025 転生者、美少女研究者を得る


 黒髪黒瞳低身長貧乳美少女錬金術師であるスズ・パラケルススと、その彼女に紹介して貰うことで貴族令嬢専門の奴隷商人であるジョー子爵を仲介して奴隷になった美少女、シメト・トリスメギストスを連れて俺は拠点に帰ってきた。

 最初にやったことは、二人に大量のSランクモンスターの素材や、宝箱からの取得品、ダンジョンの採集品で溢れる倉庫を見せて、これらの素材を好きなだけ使っていいと説明することだ。

 そのあとは興奮する二人を連れて拠点内の施設や彼女たちの部屋へ案内する。

 最後にたどり着いたのが二人に与える仕事場だ。

「あー、ここがお前らの仕事場な。まだ建設の途中でもあるから何か意見があったら建設担当の娘に話を通してくれ。俺からと伝えればわりかしなんでも通る」

 二人を連れてきたのは、俺が現在館で使っている研究室ではない。

 研究室は拠点の再構築案が出たときに、一旦バラすことになったのだ。

 魔道具作りは楽しいが、武器になる危険な魔道具とかも作ることになるから拠点本館であるハーレム館とは別の研究所が必要だなと思っていたところで出た拠点の増築話だったので、大型の研究所を建てることにしたのだ。

 そんな研究所建設予定地は、森を開拓した平地だ。防衛用の外壁ももちろん拡張してある。

 真っ白な鉄筋コンクリートに強化ガラス嵌め込んで近代感を出している建設途中の研究所を見た二人が、わぁ、と歓声を上げた。

 雰囲気作りに凝りに凝っているので『建築学』のスキルを持つ令嬢や、作業ゴーレムを使いまくってる割に建築は結構時間かかっているものの、箱は既に出来上がっており、今は内装をちょっとずつ充実させているところである。

 そんな内装を整える作業ゴーレムたちの出入りを、スズとシメトは興味深そうに見ていた。

「あー、すごい。すごいなぁ。このゴーレムとかどうやって動いてるのかさっぱりだし……たぶんスキル? まー、でもこんないいところに来れてよかったね? シメト」

「う、うん……スズちゃん紹介ありがとう」

 シメト・トリスメギストスはスズと同じ黒髪黒瞳だ――パラケルスス家とトリスメギストス家は遠縁だが始祖が同じらしい。黒髪だし名前がアレだし、日本からの転生者か転移者かな?――が、黒髪は腰まで伸びているし、身長も高いし乳は爆乳で尻も安産型の眼鏡美女。年齢は二十で、貴族としては嫁ぎ遅れ気味に見えるが、割と厄介な性格をしているらしい。

 口調から内気な性格に見えるが、噂では結構な過激派らしい。

 そう、嫁ぎ遅れているが、今までも婚約の話ぐらいは出ていたのだ。

 シメトは性格は陰気で内気で、会話が少なくとも絶世の美女で、容姿だけは抜群に優れている。

 抱くだけならと優良な貴族の妾の地位も用意されていた。

 だが、シメトは自分を望んだ結婚相手に対し、自分を妾として扱うなら毎月魔石を1トンは用意するようにと強硬に主張し、それが通らないなら制作した魔道具を使ってでも破談にすべく、結婚相手を攻撃するために数多くの縁談が破談になってきたそうだ。

 無論正妻案も却下されている。シメトを正妻にするとじゃぶじゃぶと湯水のように魔石を研究に消費するため、下手な放蕩貴族よりも家の財政を傾けるのである。

 美女を娶ったところで家を潰されては男たちとて結婚などできない。

 そういうわけで、様々な研究特許を持っていて、領内に金山や資源ダンジョンなども所有する実家のトリスメギストス辺境伯家に寄生していた長女のシメトは、この度の俺との妾契約に、実家からも喜んでと差し出されてきていた。

 俺はシメトの事情を思い出しながらも、スズとシメトを連れて内装が不十分な研究所内を案内する。

「どうだ? すごいだろう?」

 魔の森で採取した樹脂を貼ってリノリウム風にした通路。

 LED魔道具が作れてないので、蛍光灯にも似た魔石型の魔道具を大量に設置した通路や部屋。

 これらの電灯魔導具、魔の森の高純度魔石ならば一個で百年は保つだろうが、研究所中にこういった電灯を設置してるから、魔石の消費は馬鹿にならんだろうな。

 とはいえ研究所が真っ白でピカピカなのはロマンだ。

 ちなみに館の方はメイドたちが照明魔法使ったり、燃料式のランタンなども併用したりして魔石消費は研究所よりも抑えている。なんで抑えているかと言えば、試しに屋敷の一角をこのようにしてみたら夜にピカピカしてて落ち着かないと令嬢たちに文句を言われたからだ。

「さて、この研究所では、こういった電灯の効率化とか、エアコンとかの便利道具の研究開発を行っている」

「エアコンってボクの知ってるのとは違う感じがするけど?」

「あー、似てる奴があるんだっけ? 俺のはちょっと機能が多い。温度を下げるだけの王国製と違って、温度を上げられるし、適温を保てるし、湿気を取ったりできる。とはいえまだまだ研究途中だな。今は小型化なんかも目指してるし。ああ、ちなみに俺は別の世界からの転生者で、元の世界の道具の再現をやってるんだよ」

 湿気の除去は湿度が高い魔の森では必須だ。劣化防止の魔法を使えば道具が錆びたり食品がカビたりするのは避けられるが、令嬢たちが髪がどうのこうのと騒ぎまくるので、ハーレム館と奴隷館には全部屋エアコンを設置してある。

 そのうち湿気を良い感じに周囲から収集する大型魔道具も作ろうと思う。

 浄化装置つければ井戸からポンプで組み上げてる農地用の水の確保も楽になるしな。

 水魔法ゴーレムを作ればいいって? いや、ほら、なくてもいいけどあった方が便利だろたぶん。

 マンパワー余ってるし、水の供給が複数手段あった方がいいだろたぶん。

 ただ、この辺りの調整は令嬢に任せることにしている。

 さて、転生者であることは隠すことでもないので二人にバラせば「へー。なるほどなー。似たような性能で同じ名前の魔道具が王国にあるけどこっちの方が洗練されてるね」とスズはうんうんと納得したように頷くし「スズちゃんッ、旦那様って私たちのご先祖さまと同じだよ! ニホンジンって奴だよ!」とシメトはスズの肩をぐらぐらと揺らす。

 ああ、やっぱり日本人はこの世界に関係あるのかな? なんてことを考えつつ、俺は次に研究室自体を二人に説明する。

「こっちが研究室。それぞれ個室も用意してあるから好きに使ってくれ。で、二人には遠慮せずに好き勝手に研究してもらいたいんだが、一応この研究所の目標はこれな」

 スマホを二つ取り出して二人に渡す。

 これは二人のために俺が新しく作ったスマホだ。まだ何も魔道具で機能の代替ができてない全ゴーレム製スマホ。

 二人はスマホを手にとって、なにこれ? という顔をする。

 俺は二人の前で自分のスマホを取り出して、電源を入れる。わざわざOSの起動も再現した傑作だがこの機能は無駄機能なので、詳しい中身の構造を知られたらカットしろって言われそう。

 なお他の令嬢たちにもスマホは渡しているが、この起動画面はなんなの? みたいな声はよく聞く。


 ――飾りイミテーションです。


 ちなみに現在、愛妾兼メイドである五人娘の一人、エミリーのステータス上昇料理と、魔道具作成スキルで作った魔力増大の指輪とかブレスレットとかで、維持できるスマホ数は以前よりもずっと増えている。

 レベル上昇でのステータス上昇はあまりしていない。というのも俺のレベルは180ぐらいを目安に上げ下げしているしているからだ。

 それは180ぐらいが購入した奴隷たちに対して『我が恩讐は蛇が如くに絡みつく』での祝福効果を使って、健康や幸運を授けるのが楽なレベルだからである。

 なお、この加護の付与は、婆さんが奴隷に教育のときに説明して、俺の凄さを補強するのに使っている。

 これを施す前と後だと奴隷たちの尊敬の目線が変わってくるから割と楽しい。

 俺がそんなことを考えている間にも、二人はスマホをいじっている。

「なんだろ。これ、魔道具にしては、なんだろ? なんか変だよね? シメト」

「うん……これは、たぶんご先祖さまが作りたかったもの、じゃないかな」

 聞けばエアコンなんかは昔はもう少しすごかったが、ご先祖さまが死んだときに機能が一部劣化したり、再現できなくなったりしたらしい。

 転生者特有のイメージ魔法やスキルを使ったんだろうか? 俺のゴーレムも俺のスキル頼りだから俺が死んだら停止するだろうな。魔力供給を外部式にしてもぶっ壊れたら終わりだし。

 そしてこのような、後のことを想定していないうっかり死・・・・・というのはきっと誰にでも訪れることでもあるので、俺は俺が死んだあとのことはいつも考えている。

 俺の女どもが俺が死んだあとも楽しく生きられるようにするためには、やっぱりスキルがなくても動くものを作れるように開発を進めるのが一番だろうなぁ。

 そういう俺の意図は説明せず、俺は自分のスマホを取り出して、二人に機能を説明してやることにする。

「これはスマホって名前の道具な。えーっと、こうやるとカメラ機能で写真が取れる。動画もオーケー。メールもできる。メールは文字を送るんだよ。スズのスマホに送るぞ。ほら、送った」

 音と振動でスマホが動いてびっくりしたスズにメールの開封の仕方とかを説明すれば、はー、という感心を美少女顔に浮かべるスズ。

「す、すごいね」

 他にもスマホ持ち令嬢やメイドが参加しているチャット画面を見せて、俺の妾の令嬢たちが文字で今も会話しているのをリアルタイムで見せてやる。

 ちなみにメイド専用チャットルームとか、夜のご奉仕予定話し合いルームとかもある。なお俺のスマホは親機だから参加してないチャットも全部閲覧できるようになっている。淫紋があるとはいえ、変ないじめとかあったら怖いからな。プライバシーは考えてあまり見ないようにしているが、不穏な気配を察知したらどうにかしたい所存だ。

 といっても、今のところは淫紋の『家族化』が働いているのか、問題は出ていない。

 そんなに効果あるのかあの淫紋? 適当に考えて刻んだだけなんだがちょっと驚きだ。

 他にも『通話』や『電卓』などの機能も見せる。あと最近星とか丸とかの図形が画面頭上から振ってきて、四つ同じ図形が揃うと消滅するミニゲーム『図形落下』も導入した。

「はぇー……言葉も出ないね。あの、旦那様……こんなすごいものを作ったのにボクたちが必要なの? そもそも目標ってどういうこと?」

 黙り込んでしまった美女シメト美少女スズの二人。俺があまりにもなんでもできるせいか落ち込んだように見える。なので二人になんで俺が二人を欲するのかを説明してやる。

「それは簡単。これが魔道具じゃないからだよ。ぜーんぶスキル製。そこで室内の整備してるゴーレムと一緒の、スキル製ゴーレムなんだよ」

 ぽかん、とした二人に俺は別に作ったカメラを机に置いた。カメラだ。デジカメじゃない。学校の理科で習った原始的な構造のカメラを思い出して、いろいろと工夫しながらそれっぽいものを作ったのだ。

 ちなみにアクロード王国にもカメラが流行った時期はあったようだ。といってもそれはかなり昔の話、この二人の先祖がいた頃だな。

 そのご先祖さまは頑張って王国の文化レベルを上げたようだが、戦闘スキル至上主義や何度か起こったSランク迷宮からの魔物の大規模暴走スタンピードによる影響によって文化レベルが後退し、そして生産職が迫害される中でカメラの生産数は減少していって、今では王族や高位貴族相手にごくたまにトリスメギストス家がかなりの高値で売りつける程度らしい。

 俺はカメラをスマホの横に置く。電話も置いた。転送魔法式の電話じゃない。糸電話である。二人の前で糸電話の片方を俺の口に当てて、スズの耳に片方をつけて俺はあーあー、聞こえますか聞こえますか? と会話してからテーブルに戻し、二人に言う。

「こうやって電話とかカメラとかを研究して、このサイズの機械の中に入れられるようにすればスマホができる。俺が生きていた元の、っていうと変だが元の世界だとこのスマホはみんな当たり前に持っていた」

「なる、ほど……これが今は全部スキルで……だから魔道具化を目指すんだ」

 眼鏡美女シメトに俺は頷く。実際にやっていた世界があるから無理じゃないというように。

「といっても今のところの目標だな。錬金術師も魔道具研究者もどんどん増やしていく予定だから気楽にやっていいぞ」

 コンピューターが生まれてからスマホの作成まで元の世界で何十年とかかったのだ。焦る必要はない。

 この二人が俺のゲイツ林檎ジョブスになってくれるかはわからないが、とにかく人数を増やして様々なものを研究させていけば、いつかはスキルに頼らずともスマホができるに違いない。

 それに、作るのはスマホだけじゃない。現在の魔道具の魔力供給を電池みたいな魔石式じゃなくて発電機式にするシステムも作っていきたい。

 そして、そういうのを作るには様々な研究者を用意するのが一番安定するのだ。

 こいつらが凡才なのか天才なのかはわからないが、俺はたくさんのくだらないものから素晴らしいものまで、それらすべてを一人の人間に作らせようなんて考えていない。

 一人の人間が死ねば全て終わってしまう開発環境など、クソ喰らえである。

「うん、わかったよ旦那様」

「はい……がんばります」

 すぐに研究に取り掛かろうとする二人を抑えて、俺はその日の晩に二人とヤッた。

 妾として受け入れた以上、淫紋刻むのは義務だよ義務。楽しい義務だけどな。

 あと一週間に一回は必ず妾としての義務でエロいことをする契約もしておいた。そうしないと二人とも研究に熱中して女を捨てるからな。


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