第28話:乙女心の行く先は08


 それからメイド喫茶前提で話を進めて企画を煮詰めていく。その手のことに詳しい使用人を一人呼んで問答。重ね重ね朱美には欠席裁判で。


 ……なんだかね。無常を覚えるな。


 他の使用人は生地を買い進めているらしかった。弱小サークルに部費なぞ回ってこないから支払いはゴールドーン。その程度は発案者の義務と割り切った。


「じゃ、今日はこの程度にするか」


 キリのいいところで俺は会議を終了させる。するとピリリとスマホが鳴った。相手は……朱美だ。


「もしもし」


「迎えに来て」


「はいよ」


 そんなわけでこんなわけ。体育館に顔を出して、


「よ。お疲れ」


 と体操服姿の朱美を迎えた。鏡花とフレイヤは部室に置き去り。ことコレに関しては俺の仕事だ。今日はバスケ部の助っ人らしかった。ダンクできるからな……朱美は。


「金ちゃん!」


 汗を拭きながらパァッと愛らしく笑顔になる朱美。スポーツドリンクを飲みながら上目遣いで俺の瞳を覗いてくる。


「頑張ったか?」


「大活躍」


 Vサイン。


「いっそどこかの運動部に入ればいいんでないか?」


「金ちゃんと一緒に居られなくなるからヤ」


 知ってるがな。


 真に業の深い……。


 嘆息。


「じゃあ着替えるから待ってて!」


 そう言って朱美は女子更衣室に消えていった。再度現れたときは汗をサッパリ流してセーラー服。


「じゃあ行こ」


 ニコニコ笑顔で俺の腕に抱きついてくる。


「甘えん坊だな朱美は」


「金ちゃんがそうしたんだよ」


「だったな」


 遠い過去を思い出す。虐められたのは小学校まで。中学に入ると同時に朱美は一躍人気者となった。赤い髪に赤い瞳は神懸かりの美貌にエッセンスを加える役目を果たす。思春期の少年には目に毒だった。俺は慣れたものだったが。


「金ちゃんはあたしが迫っても平坦だね」


「幼馴染みだからな」


「やっぱり貧乳は駄目?」


「胸に貴賤はねえよ」


 本心だ。


「鏡花はモデル体型だしフレイヤは巨乳だし」


 ――嫉妬するよ。


 そう朱美は言った。


「精進しろよ」


 俺はそれだけを言った。


「金ちゃん?」


「嫌な予感がするが何だ?」


「あたしの胸……揉んでも良いよ?」


「責任が取れるようになったらな」


「好きな人に揉まれるとホルモン分泌が著しくなって大きくなるんだって」


「揉むと小さくなると最近聞いた気もするな」


「やっぱり胸囲の格差社会は打破すべきだよ」


「お前が言うと哀愁漂うな」


 苦笑してしまう。

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