第62話 旦那さまは骨が好き( ✕ ) 旦那さまは骨も好き( ◯ )




 骨は大変興味深いんだけれどもね……と、彼は言った。

でもね、それだけじゃないんだよ……とも。

「俺だって可愛らしい小鳥や猫を愛でるときもあるし、綺麗な夕焼けに感動することもあるんだよ。それにね、素敵な女性が目の前に現れたら思わず見惚れる……かも知れない。いや、この風貌を怖がられてるからか、今までそんな出会いはなかったんだけどさ」



 眉間みけんしわを寄せながら、戸惑いつつもラス様が言う。

「うーん。骨は好きだけれど骨と結婚したいというわけじゃない、っていうか……、君が骨っぽくてもそうじゃなくても君は君、っていうか……」

しだいにしわが深くなり、彼は再び頭を抱えて混乱の渦に沈んだ。

「ああぁぁ、もう。どうやって説明したらわかってもらえるんだろうぅぅ」



 なるほど。私も魔道具が好きだけれど、塔の中で働いている魔道具たるスケルトンの誰かと結婚したいかと問われれば否である。

 ついでに、元婚約者と結婚したかったのかどうかといえば否だったりもする。

王族の一員となるべく選ばれたからには、良きパートナーであらねばという義務感が主だった。

王侯貴族の婚姻なんてそんなもの。

 だから、第一王子殿下とは恋愛とはいかなくても互いに支え合い国を盛り立てる同志のような関係にはなれると考えていたし、あの方も同じ気持ちていてくださるとばかり思っていた。

それは私の勘違いで、結局そんなふうにはならなかったのだけれども。



 それはともかく、今はラス様のことが肝心なのだった。

「ええと、要するにラス様がお好みの女性像は骨っぽいわけではない……ということですの? ちなみに、どのような女性が魅力的だと思います? やはりグラマラスで妖艶な大人っぽい感じとかでしょうか」

「ぅえ!? みっ、魅力的な女性?? うぅぅん、みりょくミリョク……どんなのが、魅力なんだ? うぅぅん……」

肝心のラス様は考え込んでしまっているけれど、終わってしまった第一王子殿下とのことよりも彼の答えの方が私は大事。



 この際なので、色々と確認が必要だと考えた。

はしたなくもグイグイ詰め寄ってみる。

せっかく結婚したのだもの、少しでも旦那さまに魅力的だと感じてほしい。

「明るくて家庭的な女性とか、それとも儚げで可愛らしい方が良いかしら?」



 更に色々と質問をしようとしたら、両手のひらを向けられて制止の合図。

「ちょっとまって、待ってって。えっと、逆に質問しても良い? それじゃあ、君が理想としている男性像ってどんな感じ? おそらく俺みたいな気味の悪い黒髪赤目は除外だろ?」

自虐的な質問をいただいてしまった。

 未だに彼は自分のことを、そんなふうに思っているらしい。


 

 何年も前から第一王子の婚約者として恋愛などとは無縁で過ごしてきた私。

どんな殿方に魅力を感じるかと聞かれると困ってしまうし、そんなふうに考えたこともなかったわけで。



 でもただ一つ、はっきりしていることがある。

「ラス様は気味悪くなんてないですよ。漆黒しっこく御髪おぐし紅玉こうぎょくの瞳も、とっても綺麗です。ご自分をそんなふうにおっしゃらないで」

そこは自信満々に答えられるのだ。



 それから、考えながら本音を告げる。

「そうですわね、……元婚約者は見目麗しいと評判でしたが、私はとくに何とも思っていませんでしたわ。見慣れていたからかも知れませんけれど、今のところ見目で魅力を感じるとかはないですわね」

「ほぅ、なるほど」

以外そうにこちらを見て、ラス様が相槌を打つ。

 そして、こちらに来てから思ったことも言ってみる。

「髪の毛や瞳の色よりも、私と誠実に向き合ってくださるかどうかが肝心だと、最近そう思うようになりましたのよ。見た目なんて清潔感があって見苦しくなければよろしいのではなくて?」 



 だから結論なんて、とっくに出ている。

「私、ラス様をお慕い申し上げておりますわ。もっとご自身に自信ををお持ちになってくださいまし」







 言ってやりましたわ。

それはもう、はっきりと。

私、断言したのです。



 そうしたら、紅玉色の瞳が真ん丸に見開かれて驚きの表情に。

「っっ、ええ!? っおおっふ。 ええっと、そのっ、あっ、あ、ありがとうっていうか、その……」

 そのお顔が真っ赤に染まる。

「えっと、そのぅ、あ、はい。貴方との毎日が、思いがけなく楽しくて仕方がないのです。ですから、えぇっと、ふつつか者ですがよろしくお願いいたします?」

「あ、はい。こちらこそ……って、なんで疑問形なんだ?」

「いえ、何となく?」

 

 今更ながらにしまらない会話を繰り広げて、無言で向かい合うこと数拍。

「……」

「……」

きっと私の顔も赤くだっていることだろう。



 二人でモダモダしたあとに沈黙を破ったのはラス様の方で。

「ああぁっ、もう。君に良いところ全部持っていかれたぞ。俺の方から先に告げるべきだった。……今更だけれど、俺も出会ったときから君に惹かれてる。どんな君だって良いんだよ、骸骨だってふくよかだって何だって。でもね、元気で満ち足りていて欲しいんだ。もっと言えば、無理のない自然な君のままで幸せでいて欲しい」

出来れば俺と一緒に幸せを感じていて欲しいと、早口で前のめりに告げてくれたのだった。
















・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


 めちゃめちゃお久しぶりでございます。

そして、こうしてお読みいただき特大の大感謝なのでございます(´;ω;`)ブワッ


 ああでもないこうでもないとグダグダぐるぐる考えながらチマチマ書き進めておりますが、ちっとも進まない〜💦

原因は色々で、やる気と時間不足や他作品に手を付けてみたりフラフラしたり、ちょっとスランプだったりと……まことに非常にノロノロで、ホントに申し訳ございません(_ _)


 こちらを投稿の現在時点で、書き貯め話数が五話ほどです。

うち、クララさん視点のキリの良さそうなところまでは連投してみたいと思います。

見直しアマアマで誤字や矛盾点などもあるかと思われますが、ぜひ良かったらお付き合いくださると嬉しいです。


 章の終わりまであと二話分を投稿準備中。

明日と明後日の連投もどうぞよろしくお願い致します☆






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