第8話真相の真相

とんでもない事を聞いた私は、まだ頭の中がぐちゃぐちゃだった。

でも一つ疑問が…


「……どうしてみんな、そんな事知ってるの?この世界の住人も知っている程の事なの?」


少し沈黙


「私があんたの一つ前の時渡りなんだよ。」

深く息を吐きながら、おばあちゃんは言った。

「おばあちゃんが?!!」

「そして、俺が片翼。」

「…グランが…おばあちゃんの片翼?」

「私も日本から来たんだよ。もう60年も前に。」

「ろっ!60年も前に!?」

「当時私は、家の仕事をしながら、弟妹のお守りをしていた。何か声がすると振り返ると、すでにここに転移していた。」

「彼女は弱かった。しばらくは全てを拒絶し、心を閉ざし一人で泣いていた。」

「ふふふ、懐かしいねぇ。」

「俺がこの子の片翼だと一目見て分かった。そして守らなきゃと。」

グランの手がおばあちゃんの手を優しく包む。

「こんなクソみたいな理だけど、俺は敢えて女神の思惑に乗った。彼女も段々と自分の作られた運命を理解し、受け入れてくれた。」


「それで?二人の力で穢れは払われたの?でもどうしてまた…」

「歪んだ力を使うんだから、使い手にも軋みは来る。じわじわとね。」

「私が前の時渡りから力を受け継いだときには、彼女のちからはほとんどなかった。」

「つまり ¨使い捨て¨ なんだよ、俺達は!!」

ダンッ!!とグランが机を叩いた。

「今の器の力がなくなると、女神は次の時渡りを転移させる。その繰り返しだったんだ。で、それでミナミが召還されたって訳。」


「なんだか………腹の立つ話ね。人をなんだと思ってるのよ!」


『この二人は、ミナミが来る前に、器としての力を失くした。これは女神にとっても計算外だったんじゃ。器がなければ女神はこの世を統治できない。段々と穢れが大きくなり、この世は滅んでしまう。

そして次の器が来る (つなぎ)として、儂を作った。儂は片翼の出来損ないだ。

女神が作った失敗作。そんなものに頼らなければならなくなったのは、笑えるかなぁ。』

『くーちゃん……』


グランがくーちゃんを膝に乗せ、労るように頭を撫でた。

「ミナミが何故、この世界に来てすぐに力を使えなかったのかは分からない。そして片翼が近くに居なかったのかも…」


「それは我から説明しよう。」

私はザナトールの膝から降ろされ、椅子に座らされた。幼児抱きで………


「我は片翼として生を受けた。しかしその運命に納得が出来ず、女神のもとへ行き、女神を拒絶した。」


「ザナ、女神様の所に行けるの?」

「あぁ。我は女神の残り少ない力を全て注がれた。少しでも “今“ を続けようとした最後の足掻きだ。」


「そして…女神様の所へ行ってどうなったの?」


「それはそれは激怒されたよ。自分を、この世界を、否定し拒絶されたんだからな。

ーーー滅べばいい……と思った、こんな歪んだ世界など。」


再び沈黙。


「女神は我の意識を消滅させ、新しく自分に従順な記憶にすげ替えようとした。

ほとんど力がないと我も油断していた。

女神を討つつもりが、逆に……」


「それで森に倒れていたのね。」


「我の力と記憶のほとんどを奪われ、もうどうにでもなれと投げやりになっていた。しかし心の奥では 時渡りを、我が半身を探せとの使命に相反しながら…」


くーちゃんがグランの膝の上でゴロゴロ喉を鳴らしてる。

おばあちゃんは窓の遠くの景色を眺めてた。


「ミナミに拾われ、助けられ、世話をしてもらううちに、我はミナミを求めた。これは女神の強制力ではなく、本心からだ。もう少し、この世界で生きていこうと思えるようになっていった。」


なんだか凄いことが、私の周りで起こってる事に、まだ心が追いついてないけど、

これからどうすればいいの?

みんなと笑って平和に暮らしたいだけなのに。


飲みかけのお茶は、すっかり冷えてしまっていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る