りなかったのかわかりませんが、王城の公式行事においてこんな小細工ができてしまうのは大問題に発展しかねない案件ですわ。今後に備えて苦情を申し上げたいですわね。今の責任者は何方どなたなのかしら……」

いやいや、そこまで親切に考えてやる義理はないと思うよ、俺は。

君はもう、王城で責任を負う必要はないのだから。

指摘したらそれもそうですわねと納得してくれてひと安心。



 ここで何時までも文句を言っていたってらちが明かないので、さっさと二人で会場へ移動する。

俺もクララさんも城内は自分の家の庭みたいに慣れ親しんだ場所なので、こんな形式張ったときでもなければ案内役など必要ないのだ。



 パーティー会場の広間の入口までやって来たが、入口の係員が戸惑って混乱している。

「わっ! えっ!? どうして? ええと、名簿には公爵閣下のお名前がないのですが……これは何かの間違いでしょうか!? てっきり、いつものように欠席だとばかり思っておりました。はい、もちろん急いで確認を取りますので、しばらくお待ちを!!」



 どうしよう、どうしたらと、アワアワ泡を食ってる係員に、クララさんが先ずは確認をと促すと、二人居た係員の片方が焦りながらも通路の奥へと姿を消した。

 残ったもう片方は居心地が悪そうに俺達を見る。

「あの、じつはそろそろ開始のお時間が迫っておりまして、……大変に申し訳ございませんがお名前の読み上げなしで密かにご入場願えませんでしょうか。私は宰相補佐のドルノーと申します。あとのことは私の責任で処理させていただく覚悟でございます。閣下のお怒りに触れることは覚悟の上ですし、ご不満はのちほど宰相府の上の者が説明と謝罪に伺いますので、どうか何卒……」



 どうやら決死の覚悟を決めた様子な係員の言葉を聞いて、ちょっと考える。

勝手に名簿以外の名前を追加して読み上げてしまうと、たぶん係員の首が飛ぶ。

なるべくことが穏便に済むようにと俺に対して懇願しているというわけだ。



 よし。ここは宰相次兄に貸し一つだな。

「ふむ。その提案は悪くない」

俺達はドルノー殿の案内で、ことさら目立たないように使用人たちが使う衝立に隠された裏側の出入り口から会場内へと忍び込むことにしたのだった。











・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


[クマ作者のご挨拶 (_ _) ]


やっとこさっとこ一章分の書き貯めができまして、お久しぶりな投稿にヤッホーぃと浮かれポンチなクマでございます (^(ェ)^ゞ

浮かれて調子に乗った勢いで、エイヤっと公開ボタンをプッシュ☆ 

……なので毎度のことながら色々と整ってないかもですが、少しでも皆さまにお楽しみいただけたら幸いです


こちらを覗いてくださった皆さま、読んでくださっている読者さま、いつもめちゃめちゃありがとうございます♪♪

コメントや誤字とかミスのお知らせもとってもとっても感謝なのですヽ(=´▽`=)ノ✨


今回は八話ほどを時間は不定期で、連日公開な予定でおります

クマの奴がドジをやらかさなければ、きっと連投できるかと思われまするぅ💦

( 予約投稿というものがあるらしいのですが、気まぐれにいちいち手動で投稿したいという我儘な作者でごめんなさいぃ〜 ←都度の見直し作業が苦手すぎてww )

どうぞよろしくお願いいたします(_ _)☆












 

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