第40話 兄弟対決? 取り引き!?
師匠と会ってから数日後、大勢の部下たちを引き連れて魔法公爵が直々にうちの塔を訪ねてきた。
アイツらを地下階層の居住区内に招き入れる気は毛頭ない。
うちの可愛いスケルトンたちや開発中の魔導具に手出しや悪戯をされたら嫌だからね。
万が一にもやられたら、作業場の
だから、塔の入り口である地上一階の広間で面会することにした。
正面入り口側に魔法公爵ご一行、
立ち話で十分だと思っていたのに、アイツったら偉そうに
知らんふりをしていたら、奴の部下が汗をふきふき
その重量感のあるお高そうな椅子にボスっと座ると、奴の更なる憎まれ口が
「全く、
こういうときの対応は慣れたもので、こちらも一々動じない。
うん。よく嫌味を言いにわざわざやって来るんだよ、この人は。
「残念ながら、
「くっ……生意気な。何時も暇そうにしているお前には私の苦労などわからんだろうよ」
「おかげさまで優雅にのんびりと暮らさせていただいておりますよ。時間に追われてあくせく働くのは性に合いませんので」
「フン。ボンクラなお前に何かが成し遂げられるとは思えんからな。
「はははっ。……それが叶えば幸せですねぇ、ホント。ええ、急な来客にも
終始一貫。さっさと面会を終わらせたいんだよ、俺は。
だってさ……隣に立ってる彼女がね、ずっと
肩には力が入ったままだし、両手はワンピースドレスのスカート部分をぎゅっと
通常ならば着飾った貴族子女は手にした扇で口元や表情を隠したりするのだが、今の彼女は扇なんて持ってはいない。
すっかり骨ばった顔をさらけ出し、緊張感を
さっさと用件を言えば良いのに
王族でもあり、俺よりも八歳年上で現国王よりも十歳年下の異母兄弟だ。
未だに独身の、仕事に生きる二十九歳。ほぼ
見た目は金髪碧眼の麗しき貴公子なんだが、性格はすこぶる良くない。
だってさ、いつも派手なキラキラ衣装で登場するんだよ、この人は。
その魔法公爵閣下が、今度は偉そうに鉄格子を開けろと騒いでいる。
「せっかくここまで来てやったというのに、鉄格子に
「嫌ですよ。横暴な貴方をこちら側にお通しするわけにはいきません。どうしてもと
そうしたら
「お前ら
「……どういうことです?」
「それはな……今まさに、私がお前たちの命運を握っているからだよ。そのような骸骨女を
「は? 何の話でしょう? 貴方は俺を
「フン。まぁ、私の話を聞け」
魔法公爵はそう言いながら、
そこには、金で装飾された小さな
「これは、そこの
その自信満々な奴の言葉に、俺もクララも息を飲む。
彼女は当然、元の姿に戻りたいのだろう。
俺だって、どうにかして彼女を救いたい。
ただ、一筋縄ではいかないのが魔法公爵。
貴族ならば奴の性格の悪さを知らない者はない。
まして
案の定。奴が次に吐き出した言葉は、横暴な取り引きの条件だった。
「ただし、それはクラウディーラがお前との婚姻を解消し私のもとに嫁ぐならばの話だ。本来ならばフィランツが婚約破棄したあとに私が立候補を名乗り出るつもりだったのだが、
「へぇ。そこには彼女の意思を
「陛下も、お前と彼女が上手くいっていないとおわかりになればお許しをくださるだろうよ。だから……お前たちで、陛下にそのように願い出るのだ。そうすれば皆の願いが聞き届けられることだろう」
うわぁ、ここまで言い切っちゃうんだ。
自分勝手にもほどがある。
俺たちの現状を確かめもせずに、勝手に決めつけてさ。
大きなお世話でありがた迷惑この上ない。
彼女はともかく、俺には何の魅力も感じない取り引きだよ。
彼女は、……ともかく、ね。
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