018 転生者、魔道具を作る


 名前 :レオンハルト・ヴィクター

 レベル:183

 職業 :大賢者

 称号 :《転生者》《追放者》《超越者》《大賢者》《魔物虐殺者》《ジャイアントキリング》《魔の森のユニークボス2討伐》《女殺し》

 スキル:

 魔法系:『自然魔法』『錬金魔法』『神聖魔法』『転移魔法』『付与魔法』『性魔法』

 パッシブ系:『魔力回復』『魔力増強』『身体強化』

 技術系:『魔道具作成』

 固有スキル:『スキルコネクト』『ゴーレムマスター』

 状態:消費レベル100にて20年間の『心身健康』『幸運』『厄災回避』を保証。


 昨日、本屋から大量に購入した本の中にあった『魔道具大全』を読み、魔道具作成の知識を獲得し、魔道具作成の経験を得てからレベルを上げれば、レベルアップ時の余剰経験値と、魔道具に関する知識や経験を消費して『魔道具作成』のスキルが発生した。

 このスキルを使用して、俺は魔道具を作成していく。

(スキルというのは不思議なもんだな。得た記憶のない知識がどこからか流れ込んでくる)

 だが便利だ。

 生産スキルがあれば作りたいものをスキル熟練度に応じ、スキルから発生した技能を用いて作れるようになるのだ。

 今回、作るのは指輪だった。

 『魔道具作成』スキルにある『指輪作成』の技能を用いる。

 前回と比較したいので、以前にメイドたちに作ったものと同じものを作っていくが、今度はスキルに従って身体を動かしていく。

 前回は魔石を磨いて、骨を加工して指輪を作ったが、今回の作成方法はかなり違う。

 魔石を砕いて作った魔石粉を、素材の一つである魔物の骨で作った輪に焼き付けて、魔力回路を作成していく。

 これは指輪型魔道具でもポピュラーな、嵌める魔石に宿るを魔物の骨を使って増幅する形式の魔道具だ。

(以前作ったときは、ただの魔石が嵌っただけの指輪だったが……)

 こうして改めて『魔道具作成』のスキルを使って作ってみればその効果は全く違うものになる。

 俺が新しく作った火熊魔石の指輪は『火耐性』『剛力』のスキルが魔石から引き出され、装備することでそれらのスキルが自動発動する魔道具となっていた。

 ちなみに、これらのスキルの維持コストは、装備することで身体から吸い取られる微々たる量の魔力が賄われている。

 魔道具には省エネの術式も刻んであるから自分で同じスキルを取得して使用するよりもずっとローコストのはずだった。

「ふむ、結構面白いな」

 この魔道具作成、ゴーレムに付与魔法を使ってスキルを付与する形式と違うのは、魔石や他の素材の組み合わせでいろいろな効果付きの魔道具を作成できる点だろうか。

 そもそも俺が様々なスキルを持つゴーレムを作れるのは、『スキルコネクト』という俺が持つ固有スキルの効果があるからだ。

 誰かからスキルを借りればそのスキル付きゴーレムを作成できる俺のような存在はなかなかいない。

 ゆえに多種多様なスキルを持ったゴーレムなど作れる奴はそうそういないのである。

 そしてスキルコネクトがあるから俺に魔導具は無用かと言えばそんなことはない。

 俺のゴーレムにも欠点はある。

 俺以外に維持や修理ができず、また再現できないという欠点だ。

 何しろ土魔法で作った土を超圧縮した土の塊に付与魔法でスキルを付与して作っただけのものである。

(そんなもん、どうやって再現しろって話だな)

 これらのゴーレムに大量に囲まれている、この拠点は少しばかり危うい。

 今はいいかもしれないが、俺が死んだ途端に維持魔力が尽きて、ゴミになる未来が待っているのだ。

(俺は二度目の人生だからいつ死んでもそこまで後悔はないが、俺に付き合わされている女たちが不憫だからな)

 故に今使っているゴーレムの代用品なんかを魔道具に切り替えていけば、俺に何かあって、ゴーレムの維持ができなくなってもこの拠点を多少は保たせることができるようになるだろう。

(転移魔法陣は、真っ先に魔道具で作った方がいいだろうな)

 何しろレベルのある異世界なのだ。俺以上の強者だってきっとゴロゴロいるに違いない。

 だからメイドたちには『我が恩讐は蛇が如くに絡みつく』でレベルを消費して、病気にならないようにとか、俺に対処できない災厄がやってこないとかそういう付与はしておいたが、そういう加護を超えるやばい奴に襲われて即死したらと考えると恐ろしくて仕方がない。

 それに俺が突発的になんかの強敵に襲われて死んだり、出先で魔法封印されたりしたときに、メイドたちがここから脱出できなくなるのもまずいだろう。

 彼女たちはレベル高いものの、戦闘経験はない。

 魔物に襲われたらサンドバッグにされるだけだ。

 装備を整えて、頑張って逃げればなんとかなるかもしれないが、戦えないメイドにそういう期待をするぐらいなら、俺が死んだ後に、ちゃんとこの魔境から脱出できるように転移魔法陣の設備をしっかり作っておいた方がいい。

 というわけで魔道具作成スキルの熟練度を上げていく。

 今の状態でも転移魔法陣付きの装置はまぁ作れないこともないのだが、熟練度を上げて、エネルギー消費を軽減しておきたいし、デザインとかも凝ったものを作れるようになりたい。

 そんな感じで午前中を過ごそうと思ったのだが――「旦那様? ここにいたのですか?」

 振り返ればシエラがいた。研究室を興味深そうに見ている。傍にはメイドのレイラがいる。

「おう、シエラか。どうした? 暇なのか?」

「ええと、他の愛妾の方々はばあや・・・に指導を受けていたもので……その、お邪魔でしたか?」

 五人のメイドと購入した奴隷はシエラが連れてきた婆さんに任せていた。

 アシュリーたちはなんのかんのと若手メイドだからな。しかも男爵家の、だ。

 そう、彼女たちは下級貴族のメイド相応の教育しか受けていない。

 そしてそれを彼女たちは自分たちで問題視していた。

(俺がなんでもする弊害なんだろうなぁ)

 ここは魔の森で、周囲には何もない。主人であるゴーレムマスターはどんな問題もゴーレムを作って解決してしまう。

 つまりはメイドたちは暇で暇でしょうがなく、その暇を解消するためにメイド技能の上達を望んでいたのだ。

 なお、そのモチベーション上昇には、レベルが上がって力と意欲が有り余っているというのも関係している。

 そんな五人をシエラの教育係も務めていたメイド兼産婆の婆さんに引き合わせれば、実に指導しがいがあると婆さんは笑っていた。

 俺はシエラに向き直ると、邪魔したかな? という表情をしているシエラに向かって首を横に振る。

「いや、邪魔じゃないが、なんだ暇なのか?」

「ええ、まぁ」

「なーんもないからなここ」

 あはは、と笑えば面白くなかったらしく微妙そうな顔をするシエラ。

 ふぅむ、と俺は二人を見て、おや、と思った。

 風呂に入ったらしく、シエラとレイラの髪に潤いが見えたからだ。つまり乾ききっていないとも言える。

 ふーん、せっかくだしドライヤーでも作ってみるか。

 シエラたちと会話をしながら、俺は新しく魔道具を作り始める。

 火属性と風属性の魔石を組み合わせて、ドライヤーのようなものを作るのだ。前世の知識があるから、こちらの世界にはない魔道具のアイデアはいくらでも出てくる。

 火炎放射器にならないように出力を変え、三段階ぐらいで強弱の概念を付与し、あとは冷風も出るようにする。

 火傷しない温度に調整できたことを確認して、うむ、と頷いた。

「ほら、できた」

「ええと、これは魔道具ですか? すごい速度で作ってましたけど」

「ああ、こいつはドライヤーと言う。温風を出して濡れたものを乾かすことができる。髪を乾かすのに使えるぞ」

 ただ、温風を当てすぎると髪に悪いということを伝え、銀髪紅眼の美少女メイドであるレイラに渡してやれば、レイラは了解しました、とドライヤーをまずは自分に使ってどういうものかの理解を得てから、シエラのまだ濡れていた髪を乾かしていく。

「む、鏡もいるか。ちょっと待ってろ」

 魔の森には鏡面亀という魔法を反射する亀がいて、その甲羅が倉庫には山積みになっている。

 それをゴーレムに持ってこさせ、手鏡と鏡台を作成して、シエラたちの前に置いてやる。

「あー、髪用の手入れ油も作るか」

 確か、良い感じに油がとれそうな果実があったはずだ。

 油を抽出する道具とかはいらない。錬金魔法に『抽出』があるからだ。

 ゴーレムに持ってこさせた果実に対して抽出魔法を使用する。毒などがあったら困るので鑑定魔法で詳細を調べ、髪の保湿にも使えることを確認してからガラス製の小瓶に詰めてシエラたちに渡す。

 そう、ガラスだ。ガラスが作れるようになったのである。

 ガラスの作り方をカノータス領で購入した技術書から俺は学んでいた。

 そしてその技術書に載っていた素材を各地に走らせたゴーレムを使って回収していた。

 俺が寝ている間にもゴーレムは動いてるからな。各地に走らせているゴーレムはなんのかんのと大量の距離を移動している。

 ちなみにガラスの材料は珪砂にソーダ灰、石灰だ。石灰はガラス作り以外にも使うのでそこそこの量を確保していた。

 ああ、もちろん他人の領地での密掘にならないようにちゃんと魔の森方面を突き抜けて、人間の支配領域じゃない場所に向けてゴーレムを走らせた先で採取した。

 既存の鉱山から内緒で採掘する転生者とかほんと迷惑だよな。何考えてるんだろう。密掘は犯罪だぜ? 遵法精神ないんだろうな。理解できないぜ。

 ああ、それと岩塩は見つからなかったが、ゴーレムの一体が海にたどり着いたので海水を大量に転移して、それから不純物を抜いた塩を1トンほど抽出して倉庫に入れてある。

「すごいですね。旦那様は、その、なんでもできるんですか?」

 様々なものを作る俺を見ながらシエラは言う。

 そんなシエラの後ろでは俺が渡した油をシエラの髪にメイドのレイラが優しく塗り込んでいた。

 倉庫から蜘蛛糸で織ったタオルがゴーレムによって運ばれてきて、レイラはそれを使って余分な油などを拭っていく。

 俺は魔物の骨を使って櫛などの手入れ道具を作り、レイラに渡してやった。

「なんでも、ねぇ。レベルがここまで上がったらできないことの方が珍しいが……問題は俺が何やっていいかわからないってことだな」

「何やっていいか、わからない?」

「モチベーションだな。俺は力を持て余している」

 だから女が喜びそうなものを作った。指輪、ドライヤー、髪用の保湿油に、櫛だのなんだのと。

 ただシエラだけ優遇してるとハーレム内の殺し合いを防ぐ淫紋があってもメイドたちの機嫌が悪くなりそうなので、人数分作る。今後女が増えたときのために予備もだ。

「力を、持て余してるんですか」

 困ったようにシエラが言う。そんなシエラを見て、ふと思いつく。

 彼女の問題の解決には暇潰しの道具を作ってやってもいいが、こっちの方がいいだろう。

「ああ、そうだ。日中暇だろ。学園に行っていいぞ」

 シエラの年齢は十六歳、現在の俺より一回り大きい年齢の、花の女子高生JKだ。

「え? えぇ!? 学園に通って、いいんですか?」

「ちゃんと夜には戻ってきて貰うが、こんな何もないところに日中いても暇だろ?」

 レイラにも、いいか? と聞けば「旦那様の思うがままに」と返された。

「あー、レイラは転移魔法覚えられそうだし、シエラの送り迎えのためにも教えてやろう」

 鑑定したらレイラには貴種流離譚という、零落した貴族の子供が持つような称号があるし、その称号の効果でおそらくだが取得できている『英雄』スキルがあるからステータスの上昇量も多い。

 転移魔法を消費されるMPも十分に賄えるように見えた。

「私に、魔法ですか?」

「魔力あるんだから覚えてけ、ちょっと理論を学んで、レベル上げ下げしてれば意外に早く覚えるもんだぞ」

 上げ下げ、という言葉に二人の顔が赤くなる。うむ、スキルを覚えるにはレベルを上げるのが手っ取り早いし、そのレベル上げならモンスター倒すより俺とセックスするのが一番手っ取り早いからな。

 俺は「せっかくお風呂入ったのに」などというシエラたちの手をとると、楽しげな気分で寝室に向かうのだった。


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