【十八】ラノベ今昔物語

 2024年新年あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします(ぺこり。昨年は小説公募に注力した年で、今年もそうなるかと思います。頑張って書いてます。目標は二次選考突破でしょうか(昨年は一次選考突破止まり)。まあ公募によって選考段階数は変わるので(四次まであるところもあれば二次の次が最終選考のところもある)応募作品数に対する突破率で目標立てしようかな。昨年は一次選考突破で突破率14%だったので、今年は突破率一ケタの選考突破を目指したいですね。勿論、受賞しても一向に構わん(烈海王顔。

 なお現在、選考中の作品が三作品あります。いずれも三月までには結果が出るので楽しみにしております。内一つはGA文庫大賞さんで、例え一次選考で落選しても評価シートがいただけます。とてもありがたいです。ちょー楽しみにしております。



 今日は元旦でもありますし(何)、思い出に浸りながら「ライトノベル(以下「ラノベ」)の長所、アドバンテージってなんだろうな?」ということをつらつら書いていきたいなあと思います。なおあくまで私の所感でありますので、そこら辺宜しくお願いします。過去のことだと記憶違いや勘違いもあるのでね……。

 私がラノベに触れたのは、まだラノベという名称が生まれていない時期です。ラノベを「綺麗で豊富な挿絵+小説」と定義するのなら、ソノラマ文庫やスニーカー文庫はラノベといえるでしょう。手元にある講談社X文庫の謳い文句は「読むと見える」とか「映画小説」になってます。この辺りの流れが、やがてラノベと呼ばれる様になっていきます。

 これが当時何との差別化になっていたかといえば、一般文芸と比べれば「登場人物や情景が明確にイメージ出来る」という点だと思います。これは、イメージしやすいことにより小説を読む敷居を下げるのと同時に、読者間で「統一したイメージを持てる」→「話題にしやすい」という点も見逃せません。コンテンツは自分で視聴するだけでは無く、友達や同好の士の間でわいわいと感想を言い合ったり妄想したりというもの楽しみの一つです。豊富な挿絵によって世界観や登場人物が絵的に明確化されたことで、アニメや漫画の様に共有化しやすくなったと言えます。ラノベが時に「キャラクター文芸」と言われるのも、この辺りの経緯があるからじゃないかと考えております。

 またアニメや漫画に対した差別化でいえば、絵の解像度が高い点が上げられると思います。端的にいえば「絵が綺麗」ですね。通常の漫画誌だと使用している紙が荒い、また量を書く必要があるという点で、ラノベのカラー口絵や表紙などは綺麗さの点で有利な面です。

 絵の綺麗さでいえば「劇画」があるんですが、当時中学生だった私には古くさく見えたんですね。そこに「劇画」の様な濃さがない、いのまたむつみ先生を筆頭とした「スマートな絵(個人的な主観です)」が出てきて、それにどっぷりハマったんですね。

 同様に創作の題材として「時代劇物」や「忍者物」といったものも私には古くさく見え、逆に当時勃興し始めたD&Dやロードス島戦記などの「西洋ファンタジー」が新しく格好良く見えてハマったという点はあるかと思います。



 そんな感じで他のコンテンツに対して「絵の綺麗さ」というのは、ラノベの武器の一つであったかと思うんですが、状況は時代と共に変わっていきます。大きいのはコンピューターの進化による、CGの進化です。最初期は色数も8色、解像度も荒かったCGですが、コンピューターの劇的な進化でどんどんと解像度が上がっていきます。そして見た目でいえば紙面とほぼ同等の綺麗さを手に入れた時点で、「ビジュアルノベル」というジャンルが生まれます。有名処でいえば「AIR」とか「マブラブ」、「Fate」シリーズですね。小説・枚数豊富なCG、音楽、そして音声という、仕組み的にはラノベの上位互換です。

 いやね、私もビジュアルノベルが天下を取ると思った時期がありました。しかしそうはなりませんでしたね。一ジャンルとして残ってはいますが、かつての勢いはありません(ソーシャルゲームのシナリオ部分がその系譜といえますが……)。要因としは、製造コストの高さがあると思っています。ビジュアルノベルはとてもリッチなんですが、その分作るのに時間もコストもかかります。個人的にデカイと思っているのは、供給速度ですね。特に大作は開発に数年掛かるのもザラで、だったらよりリッチなアニメの方が強い。その辺りではないでしょうか。



 また、イラスタレーターさん自体の数も増大し、クオリティも向上していきます。発信媒体としてインターネットやスマホ、SNS等が普及して、より簡単に「綺麗な絵」にアクセスできる時代になっています。CG界隈全体でいえば、「綺麗な絵」が大量に供給されています。

 イラストの(クオリティに対する)作画コストの低下と供給量の増大は、漫画にとっては追い風になり、多数の漫画の作成・供給が可能になっています。以前はラノベの強みであった「絵の綺麗さ」という点でも、遜色なくなりました。

 この時点で、ラノベの武器と言われるビジュアル面での有利さとていうのは無くなっている形です。そういう意味で、今のラノベに求められている要素っていうのは昔と違うと思うんですよね。



 じゃあラノベの今の武器ってなんなのよ? って話なんですが、一つには「製造コストの安さと速さ」にあると思います。ざっくりとした話ですが物語としてみた場合の分量って、ラノベ文庫本一冊=漫画本三冊=映画一本ぐらいに相当すると思うんですが、ラノベ文庫本一冊って最速一ヶ月で書き上げられるんですよね。もちろん商業本の場合はここから編集とか挿絵作成とか入るんですが、それでも漫画や映画に比べたら相当速い。そして安価。極論、パソコン一台と一人の人件費で作れる。ローコスト&ハイスヒードでがんがん回していける。

 これを最大限体現したのが、今のWeb小説のトレンドだと思っています。アンテナが高くって手が早い人だったら、例えば「百合が流行った!」と言った次の日に百合小説の第一話を投入できる。強い。

 ここに無料で公開出来る「小説家になろう」や「カクヨム」というプラットフォームと、小説執筆人口の増加という現象が合わさると、現代の蠱毒が完成する訳です(笑)。多数の作品が新陳代謝し猛烈な速度で消費されことによって、人気作品を選別する。と言う訳です。

 まあ個人的にはこれにも問題があると思っていて、そもそも本当にちゃんと選別出来ているか? という問題が第一。例えば読者の一ヶ月の読書限界が10作品だとして、月の新作数が10作品までなら全部読んだ上でのかなり正確な評価が出ると思うんですが、新作数が100作品となれば確率で読まれない作品が出てくるわけで、それってどこまで評価の正確性が担保されるのかという。

 まあこれは別にWeb小説だけでなく、あらゆる事象で起きている現象ではあります。皆さん、冷蔵庫買う時に全部のモデルのスペックを比べてますか? 更に言えば、全部試用してますか? 無論そんなことは出来ないんですが、そういう状況下で人気・不人気という評価はされている訳です。この問題は、その製品が出来るだけ長く販売され、そして大勢に利用される(そして評価される)ことによって解消されます。しかしあまりに商品の新陳代謝が速すぎると、そういった補正は働かない。つまり口コミやランキングといったものが信頼性を失っていく。



 そして一番怖いのが、そういった信頼性が無くなった結果、読者がジャンルそのものから離れていってしまうという事態です。冷蔵庫は生活必需品ですから「今回買った冷蔵庫はハズレだったから、次はもう買わない」なんてはならないですが、ラノベ(やWeb小説)はそうなりやすいジャンルです。他にも娯楽はありますからね。娯楽の商売の場合は(基本的には)同業他社には成功してもらった方が自分にもメリットがありますし、逆に転けると自分にデメリットが降りかかる商売だと思います。

 個人的にはラノベというジャンル消滅の危機は、「涼宮ハルヒの憂鬱」の発売直前に一度あったと思っています。あの時ハルヒの成功がラノベのジャンルを下支えしたと思っています。



 で、今はといいますと、結構危ない状況じゃないかなーと思ってします。今のラノベの存在価値って、マルチメディア展開の為の原作供給機関になっていると思うんですよね。まあそれも悪くないんですが、正直その辺りの機能を漫画が吸収しつつあると感じています。

 ラノベ原作に採用する理由はローコストなラノベでトライ&エラーをして、出来るだけ安価にクオリティを担保した漫画を作れる、ってところにあると思うんですが、イラスト制作環境が日々進化していて、あえてラノベでトライ&エラーする必要が無いのではないかと……。SNSでイラスト公開→書籍化というのも増えましたしね。



 そうなってきますと、やはりラノベは文章・物語=小説の部分で差別化を図っていく必要があるのかなと考える今日この頃ではあります。

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