第5話 大一番・呪詛祓い


直後に、男は央一を立ち上がらせて静かな山道を歩き始めた。紺碧の空はどこまでも続くように見えて、静寂の合間の虫の声が心地よい。呪詛の祓われた“怨叉庭”は、空気の澄んだ山間地域だった。踏みしめる土は少し湿っている。にわかに空気の匂いが重くなっていった。


「やることちゅうんは、難しいこっちゃない」


前を歩く男が、時折央一を振り返りながら言葉をかけてくる。


「呪詛の核は、呪詛の蔓延が進んで土地が腐り切っていく中で肥大化しよる。せやからもう、叩いて殺して殺し尽くすしか潰す方法が無い」

「殺すって、核をか」

「お前がどんな核を想像しとるんかはよう知らんがな」

「……」

「とにかく殺しきれ。殺し尽くせ。一片の無念も残してやったらいかん」


――迷いが生まれた時ゃ、こっちが引き込まれる時じゃ。男はぽつりとそう言ったが、央一にはその言葉の意味が理解しかねた。呪詛の核なるものは、壊すものではあっても殺すものではないのではないのか。その疑問を口に出そうとしたが、また呆れられる気がしてやめてしまった。


男と央一の姿は、薄暗い森を少し抜けて、平野の見下ろせる小高い丘に差し掛かる。丘を登っていく男。央一はその背に続く際、少しの違和感を感じた。


「勘がええのう」

「何か、張ってるのか」

「核に見つからんための結界や。ま。そない大したモンとちゃうがのう」


何でもないことのように言う男の言葉に、央一はぞわりとした。それは央一が感じた結界の気配が、彼が今まで見てきたどんなものよりも“厚”かったためだ。結界は、ある地点を内側と外側に分断し、影響範囲を区切るためのもの。往々にして外側から与えられるあらゆるものから内側の存在そのものを隠したり、あるいは隠さない場合も、外側からの因子はなるべく招き入れられない構造とするのが一般的だ。ここで、術を作用させる者の手腕は問われる。


内側の存在を秘匿するのであれば、それだけ術の構造は深くなり、用いる気力も膨大になる。そこに加えて、分断地点の厚さを障子の厚さとするのか、襖の厚さとするのか、木戸のそれとするのか――その“綿密さ”“硬度”のようなものも術者の手腕を試した。今央一が感じているこの結界は、内側の存在をほぼ隠匿しながら、結界そのものの厚さは鉄のごときそれのように感じられる。それを何でもないことのようにしれりと説いた男の内側は一層見えず、央一は言葉に詰まってしまう。


「ほんで、こっからは作戦会議や」

「作戦だって」


平野を見下ろした男は、翼を広げて央一を振り返る。


「呪詛の核は、俺とお前を知覚した瞬間取り込もうと手ぇを伸ばして来よる」

「……」

「ワシゃその伸びて切よる手ぇを斬って斬ってぶった斬る。お前は、核の中心を見つけてそこにありったけをぶちかませ」


「まさか、作戦ていうのは」

「段取り言うとるんや立派な作戦やろがい」

「……」


腕を組み胸を張る男に対し、央一は一瞬で緊張感が切れた。軽い眩暈がして、額をさするようにすると、男の指先が央一の肩を掴む。


「ええか。生き残ること四割。核をブチ殺すこと四割で考えとったらええ」

「二割はどこへいくんだよ」


「そらお前」


ぐっと近づく鷹頭に、央一はぎょっとする。しかしその目元は、どこか愉し気に笑っていた。


「ワシはお前の、お前はワシの背中ァ守らんかい」

「……」


央一はその瞬間にもまた、ぞくりとした。しかし不思議と、不快ではなかった。武者震いというものがあったなら、もしかしたらそれだったのかもしれない。


「俺は央一。あんたは」

「何やねんな今更」

「背中を預ける相手の名前くらい知っていていい」

「は。シャバいのう」


広げた翼を風の向きに揃えるようにしながら、男は眉間の羽毛を掻いた。


「吉祥と」

「……」

「都の連中はそう呼んどった。それでええやろ」

「ひどく似合わない」

「やかましいわい」


男――吉祥は、丘の先端まで歩くと中空へ指先をかざし

今一度央一を振り返る。


「ええか央一。ワシがこの結界を一度壊したら終いや。核はすぐ向こうにおる。あとはワシらが核を殺すか、核がワシらを飲むまで終わらん」

「……」


急転直下だ。央一は思った。この“怨叉庭”に足を踏み入れた瞬間は、その呪詛のあまりの濃さにすっかりやられ、自分はその場で狂い死にをするのではないかとさえ思う瞬間があったが――運よく(よかったのかどうかはまだわからないが)この奇妙な姿の男と出会ったことで、央一は少なくとも目的を同じとする同志と巡り合ったといってもいい。


あとは、この吉祥なる男の打ち立てた作戦と呼べない作戦によって事がどう運ぶか次第ではあるが――こうなればもはや引き返すことはできなかった。


「一が二になったんはごっつい違いや。しょっぱいツラしとらんと気合入れんかい」

「……ああ」


未だ表情が青ざめたままの央一の背中をばしんと強く叩いて吉祥はまた、切り立った丘の先の空間へ手を伸べる。


「ほな行くで、央一」


声かけの直後に、吉祥の指先に鈍い光が迸った。そしてその次の瞬間には、ぎりぎりと耳に痛い音が次第に大きくなり、やがてばりばりと激しい、雷鳴に似た響きをこだまさせながら、広大な空間に大きなひびが入っていった。


「……」


空が割れる。景色が壊れていく。央一は目の前で巻き起こるその様相に息を呑んだ。

しかし、呆然としていられたのは一瞬のことだった。がらがらと、山間部の景色、紺碧の空が崩れていった先には――央一が“怨叉庭”に足を踏み入れた時に見た、あの淀んだ血の混ざる肉色のおぞましい風景が顕現する。そして、その濁り切った肉色の中心部に、それは居た。


「……、……」


央一はその様相の醜悪さ――そう表現してもおおよそ足りないほどのそれ――に呼吸を呑み込んだ。それは、巨大な塊だった。腐肉と血塊と泥と、あらゆる穢れたものが綯い交ぜになった塊だった。寺院の塔よりも更に巨大なその塊は、蠢いていた。その蠢きは、死に絶えたものの手足が蠢くそれだった。


央一は、後ずさりしそうになる足を叱咤するが、前に動いていかない。しかしそうするうちも、腐敗したような色の肉色があっという間に周囲を呑み込んでいき、山間の風景は掻き消え、一切があのおぞましい空間に包まれた。


「気付かれとんのや。日和ったら呑まれる。前ぇ進まんかい」

「前 と言ったって」

「みっともない声出しとんちゃうぞ」


吉祥は低い声で囁きかけるとともに、力強く央一の首根っこを掴むようにすると、考えられないような剛腕をもってぶん、と央一の身体を核の方へと放り投げた。


「な」


央一は抗議の声も出せずに、勢いよく中空へ投げ飛ばされる。当然力によって投げ飛ばされただけであるために、軌道の操作などはできない。遠近感のまるで狂い切った血肉の濁る色に囲まれた世界で、ただ加速と落下による風だけを感じながら央一は途切れそうな呼吸を可能な限りに繰り返す。


ぐんぐんと近づくおぞましい核の姿。このままでは呑まれるだの何だの前に激突して死ぬ。央一は必死で天地の向きをうかがい、呼吸の周期を取り戻そうと足掻いた。しかし身体も向きも気の巡りも思うようにならない。


「くそッ」


必死で叫んでやっと出た言葉はたったそれだけだった。万事休する――そう思った矢先、央一の両肩は一層強い力によって掴まれた。


「手ぇが伸びて来よった。旋回するで」


頭の上から響いてくる声は吉祥のものだった。ばくばくと心臓が激しく鼓動する中で央一が自身の両肩に視線を移すと、そこを掴んでいるのは吉祥の鱗の脚だった。央一は今、猛禽に運ばれる獲物のような恰好で上空を旋回している。下を見ると、確かに吉祥の言葉の通り核から触腕のものが、こちらも勢いよく伸びてくる。

それは絡み合い、重なり合うような数えきれない人間の手だった。


「捕まる……!」

「ワシを誰や思とんのや」


その手が央一の身体に掴みかかろうとした刹那、吉祥は身体の向きを変え翼を大きく羽ばたかせて、滑空しながらその手の追撃を躱す。しかし同時に、吉祥の飛空する導線に更なる手が伸ばされた。


「前だ!」

「わーーっとるわボケぇ」


前方から襲い掛かった手を、吉祥は再度軌道を変えて急上昇し振り切る。


「どうするんだ、こんなの、こちらから仕掛ける隙なんて」

「何言うとんのやダボが。仕掛けるんはお前やぞ」

「は……」

「こっからは別動隊や。位置の調整が要る時にまた来たる。ええな」

「待てよ、位置って、そもそもここには何も、調整っていうのは」

「やかましいわ。足場が無いなら作らんかい」

「おい……!」


埒の開かない遣り取りに、央一が再度抗議しようとしたが、無情にもその瞬間にぱっと吉祥の脚は央一の肩から離された。途端、勢いよく落下する央一の身体。


声も出せないまま、彼は落ちていく。ここが物理的な存在を持ち得る空間なのかはわからないながら、底に打ち付けられれば衝撃で間違いなく死ぬだろう。しかしそれより前に、あの手に捕まる恐れだってある。


“足場が無いなら作らんかい”


まるで無茶苦茶なような吉祥の言葉は、確かに央一の耳に残っていた。それは確かに、そうだ。しかしこの淀んだ肉色の世界の地面などは――そこまで考えて、央一は落下していく中、唇を噛み締めた。


呪詛によって侵され腐った土地の底にも土はあろう。この世のすべてが木火土金水によって形作られているならば呼び出せばきっと土はどこにも必ずあるはずだ。微々たるものでもいい。央一自身の気の脈動によって、死に絶えた土の中から僅かでも、呼び出すことが出来たなら。


央一は心臓と眉間に意識を集中させ、自分自身の指先を握りしめた。そして喉が破れそうな絶叫にも似た声で、叫んだ。


「“土”をもて起き上がれ! ――急急如律令!!」


彼の気の作用は、足元の穢れ果てた大地を突き抜けて、奥の奥。もはや芽吹くことを忘れかけた土の命脈を突き刺し、引き上げる。


めきめき、という轟音が、央一の直下から響いた。そして――


「う、わッ!」


この地の下層から引き揚げられたような土の柱が勢いよく肉色の淀みを裂いて顕現した。一畳半もないようなその円柱の最上部と、央一の身体が衝突する。激しい衝撃に、央一は肩の骨がずれたような心地に咽返った。しかし、内臓への損傷などは無い。骨も、折れてはいない。


「……」


央一は自らが打ち立てた柱の上に両脚で立って、あらためてその巨大な核の姿を見た。醜い肉が無理矢理につなぎ合わせられたような塊はところどころで敗れ

どろどろとした血と腐汁を流し、蠢き呼吸している。まるで、死にながら生きているとでもいうようなそれを、央一はじっと見た。


おぞましいく大量の手が、飛び回る吉祥の姿を追って伸ばされている。吉祥はそれらを翻弄するように上へ下へと風を切り飛んだ。そして、低空飛行を続けていた吉祥が錐揉み回転で上昇しながら、央一の肩をまた掴んで飛び上がる。


「うわッ」

「やりゃ出来るやないかい」

「そんなこと言っても、終わりが見えない」

「終わりはワシらが作るしかない言うたやろ」


そのまま、吉祥は央一を掴んだまま核の上空を勢いよく滑り抜けた。


「……」


その時に央一は、眼下に見た。これもまた、怖気を感じるほど大きな心臓。それは火山の噴火口のようにも見える肉壁に囲まれた内側で、慟哭するように鼓動していた。


「吉祥、あれは」

「見つけたのう。核の核やないか」

「……」

「“殺す”には、あれを」

「せや」


びょうびょうと空を切る音が耳に痛い。しかし、いよいよ央一の中にも決意ののような何かが固まりつつあった。


「お前、周り見ながら足場作れ。ワシゃ手を斬りながら、機会を作ったる」

「理解したよ」

「そらええのう」


そのような遣り取りの後、吉祥は先の足場に央一を落とした。そして彼自身はまた、追いすがるような手を撒くように飛び上がる。央一はその様子を見ながら、落ち着かない心臓を押さえるように深呼吸した。自分自身の立つ位置。高さと核との位置関係。距離。それを計算しながら、央一は必要な足場の場所と数を割り出す。

これは感応と転移の術の応用でしかない。必要な地点の座標情報を取得して、そこに土の足場を起こす。


「……」


理屈は、それでいい。あとは央一の気の力が持つかどうかだった。央一は呼吸を深く繰り返し、眉間に意識を定め、血の巡りを感じながらまた叫んだ。


「“土”をもて起き上がれ! 起き上がれ! 起き上がれ! ――急急如律令!!」


大地の奥底に、ふたたび根差していく意識。その直後、央一の狙った地点に、めきめきと、また三本の土の柱が顕現する。


やった。央一はそう思った。それと同じ時に、丁度起き上がった土の柱の上を飛んでいた吉祥の翼に激しい勢いで伸びて来た手が突き刺さるのが見えた。


「吉祥!」


央一は叫んでいた。吉祥の飛行する姿は目に見えて鈍った。しかし彼は自らの翼を貫いた手を引きちぎると、追って来たそれらを衝撃波によって切り刻む。


「こっちだ! 吉祥、こっちだ!」


大きく両手を振るって央一はよろよろと飛ぶ吉祥へ呼びかけた。吉祥にもその声は届いたのだろう彼も傷ついていない方の翼を大きく羽ばたかせ、央一の立っている土の柱へどうにか不時着する。


「傷が深い」

「そないなんはもう、ええんじゃ。は、ケチがついてしもた」

「……」


予想を超えて、吉祥が消耗していることが央一にもわかった。それはそうだろう。核は常に、兎角濃い瘴気を発している。そのほど近くを飛んで回っていた吉祥はそれに晒され続けているのだ。


「央一。機会は一度しか作られへん」

「……」

「瘴気の量が、増してきよる。こら下手うったらワシもお前も一瞬で狂ってまう」

「ああ」


吉祥は少しだけ咽たが、血を吐いた。核が放つ瘴気は精神だけでなく肉体も蝕む。央一は顔をしかめ歯噛みをした。


「ほんで。ええ場所は作れたんかいや」

「……」


それでも尚お道化た様子で皮肉な笑みを浮かべる吉祥。央一はそれに対して迷ってはいけないと、一番高い土の柱を指した。


「あそこから飛んで、俺を心臓の真上に落とせ」

「豪気やなあ気に入ったわ」

「それなら、俺の術が、きっと間に合う。それだけでは火力が足りないから、一緒にこの呪符も燃やす」


思いつめたような目で懐から、虎の子の呪符を取り出した央一に、吉祥はたまらないといった具合で天を仰ぎながら笑った。


「……それでも足りなければ」

「構へん構へん。どのみち、お前がしくじってしもたら俺かて終わりや」


傷口から血が流れ続けることも厭わずに、吉祥は立ち上がり、翼を羽ばたかせた。


「ほな大一番と行こやないか」


彼の脚が、央一の肩を掴む。それと共に、央一の身体も浮き上がった。風を切る音がまた耳に響く。ふたりの姿は、核にほど近い場所の柱へ向かった。手の追撃を吉祥が避けながら、上昇していく間央一もまた、濃厚な瘴気の気配に咽返る心地がする。


眼の裏が痺れるような、喉が絞まるような不快感。しかし、耳を塞ごうとしても、恐ろしい囁きが頭の中に直接入りこんでくる。


いたい いたい くるしい くるしい いたい くるしい いたい くるしい


それは叫びのようで叫びでなく、悶えのようで悶えでなく、大気のよどみの中の音のようでありながら、しかし頭に突き刺さりその脳内をかき混ぜる。


央一の頭の中に、突き倒され腕を斬られる武者の姿が見えた。そうかと思うと、子供を奪われ殴り倒される女の姿が見えた。母親と引き離され水に溺れる子供の姿が見えた。病に倒れ、熱病にあえぐ老人の姿が見えた。核の瘴気は、あらゆる苦しみを、央一の中に塗りこむようにして入りこむ。


「う……」


央一は、内側から身体を破られるような苦しみの流転に声を漏らした。すると、肩を掴む吉祥の爪が肉に食い込む痛みが走り、意識が鮮明になる。


「ボケが! お前がやられてどないするんじゃい」

「…………」


吉祥の怒号が、央一の頭を包みかけた靄を少しだけ晴らした。よろめきながら飛んでいく吉祥。その後ろを追い掛ける手、手、手。央一は、また“怨叉庭”に辿り着いた時のことを思い出していた。あまりに人が死に過ぎた土地。恨みも憎悪も置き去りにされた土地。そこで積もりに積もった呪詛は互いを喰い合い、肥大化してここまでのものになった。


もっと早くに、この叫びを聞く者のあったならあるいは――央一はそのようなことを考えたが、今はいけないと思った。今は、とにかくこの賭けにも近い一瞬を逃さないようにしなければ。


「あと少しやぞ! 央一!」

「わかってる!」


びょう、と耳に入りこむ風。今再び吉祥と央一の姿は核の真上――火口のように開いた心臓の上部に辿り着く。一瞬しかない、と。央一がそう思ったその時、鈍い音とともに彼の鼻先に血が滴り落ちた。


「吉祥――!」


見上げると、先ほどは無事であった方の吉祥の翼を、追いついた手が貫いている。吉祥はそれを抜きもしないままに、肉塊の口の中へ突っ込んでいった。


「吉祥、俺を落とせ!」

「ここまで来たら一蓮托生じゃダボが! ええからはよぶっ放さんかい!」


本当なら、央一は一人落下する中で呪符を燃やしながら術を発動しなければならなかった。しかし今、その肩をまだ吉祥が掴んでいる。それによって僅かながらの時間の余裕は生じた。央一は再度自身の足元に向き直り、懐の呪符の文字をなぞりながら祈るように叫ぶ。


「“火”と“金”をもて穿て! 穿て! 穿ち抜け! ――急急――如律、令!!」


傷付きながら心臓に向かい突っ込んでいく吉祥の足元、央一の手の中から激しい勢いで火と金の気脈が光を放ち爆発した。閃光は刃となって巨大な心臓の動脈も静脈も断ち切り、淀んだ血が弾けるように噴き出す。それでもまだ光は肉塊を内側から破るように放たれ、爆発は断続的にその内部で起こり続けた。


はじめの爆発で中空へ投げ出されるように吹き飛んだ吉祥と央一の姿は目を潰すような光と炎の中に消える。肉塊から伸びていた手は激しい炎の中で焼け爛れ、幾重ものうめき声が連鎖する中で燃えていった。


核は中央の軸を失い、その全体もまた焼かれていった。淀んだ肉色の空間が歪む。央一の立てた土の柱も、ぐらぐらと揺れながら倒れていく。沈痛な悲鳴が引き剥がれるように消えていく。


そうして、やがて辺りは闇一色に塗り潰された。

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