課題と悩みと案件のちがいなんて知ったこっちゃない(暗闇公視点)
第51話 王家の試練
王城の貴賓室。
そこに集うのは国王の兄弟たち。
親族会議という名目で呼び集められた男たちである。
昼食会も兼ねての集まりなのだが、各自の手元に料理が並ぶのみで召使いたちの姿はない。
一応は機密性の高い話題を扱う場なので、男性王族だけの集まりだ。
各王族の護衛や侍従たちも別室で待機している。
大きな円卓に座し、皆が国王を見詰めていた。
「皆、よく集まってくれた。今回の主な議題は王家の後継についてだな。我が息子の現状に問題が山積みなのは承知のとおりだが、関連して国内外にも不正行為の疑惑が持ち上がっておる。これらについて皆の意見を聞かせてほしい」
室内の兄たちのほとんどが訳知り顔で頷いたが、誰もが難しい表情だ。
十二番目の末っ子である俺は、入口近くの席で兄たちを観察している。
いちばん歳の近い隣のクソ兄貴が兄陛下の話をそっちのけで、やたらと
気持ちはわからなくもないが大人げない態度に
あのときは、俺の方が振られていたかもしれなかったのだけれども。
まぁ彼女の気持ちがこちらにあるのならば俺は絶対に譲らないし、一時的にでも連れ去られていたならば素知らぬ顔で何らかの嫌がらせを仕掛けていただろうなぁ。
だから多少のことは我慢である。
いや、ちょっとは陛下の話を聞いた方が良いと思うんだよ。
他の兄たちが呆れてチラチラ様子をうかがっているからね。
今は話し合いをする時間だし、この件に関してはクソ兄貴も重要な役割を担っているというのに困ったものだ。
長男である国王を含め、現在生存して国内にとどまっている男兄弟は八名だ。
野郎ばかりで食事するなんてむさ苦しいし、まぁ何だってこんなに兄弟が多いんだか。
俺たちの父親っていう奴の気が知れない。
めったに会うこともなかったし、ほとんど顔も覚えちゃいないがな。
前王の息子は全部で十二人。
それに五人の娘が居る。
正妃との間に生まれたのは長男の兄陛下だけで、あと十六人の兄弟姉妹は五人も居た側室の妃たちの子どもである。
もちろん俺の母親だったひとも側室だった。
好色ジジイが親父だなんて嫌になるが、今はそれについて文句を言っても仕方がないか。
とにかく隣からの嫌な視線を無視しつつ、陛下の話を聞いている。
「皆も承知のことだが、我が長男であるフィランツはこの数ヶ月の間“王家の試練”において後継としての資質を試されておる。
招集の手紙にも記されてはいたが、兄陛下としてもここらで進捗状況を確認しておきたいのだろうな。
“王家の試練”というのは、次代の国王候補である王太子としての適性試験のようなものだ。
もちろん
陛下の言葉を信じるのならば、常識的に過ごしていれば何ら問題なく通過できるらしいのだが……フィランツの奴は微妙かもしれない。
いや、
もう、隣のこのクソ兄貴が設題者だっていうだけで詰んでいると。
なぜ、よりによってクソ兄貴が選ばれたのだか謎である。
いや、知らんけど。
代々の王となり得る王子たちには幼少期から英才教育を施され、未来をともにする妃候補として優秀な令嬢を婚約者としてあてがわれ、侍従や学友や側近候補まで厳選された人物たちが配置されるらしい。
そうして、しっかりと基礎基盤を育てるのだ。
そして、成人の年頃になったある期間に本人には知らされず“王家の試練”が課される決まりになっている。
国王の息子として生まれた者には王子教育としてそういったものがあるということは教えられるが、王子であるうちには全容を知らされることはない。
王子たちは成人して各自の進路が決してから、王弟となり同時に裁定者となるのだ。
裁定者とは、次代の後継が玉座に相応しい者であるかどうかの判断を下す者たち。
いちおう俺も王子の端くれだったので、この場に座っているわけである。
そして、設題者。
それは静観者である当代国王によりただ一人が指名される、試す者である。
手段を問わず次代に試練を与える役目を担うのだ。
指名された人物によって試練の難易度が変動するというのは暗黙の了解なのだった。
▷・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・◁
( 読者の皆様、いつも読んでいただきありがとうございます(_ _)ペコリ☆ 文末にちょいと作者のつぶやきです…………架空の王室行事をでっち上げ、関連で設題者とか裁定者などなどの言葉が出ております。おそらくそんな用語はないかもしれない&本来の使い方とは違っているかと思われますが、生温かくスルーまたはご了承いただけますと幸いでございます。裁定者って響きが、何となくカッコ良くね?とか思っちゃったのです。そして出題者だとクイズみたいで何となくしっくりこなかったもので設題者にww 静観者ってwなんぞ〜(^^ゞ)
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