第2
「おー、出来てんのか」
いつものように、「ただいま」すら言わずに夫、敦志がドアを開け帰ってきた。すぐに夕ご飯を目にしてそんなことを言う。
「おかえりなさい、あなた」
「おう、めしめし」
「ちゃんと手を洗ってください」
「わぁーってるって」
結婚して早二年。敦志はサラリーマン。夫婦共働きで過ごしていたけど、おめでたがわかり、出産してちょうど一年くらい。今は育児休暇中だ。
祖父母も近くにいるし、そろそろ働きたいけど、敦志が許してくれない。
「そろそろ働こうと思うのだけど」
「あー? まだ良いって。ギリギリまで休んでろよ」
「でも…」
「お前鈍臭いんだから」
「うー、そんな言い方しなくても…わかったわよ」
「それでいいんだよ。あ、来週出張だから」
「そんなの聞いてない」
「今言ったしな。準備しとけよ」
「…もぉ、いっつも急なんだから…」
夫には不満はない。たまにこんな風に振り回される時があるけど、昔から変わらないし、もう慣れた。それに娘に癒されているのもある。
「ねぇ、あなた…今日は…」
「あん? はは、仕方ねーな。いや、虹歌預けてからにしよーぜ。こいつすぐ起きるだろ」
「こいつって言わないで」
「ああ、すまんすまん。しっかし、お前みたいだな。敏感なところが」
「ちょ、ちょっとやめてよ。あ、だめ、や、また手だけで済ます気なんでしょ!」
「うっせーな、ガタガタ言うなよ。やめるぞ?」
「う、ごめんんん、な、さぃ、ぃ、あん、んん…」
「ほら虹歌が起きるからな、声我慢しろよ」
「んん、んんー!」
「はは、だいたいお前のデカい声で起きるんだからな。少しは我慢しろよ」
「だってぇ…」
「夜泣きもするし、俺も疲れてんだよ。だからこれで我慢してろって。それに娘の教育的によくないだろ」
「もぉ…」
そんなこと、思ってないくせに。
最近こればっかり。おっぱいは飲ませろって言うし。それはいいんだけど、飲んでも放っておかれてムラムラが収まらない。
夫の敦志は昔から絶倫というか、すごかった。夫しか知らないけど、無知で無垢だったわたしは夢中になってしまった。
こんな身体にした責任、とってほしいのに。
でも、確かに虹歌にあの首飾りを持たせてるのに、夜の行為の最中には過敏に反応して泣き出してしまう。
「おら、もう寝るぞ。虹歌の機嫌とっとけよ」
「もぉ。わかったわよ。おやすみなさい」
「おう」
虹歌はいつもわたしが泣きそうなくらい責められていたら泣き出してしまう。いじめられてるわけじゃないのになぁ。
むしろもっといじめて欲しいのに。
でも仕方ないわよね。
ママと寝ましょうね。おやすみなさい。
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