第15話 告白
体育の授業。
男子はバスケ、女子はバレーをしていた。
ちなみに、僕は見学だ。
体育館の端に座って、授業のレポートを書いている。
淡々とレポートを書いていると、
「何してるの?」
突如、誰かが話しかけてきた。
顔を上げると、体操着姿の篠宮が視界に入る。
髪を後ろに束ねてポニーテールにしていた。
ポニーテールの篠宮さん、マジで可愛いなぁ……。
「ねぇ聞いてる? そこで何してんの?」
「今日は見学なんだ」
「え? そうなの? アタシと同じじゃん」
「え? は? 篠宮も見学なの?」
「体育館シューズ忘れちゃってさ……だから見学なの」
体育館シューズがないと体育の授業を受けられない。
篠宮は体育館シューズを忘れたのか。
相変わらず、ポンコツだな……。
「坂田くんはなんで見学なの?」
「体操着を忘れたんだ……」
「ぷくく、坂田くんって意外と抜けてるよね」
「体育館シューズ忘れた奴に言われたくねぇよ」
「ふふ」
「はは」
僕たちは笑い合う。
やっぱり、篠宮と話すのは楽しいなぁ。
「隣座ってもいい?」
「ああ、いいよ」
篠宮は僕の隣に腰を下ろす。
距離が近くて、僕の肩と篠宮の肩が軽く当たる。
ヤバい、なんかドキドキしてきた……。
おそらく、僕の顔は真っ赤だろう。
ふと横に目を向けると、篠宮の顔も紅潮していた。
彼女もドキドキしているようだ。
僕と篠宮を見て、他の生徒たちは騒ぎ始める。
「坂田と篠宮って付き合ってんの?」
「たぶん、付き合ってると思うぞ。アイツら、いつも一緒にいるからな」
「羨ましいなぁ……俺も篠宮みたいな可愛い女の子と付き合いてぇ~」
「坂田のやつ、どうやって篠宮を落としたんだ……? クソっ、羨ましいっ」
男子生徒が僕に殺気を向けてくる。
彼らの殺気に苦笑いを浮かべていると、篠宮がトントンと優しく肩を叩いてきた。
「ねぇねぇ」
「ん? どうした……?」
「今日の放課後、屋上に来てくれない……?」
篠宮の言葉に僕は「え……?」と変な声を漏らす。
視線で「なんで?」と問うと、篠宮はまっすぐ言葉を投げた。
「大事な話があるんだ……だからその、絶対に来てね?」
「……」
大事な話か……。
もしかして、告白かな?
いや、まさかなぁ……。
◇◇◇
――放課後――
チャイム音が僕の鼓膜を刺激する。
やっと午後の授業が終了したのだ。
さてと、帰るか。
そういえば、篠宮が『放課後、屋上に来て』と言っていたなぁ。
篠宮との約束を思い出した僕は、教室を出て階段を上がる。
やっと屋上に到着した。
僕は屋上のドアを開けて、中に足を踏み入れる。
「ん? あれは……?」
屋上のベンチに一人の女性が座っていた。
肩まで伸びた亜麻色の髪。
アイドル顔負けの容姿。
スカートの丈が短くて、雪のような太ももが露わになっていた。
篠宮朱理だ。
「あっ、坂田くん」
僕に気づいた篠宮は、ベンチから立ち上がる。
こちらに歩み寄ってきた。
「来てくれてありがとう」
篠宮は明るい笑顔を浮かべる。
彼女の笑顔が眩しすぎて直視できない。
マジで可愛いな、コイツ……。
「僕に何の用だ……?」
「えーっと、そのね……」
篠宮はモジモジと手遊びをし始める。
顔はリンゴのように赤かった。
ん? なんだ?
さっきから様子が変だぞ?
篠宮は「すぅ、はぁ……」と深呼吸をして、真剣な表情になる。
「坂田くん……」
篠宮の声は震えていた。
声だけじゃない。
プルプルと小刻みに身体まで震えていた。
緊張しているんだろう。
僕は彼女の言葉に耳を傾ける。
「あなたのことが好きですっ……」
「……ぇ……?」
篠宮の告白を耳にして、頭の中が真っ白になる。
女の子に告白された。
しかも、相手は超がつくほどの美少女だ。
なんだこれ?
本当に現実か?
夢の世界にいるような感覚に襲われる。
呆気に取られている僕を無視して、篠宮は続きの言葉を紡ぐ。
「坂田くんのことが大好きなのっ……だから、アタシと付き合ってくださいっ」
篠宮は涙目になっていた。
あの明るくて可愛い篠宮が、今は弱々しく見える。
脆くて、弱くて、美しくて。
おそらく、篠宮は勇気を振り絞って僕に告白したんだろう。
「あ、あの……坂田くん?」
「ん? どうした……?」
「早く返事してほしいんだけど……」
「あっ、悪いっ……」
そうだ、早く告白の返事をしないと。
けど、なんて返事すればいいんだ……?
そもそも、僕は篠宮のことをどう思っているんだ?
分からない。
分からないけど、篠宮に彼氏ができるのは嫌だ。
ずっと一緒にいたい。
彼女を独り占めしたい。
もっと彼女に愛されたい。
ん? それって……そうか、僕も篠宮のことが好きなのか。
「篠宮」
「は、はい……」
「ぼっ……」
喉が渇きすぎて掠れた声が出てしまう。
極限の緊張状態に陥ってしまい、自分の想いを口にすることすらままならない。
頭が回らなくなって、訳が分からなくなる。
一言、たった一言だけでいいんだ。
「好きだ……」
「え……?」
「僕もお前のことが好きだっ」
「っ……」
僕の告白に篠宮は声にもならない声を上げる。
驚きすぎてポカンとしていた。
僕も篠宮も喋らなくなる。
そのせいで、屋上が静寂に包まれる。
物音一つしない。
き、気まずいなぁ。
しばらくして篠宮は口を開いた。
「本当にアタシのことが好きなの……?」
「ああ、お前のことが好きだっ。大好きだっ」
僕はそう言って、ギュッと篠宮を抱きしめる。
僕の大胆な行動に篠宮は目を見開く。
彼女も震えた手を伸ばして、僕を抱き返してくれた。
林檎のような甘い香りが鼻腔をくすぐり、ドキドキと胸が高鳴る。
良い香りだな……。
「ねぇ……」
「な、なんだ……?」
「もうアタシたちって恋人なのかな……?」
「ああ、恋人だ」
「そっか……」
彼女は「えへへ」と嬉しそうに笑う。
つられて僕も笑った。
こうして僕たちは恋人になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます