◯青春特異体質
第5話 結城美波
—1—
初日の授業はどれも触り程度で、教科書を眺めていたらいつの間にか終わっていた。
灯はオレとは対照的で先生の問いに対して積極的に手を挙げて発言するし、進んで音読もするしで大活躍だった。
容姿端麗で明るくて頭も良いなんてハイスペックすぎるだろ。
まあ、その分少し変わってるところがあるからトントンか。何がトントンなのかは分からないが。
「提出物を忘れた人は明日必ず持ってくるように。それと休み明けで生活リズムが戻らないからって授業中寝ることがないように。他の先生から報告を受けたら放課後補習にするからな」
帰りのホームルーム。担任の白幡先生の脅しが怖い。絶対寝ないようにしないとな。
「それじゃあ号令係は犬神か。帰りの挨拶頼む」
「起立! 注目! 礼!」
『「さようなら〜」』
坊主頭の犬神が号令を掛けて解散となった。
放課後は部活に行く生徒と帰宅する生徒に分かれる。
教室に残って雑談する生徒も極少数いるがまだ新クラス初日ということもあってグループ形成もそこまで進んでいない。
教室を見回しても残ろうとする生徒はいなさそうだ。
「何ぼーっとしてるの? ほら行くよ!」
鞄を背負い、クラスメイトを観察していたオレの腕を灯が引っ張った。
「行くってどこに? って力強いなお前」
灯の手を振り解こうしたがガシッと掴まれていて振り解けなかった。
かなり体幹がしっかりしている。もしかして運動もできる口か?
「青トラになったからにはお互いのことを知っておいた方がいいでしょ?」
「まあ、それはそうだけど」
「私、今日は部活休みだから。ハンバーガーでも食べながら話そ! もちろんポテトと三角パイもね!」
「それってただ灯がお腹空いてるだけじゃないか? 最初に言っておくが奢らないからな。それと早く100円を返せ」
「今日はもう手持ちが無いから明日絶対返すよ。だから行くよ!」
「言ってることが滅茶苦茶だな。おい、逃げたりしないから手を離せってば。うぐっ」
灯に半分振り回される形で廊下に出るとオレの肩が何かにぶつかった。
瞬時にぶつかった先に目をやると小柄な少女が尻餅をついていた。
「ごめん、大丈夫か? 怪我とかしてないか?」
「だ、大丈夫です。触らないで下さい!」
少女に手を差し伸べたら手の甲で払われてしまった。
ぶつかってしまったのは完全にこちらに非があるけど何もそんなに敵意むきだしな視線を向けてこなくてもよくないか?
「同じクラスの
「はい」
「ごめんね、私が佐伯くんのことを引っ張ったのが原因だから悪いのは私。本当にごめんなさい」
灯が結城に頭を下げた。
「い、いえ、避けられなかった私にも非はありますので」
「ううん、100パーセント悪いのはこっちだから結城さんは謝らないで」
「わ、わかりました」
灯の誠意が伝わったのか結城も謝罪を受け入れてくれたみたいだ。
結城は灯が差し出した手を取り、スカートに付いた埃を払った。
謝罪は受け入れたみたいだが、結城がオレに向ける視線が変わることはなかった。
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