下3.3 パリの防衛(3)印象操作による嫌悪と恐怖
まさに間一髪のところで、イングランド摂政(ベッドフォード公)はブルゴーニュ公フィリップにパリの権限を引き渡した。つい先日、オルレアンでの仲裁案を拒絶したことを、深く後悔していたことは間違いない。
摂政ベッドフォード公は、王国の主要都市がフランス人(イングランド摂政ではなく、本来フランス方のブルゴーニュ公)への忠誠を誓うことで、王太子の軍勢に対してより精力的に防衛するだろうと考えた。
パリ市民は、昔の威厳ある公爵(ブルゴーニュ無怖公)への好意を思い出すと同時に、イザボー王妃の勘当された息子(シャルル七世)に対する憎しみも再燃するだろう。
裁判所(Palais de Justice)で、ブルゴーニュ公はアルマニャック派の反逆と条約違反への非難を散りばめた「父の死の物語」を読み上げた。モントロー[150]で流された血を思い出し、天に響くほどの叫びを上げるよう仕向けた。
話を聞いた聴衆は、ブルゴーニュ公とイングランド摂政に忠誠を誓った。
翌日には、正規の聖職者と世俗の聖職者によって同じ宣誓が行われた。[151]
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しかし、市民たちの抵抗を強めたのは、ブルゴーニュ公への好意よりも、アルマニャック派の残虐行為の記憶だった。
シャルル・ド・ヴァロワが、パリとあらゆる身分の市民、高貴な者も卑しい者も、男女を問わず、街を傭兵に明け渡し、パリの大地そのものをつぶして耕そうとしているという噂が広まり、市民はそれを信じた。
このような噂は、シャルル七世の人物像を非常に不当に印象操作している。
彼はいつも哀れみ深く、気さくな人物だった。シャルル七世の評議会は、戴冠式のための軍事行動を、武装した平和的な行進へと賢明に転換したではないか。
しかし、パリ市民は、フランス王の意図に関する事柄になると、冷静に判断することができなかった。パリが一度でも陥落すれば、アルマニャック派が火と剣で街を蹂躙するのを止める方法はないと、彼らは重々承知していた。[152]
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パリ市民の恐怖と嫌悪をさらに強めた、もう一つの出来事があった。
かつて、市民が熱心に演説に耳を傾けていたあのリシャール修道士が、「王太子の兵士たちと一緒に馬を並べて、その巧みな弁舌でシャンパーニュ地方のトロワといった立派な町々を征服している」と聞いた時、パリ市民は神と聖人の名にかけてリシャールを呪った。
彼らは、善良な修道士からもらった、イエスの聖なる名が刻まれたピューター製(スズ合金)のメダイを帽子から引きちぎり、激しい憎悪から、修道士の勧めで放棄したサイコロやボウル、チェッカー遊びにすぐさま戻った。
乙女(ジャンヌ・ラ・ピュセル)もまた、同様の恐怖を与えた。
彼女は預言者のように振る舞い、「あれやこれが必ず実現する」といった言葉を口にすると言われていた。
「アルマニャック派には、女の姿をした生き物がいる。それが何なのかは神のみぞ知る!」
彼らはそう叫び、ジャンヌを悪名高い女と呼んだ。[153] 敵の中には、異教徒やサラセン人(アラブ人)よりももっと恐ろしい者がいる。すなわち修道士と乙女だ。
パリ市民は皆、聖アンデレ十字(ブルゴーニュ公の騎士団のシンボル)を掲げた。[154]
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