第43話:涙の意味10
「そも強制された勉強に意味はあるのかな?」
「難しい問題だな」
教養は確かに必要だが、一人一人の個性を無視して同一の情報を提供する教育に一定の疑問を差し向けるフレイヤの考えも分からないではない。
「私は大学で好きな勉強出来たからその辺の感覚が一般とズレるんだよね」
「言いたいことは分かるつもりだがな」
なんなら退学した三人に大学を薦めてみたらどうだ?
そんなことを思ってしまう。即座に却下されそうだが。
「紋切り型の教育なんて受けるだけ無駄だよ」
「ならなんでお前は高校に通ってる?」
「金也ちゃんがいるから!」
清々しいな。
「鏡花ちゃんと朱美ちゃんもそうでしょ?」
「はい」
「うん」
「趣味が悪い……」
またしても嘆息。スイスイと運針。
「兄さんは……」
「何だ?」
「私たちの好意は迷惑ですか?」
「別に」
「本当? 金ちゃん……」
「迷惑ならそう言ってる」
針糸でメイド服を縫いながら俺はサックリ答えた。
「フレイヤも?」
これは鏡花。
「今更だな」
メイド服に視線をやっているため鏡花の表情を俺は確認しなかった。
「やっほい!」
フレイヤは喜ぶ。
「金也ちゃんは私が好きなのね!」
「肯定しないが否定もできないな」
「私のおっぱい吸う?」
「いらん」
「え~……」
「なんで残念そうなんだよ」
「お母さんは子どもにおっぱい吸って貰いたいから!」
グッと握り拳。
「その情熱を他に回してくれ」
「金也ちゃんが第一義!」
「恐悦至極」
マジでコイツとの会話は疲れるな。重ね重ね今更だが。
「照れるのも結構だけど私は親子の仲を深めたいな」
――無茶言うな。
言って詮無いから言葉にはしない。
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