第30話:乙女心の行く先は10


 放課後にフレイヤ邸に帰って夕餉。


「え? メイド喫茶?」


「そそ」


 フレイヤはニコニコ。こと無邪気さにかけて俺はコイツ以上を知らない。


 今日の夕餉はペペロンチーノ。ニンニクの香りが食欲をそそる。


「当然メイド服は私たちで作るからね?」


「あたし裁縫苦手なんだけど……」


「そこは一から教えてあげるから心配しないで?」


 ニコニコ。


「出来るかな?」


「ミシンの使い方さえ覚えれば後は惰性だよ?」


「…………」


 俺は無心でパスタを食べていた。


「それに自作のメイド服で金也ちゃんにアピールできるよ?」


「な、なるほど」


 またそういう頭の悪いことを……。


 パスタをズビビ。それからアレコレとかしまし娘が文化祭に向けて議論した。俺はたまに話を振られたら答える程度だ。


「ていうか本当に俺までメイド服」


「もうウィッグも買っちゃったし」


 ポンと俺の頭に黒いロングストレートのウィッグを付けるフレイヤ。


「ふわぁ」


「おおぅ」


 鏡花と朱美が驚いた。


「姉さん! 何処までもついて行きます!」


「金ちゃん! 可愛い!」


「嬉しくねぇよ」


 気疲れすることこの上ない。


「けれど髪を伸ばすとここまで美少女になるんですね兄さんは……」


「私が可愛く産んであげたからね」


 ムフンと巨乳を張るフレイヤだった。


 どこら辺が自慢できるのか分からないにしても、フレイヤの言動に一点の曇りも無いのは分からざるを得なかった。ウィッグを外す。


「兄さんです」


「金ちゃんだ」


「格好いい!」


 フレイヤが抱きついてきた。ポヨンポヨンの胸を俺に押し付けて。


 こ……呼吸が……っ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る