第10話 デート1

【坂田祐二 視点】

 

 今日は篠宮朱理とデートだ。


 可愛い女の子とデート……。

 そう思った途端、ドキドキしてしまう。


 やっと篠宮の家に到着した。

 僕はインターホンを押して、篠宮を待つ。


 しばらくして家の扉が開かれた。

 それと同時に篠宮が現れる。


「っ……」


 篠宮の私服姿を見て、僕は声にもならない声を上げる。


 上はぴったりと身体にフィットした白いニット。

 露出度の高い服じゃないのに、いつも以上にセクシーに見える。


 下はタイトミニスカート。

 お尻や太ももの曲線が強調されていた。

 タイトスカートから伸びる生足は雪のように白かった。


 今日の篠宮はいつも以上にエロいなぁ……。

 正直、目のやり場に困る。


「おはよう、篠宮……」

「うん、おはよう、坂田くんっ」


 篠宮はこちらに来て、明るい笑顔を咲かせる。

 彼女の笑顔が眩しくて、思わず目を逸らす。

 そんな僕を見て、篠宮は小首を傾げる。

 

「なんで目逸らすの……?」

「それはその……」


 戸惑っている僕を見て、篠宮は小悪魔のような笑みを浮かべる。


「もしかして、ドキドキしてる?」

「あぁ、そうだよ……。篠宮が可愛いからドキドキしてんだよ」

「っ……そっか」


 僕の言葉に篠宮の顔はカッと赤くなる。

 耳まで真っ赤だ。


「……」

「……」


 僕も篠宮も喋らなくなる。

 そのせいで、周囲に気まずい空気が流れる。

 き、気まずい……。


 この気まずい空気に耐えきれなくなった僕は、ゆっくりと口を開いた。


「その服……似合ってるな」

「え……? ほんと?」

「ああ、凄く可愛いよ」

「っ……あ、ありがとう」


 篠宮は「えへへ」とはにかんだ笑顔を浮かべる。

 少しだけ彼女の頬は茜色に染まっていた。

 照れてるのかな?


「そろそろ行くか」

「そうだね……」


 僕たちは横に並んで目的地に向かう。

 目的地は映画館だ。


 映画か。

 なんかデートっぽいな。


「ねぇ……」

「ん? どうした?」

「手繋いでもいい……?」

「……」


 篠宮の提案に僕は黙り込む。

 僕と手を繋ぎたいだと……?

 これって……。


 たぶん、篠宮の好きな人は僕だ。

 僕のことが好きだから手を繋ぎたいんだろう。


 だが、謎だ。


 僕たちはまだ出会って一ヵ月しか経ってない。

 篠宮はいつ僕のことが好きになったんだ?

 

 


 一昨日、篠宮は東条に襲われた。

 お尻や胸を触られて、キスされそうになった。

 僕はそんな彼女を助けた。


 おそらく、篠宮は吊り橋効果で僕のことが好きになったんだろう。

 

 黙り込んでいる僕を見て、篠宮は不安げな表情になる。


「嫌かな? アタシと手繋ぐの……?」

「ううん、全然嫌じゃないよっ」

「え……?」


 篠宮は目を丸くする。


「ほんとっ?」

「ああ、本当だ」


 僕はそう言って篠宮の手を握る。

 彼女の手は小さくて柔らかい。

 女の子の手だった。

 

 彼女も僕の手を握り返してきた。

 それと同時にドキドキと胸が高鳴る。

 ヤバい、なんか緊張してきた。


「あはは……恥ずかしいね」

「だな……」

 

 篠宮の顔は真っ赤だった。

 おそらく、僕の顔も真っ赤だろう。


「坂田くんの手、温かいね。カイロみたい」

「篠宮の手は冷たいなぁ」

「あはは……冷え性ですから」


 なんて会話を続ける。

 しばらくして映画館に到着した。


 僕たちは映画館の中に入って、自動券売機がある場所に移動する。

 映画のチケットはこの自動券売機を使って購入するようだ。


「どれにする?」

「うーん……じゃあこの恋愛映画にしようよ」

「恋愛映画か……」

「あれ? 嫌だった?」

「いや、そんなことないよっ。それにするか」

「うんっ」


 僕たちは自動券売機を操作して、恋愛映画のチケットを購入する。

 続いて座席を選んだ。


 ポップコーンとドリンクを購入したあと、僕たちはシアターに足を踏み入れる。

 つい最近公開された映画なので、シアターの中にはたくさん人がいた。


「カップル多いね」

「だな」


 僕たちはさっき選んだ座席に腰を下ろす。


 ポップコーンを食べながら映画の予告やCMを観ていると、篠宮が話しかけてきた。


「坂田くんはよく映画観るの?」

「たまに友達と観るぞ」

「友達? それって男の子だよね? 女の子じゃないよね……?」

「え? は……? 急になんだよ?」

「いいから答えてっ。そのお友達は男の子? それとも女の子?」

「……男の子だけど」

「そっか……」


 僕の言葉に篠宮は安堵の胸を撫で下ろす。

 安心していた。


 しばらくして映画が上映された。

 僕たちは会話をやめて、映画に集中する。

 

 映画の中盤、主人公がヒロインに告白した。

 ヒロインは良い返事をして、二人は熱いキスをし始める。

 ディープなキスを見て、僕は驚きを隠せなかった。


 おいおい、急にキスすんなよ……。

 気まずいだろっ。


 館内に気まずい空気が流れる。

 ふと横を振り向くと、篠宮と目が合った。

 彼女は僕を見て、「えへへ」と笑顔を向けてくる。

 可愛いなぁ……。

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