037 転生者、叙爵される
「よって、レオンハルトよ。汝にアクロード王国五十四代国王、グリフィン・アクロードの名において、汝に迷宮伯を授ける。なお、レオンハルトは今後、『魔の森』の迷宮伯たるダークフォレストを家名とするように」
「はッ、謹んでお受けいたします」
文武百官が居並ぶアクロード王国王城にて、俺は国王より爵位の授与と領地の安堵を許されていた。
ちなみに魔の森内ならば自由に拡張してよいし、騎士を叙爵したり、兵士を養ったりする許可も込みだ。迷宮伯の権限については辺境伯並に自由が多いので、便利な爵位である。
「そして、王家よりダークフォレスト伯と第三王女セラフィーナとの結婚を発表する」
ざわつき。イェリイェスタ大公家からは睨むような視線があり、そちらにちらりと視線を向ければ見えるのはイケメン貴公子の憤怒顔だ。
あれが第三王女と婚約していたというアスマン・イェリイェスタか?
そんなことを考えている俺に向かって、歩いてくる美少女がいる。
腰まで伸ばした白銀の髪が王城の窓より降り注ぐ日差しに受けて輝く、『銀天使』の異名を持つ、アクロード王国十四美女のひとり、セラフィーナ・アクロード。十六歳処女。
アスマンくん、手を出さないでくれてありがとう、と内心でニヤつきながら俺は立ち上がる。
立ち上がると視点が今までより
先日、イリシアと会話をしていたときにはそうだが、俺は自分に迷宮産の歳を取るポーションを使って、肉体年齢を二十歳にしていた。少年貴族姿だとトラブルも多いしな。前世より多少肉体年齢は若いが、今はもうこの身体に慣れているし、このぐらいの方が下の方もいい感じにイキり勃つというものである。
貴公子然とした金髪碧眼の俺の姿に貴族たちがざわめく。
魔力やレベルが高いと自然と魅力も上がるからな。貴族たちには俺がたいそうなイケメンに見えることだろう。
肉体が成長したことで令嬢たちの受けもよくなったので(一部は残念がった)、俺としても嬉しい限りだ。
「レオンハルト様」
「セラフィーナ嬢」
俺は差し出されたセラフィーナの手を取って、貴族たちに向けて礼をしてから「このレオンハルト・ダークフォレスト! アクロード王国とアクロード王家に永久の忠誠を誓おう!!」と声を上げる。
実際、俺が天下とるよりもアクロード王国には内政をやってもらって、育った令嬢を俺が収穫していく方式がたぶん一番楽だ。
自分のハーレムの管理だけでも書類仕事が発生するんだぞ? それが王国なんて作ってみろ。男のために働きたくなんかないのに男のために働かなきゃいけなくなるだろ。
そこで宰相が声を上げる。
「それと、ダークフォレスト伯には叙爵の祝として我が娘、カタリナを側室として差し出させていただく」
今度のざわめきは更に大きかった。なにしろ宰相の娘であるカタリナ嬢は第一王子の婚約者だったからである。
ちなみに、これが王家からも許されたのは俺が大量に差し出したミスリル貨の影響も大きい。
顔色の良い国王陛下の姿を見れば明らかだ。俺と違い、彼は
鑑定すれば先日よりも生物として強く、丈夫になっている。
あと俺が差し出した素材で服も丈夫にしたようだしな。今の陛下を殺すのはかなりの困難を呼ぶだろう。
陛下は失敗した息子たちである、平民に狂った第一王子、俺への隔意をどうしても捨てることができない第二王子を捨てて、新しい王子を作るようだ。
一緒に若返った王妃と一緒に
(
第三王子の誕生を内心で祝しながら、俺はやってきた燃えるような紅い巻毛の美少女の手を取った。
「カタリナ嬢、レオンハルトと申します。どうぞ、今後ともよろしく」
「レオンハルト迷宮伯、どうか末永くよろしくお願いいたしますわ」
そうして俺たちが顔合わせしている間にも儀式は続いていく。俺から王国に差し出された物品の目録が読み上げられたり、長年失われていたアクロード王国三神器が王家と二つの大公家に俺の手によって取り戻されたことなどもだ(なお集めたのは死んだカインくん)。
俺は美しい令嬢二人を侍らせながら、にこにことした笑顔でその報告を聞いている。
(森にいなきゃならない契約魔法は残しておいて正解だったな)
王国への出仕を円満に断れたし。
思い出されるのは先日国王よりうちうちにあった、役職の話だ。
王国に使える宮廷魔術師か、将軍として国軍に出仕するように要求されたが、ずぼらだった俺は森に年の半年いなければならない契約を残したままだったので、それを理由に断ることに成功している。王国としては俺に縛りがあるのは助かるのか、であるならば、と引き下がってくれた。
というか、迷宮伯はダンジョンから魔物大暴走であるスタンピードが起きないように迷宮内のモンスターを駆除することが仕事だから、森に引きこもるのは正しい役職でもあるのだよ。
なお、俺は一日十二時間は魔の森で過ごしてる。妾たちと会っていたり、セックスしたり魔道具作ってたらすぐに時間は経過するしな。王都では奴隷漁りぐらいしかしてないのでそこまで時間はかからない。
そういうわけで、祝の場が終わり、ダンスや立食パーティーの場に移り、酒と美食をたらふく楽しんだ俺は結婚した美女たちを楽しもうとするべく王城より帰還しようとしたのだが……――「この、忌々しい女めッ! 俺に説教などするなッ! 婚約破棄だッ!!」
「おや? なんだ? 楽しそうな声だな」
「まぁ、レオンハルト様。これは我が兄、第二王子フィリップの声ですわね」
パーティー中は腰に触ったり、酔ってからは尻を掴むように握っても一切文句を言わない王女セラフィーナはマジで美少女すぎて楽しい。
婚約者だったアスマンくんからは俺に向かって憎悪の視線が飛んでくるがそれも楽しい。男としての優越感で股間がイキりたちそうになるしな。
なお、俺の傍にはカタリナもいる。
カタリナは腰への接触は許してくれるが尻を触ったらツネられて説教されたので手を出すのはセラフィーナだけにしていた。
さて、そんな俺たちが問題の場所に向かえば、灰銀の髪をした美少女が頬を押さえて、第二王子のフィリップを呆然と見ていた。
「こ、婚約、破棄……ですか」
「そうだ。聖女だなんだと浮かれてるのか? 平民出身の端女の分際で公の場で俺に説教などしおって。何が民のために軍事力ではなく、内政に力をだとッ! 聖女として生意気に光属性が多少強かろうが、アンに比べれば貴様などなぁッ!!」
アンってのは、ええと貴族学園に入っている平民生徒だったか。
貴族令息に手を出しまくってるビッチだっけ? 俺の妾たちは絶対ヤッてるって言ってるけど、どうなんだろうな。
まぁ股の緩い女に俺は興味はないので、絶賛第二王子殿下に罵られている聖女と呼ばれる少女を見た。
灰銀の髪をした美少女、俺でも知ってる有名人だ。『灰の聖女』ウル・シーカー。アクロード王国十四美女の一人。教会所属の聖女称号をもらっている女司祭。マジかよ。今日は十四美女を三人ももらっていいのか? すげぇな。ナンパに使えそうな爵位ももらったし、今日は大安吉日かよ。
俺は王女たちを置いて、ずかずかと現場に立ち入って、王子に頬を打たれて倒れている聖女に手を差し出した。
「失礼。お嬢さん、お手を」
「あ、あの……迷宮伯? この場にいては、ご迷惑を」
「迷惑など。倒れている美女に手を差し伸べるのは紳士の義務ですよ」
手を取って、叩かれたのか、赤くなっている頬に神聖魔法で治癒を施してやる。そうしてから逃げられないようにウル・シーカーの肩を掴む。「あの、迷宮伯? お手が、私の肩に」「まぁまぁ、つもる話はありますが、私もご相談がね? 拠点に教会を建てたんですが――」「ッ、誰だ貴様ッ、今は俺が話をッ――お、おれ、が」
第二王子が俺を見て、ビビったように後ろに一歩下がった。ははは、と俺は笑いかけてやってから、叫んでやる。
「婚約破棄ですよ! 聞きましたか、みなさん! 婚約破棄です! 婚約破棄ですよ! 私は聞きましたッ! 見ましたッ! 第二王子と灰の聖女の婚約が破棄されたことを!!」
貴族たちは俺の言葉とざわつきながらも、全員が頷いていく。俺の爵位授与と、神器が王家に戻されたことと、王女の結婚を祝う場だ。文武百官が集められ、そのパーティー会場で第二王子によって、教会勢力と組まれていた政略結婚が破棄された。
まぁ、王子も酔っているみたいだし、勢いで言っただけだろう。本気で婚約破棄なんてするわけがない。そもそも灰の聖女は平民出身で立場が弱いから王子に言いなりだと聞く。
とはいえ聖女は聖女だ。民衆からは絶大な支持を持つし、教会所属だから貞操含めて安全。
パーティーのときだけ連れ出して、飾り物のように王子の傍に置くだけでいい、王子からすれば便利で都合の良い女。おっと気になって鑑定――処女だった。
まぁこれだけ美少女なら非処女でも気にしなかったが、そうか、こんな美女を俺がもらっていいのか。
「……じょ、冗談だった。ウル、言い過ぎただけだ。婚約破棄なんて、していない。わ、私は口が滑っただけで」
王子がなにか言おうとしたが俺はウルの肩を掴んで離さない。王子に向けてにこやかに笑いながら。
「開拓している拠点に教会を置いてるんですがね。教会から女司祭の派遣を打診しているところで、ねぇ、聖女様、うちに来ませんか?」
言いながら瞬時に固有スキルである『スキルコネクト』でナンパ編成にスキルを組み替えた。
令嬢や奴隷が持っているスキルから『異性特効』『話術』『説得』『パヒューム』『カウンセリング』『マッサージ』を選んで同時発動する。
「そ、そのぉ、お誘いは嬉しいのですが、教会にまずは、その、お話をですね」
まんざらでもなさそうなウルの姿に、第二王子が慌てて「わ、私の婚約者だぞッ! ま、待て、本当に待てッ!! ウルッ!! ウルッッッ!! 行くなッ! 待てッ!! 話を聞いてやるッ! 待て待て本当に待って! 教会勢力との政略なのだッ! 勝手に婚約破棄などすれば私が、廃嫡されるッ!?」
うちに来るということは俺のお手つきになることは決定だというのに、聖女ウルは俺のスキルの暴力による好感度上昇に抗えないのか、俺が肩を引き寄せれば、王子のことなど目にはいらないという様子できらきらとした視線を向けてくる。
なお魅了ではない。魅了は状態異常だから神聖魔法で解除できるのだ。俺が使っているのは好感度上昇スキルによる魅力の暴力。
そんな俺にメロメロになっていくウルの肩を掴んで王女たちのところに戻ればセラフィーナとカタリナが呆れたような様子で見てくる。
「旦那様、新妻の前でナンパってどういう気分でやってるんです?」
「いや、美少女が落ちてたら拾うだろ。あ、カタリナ。あとで拠点の帳簿任せるから、シエラと相談して教会に寄付頼むよ。聖女に手を出した場合の相場っていくらぐらいだ?」
「……呆れた。まぁ、いいわ。これが私の運命みたいだし。馬鹿な第一王子に嫁ぐよりは話のわかる女好きの迷宮伯の方がマシってとこかしら。ねぇ、結婚したら私の好きにやらせてくれるのよね? 商売していい? モフモフとか飼っていい?」
「商売? もふもふ? まぁシエラと相談してなんでもやればいいよ。ペットもな。ああ、拠点に動物アレルギー持ちいたっけかな? わからん。聞いとくか」
「んん? アレルギーについて知ってるの? この世界で? え? 迷宮伯ってまさか」
俺に肩を掴まれてふにゃふにゃした様子のウルと、前世っぽい話をしだしたカタリナ。そして、にこにこと笑っているセラフィーナを連れて、俺は王城に案内された寝室に向かっていく。
結婚初夜は、初めて出会うアクロード王国十四美女三人を一度に抱いて、実に興奮した。
なお、第二王子は無事廃嫡された模様。種を撒き散らさないようにチンポを切断されたあとに一兵卒として今は国軍で頑張っているらしい。
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