第6話 カラオケ

【祐二 視点】


「なぁ祐二」


 同じクラスの羽島正人が話しかけてきた。

 

「なんだよ、羽島?」

「頼む、宿題を見せてくれ!」

「は……?」


 僕は思わず目を丸くする。


「お前、昨日の宿題やってないのか?」

「あはは……やる時間なくて」

「ったく、しょうがねぇな……」


 僕はそう言いつつ、カバンの中から宿題のプリントを取り出す。

 それを羽島に渡した。


「今日だけだぞ」

「おぉぉ~! サンキュー! 祐二!」


 羽島は宿題のプリントを受け取って、自分の席に戻る。

 

「あっ、そうだ。祐二」


 また羽島が話しかけてきた。


「ん? 今度はなんだ?」

「今日さ、友達とカラオケで遊ぶんだ」

「それがどうした?」

「お前も来るか?」


 僕は「え……?」と声を漏らす。


「いいのか?」

「おうっ、もちろんだ」

「じゃあ参加するよ」

「おっけ」


 放課後、羽島たちとカラオケで遊ぶことになった。

 カラオケか……。

 ちょっとだけ楽しみだ。

 


 ◇◇◇



 ――放課後――


 午後の授業が終わった。

 教科書と筆記用具を鞄の中に入れて、僕は家に向かう。

 やっと自宅に到着した。


 僕は私服に着替えて、目的地に向かう。

 現在、僕が向かっている場所はカラオケ店だ。


 15分後、カラオケ店に到着した。

 カラオケ店の入り口に羽島たちがいた。

 男子が3人。女子が二人だ。


 羽島は僕の姿を見て、笑顔を浮かべる。


「おっ、祐二。やっと来たか」

「遅れてすまん」

「いや、俺たちも今来たところだ」

「そうか……」


 僕たちはカラオケ店の中に足を踏み入れる。

 受付で手続きを済ませて、店員に指示された部屋に移動する。

 部屋の中には巨大なモニターとL字型の赤いソファが見受けられた。

 

 早速。僕たちはソファに座って歌い始める。

 今、歌っているのは羽島だ。

 アイツ、音痴だな……。


 ふと横を振り向くと、

 一人の美少女と目が合った。


 肩まで伸びた亜麻色の髪。

 アイドル顔負けの容姿。

 学校の制服を着こなしていた。


 同じクラスの篠宮しのみや朱理あかりだ。

 僕の姿を見て、篠宮は「ふふ」と可愛らしく笑う。


「坂田くんも来てたんだ。正人に誘われたの?」

「まぁな……。お前も羽島に誘われたのか?」

「うん、そうだよ」


 篠宮も羽島に誘われたのか。


 ん? コイツ、羽島のことを「正人」と名前で呼んでいるな。

 名前で呼び合う仲か……。

 もしかして、羽島と篠宮は付き合っているのか?

 気づいたら、疑問を口にしていた。

 

「お前と羽島はどういう関係なんだ?」

「え?」

 

 篠宮は目を丸くする。

 けど、すぐに「ふふ」と悪戯な笑みを浮かべる。


「なになに、気になるの?」

「ああ、気になる。どういう関係なんだ?」

「当ててみて」

「うーん、恋人か?」


 僕の言葉に篠宮は「ぷはははっ」と腹を抱えて笑う。

 

「違う、違う。アタシと正人は付き合ってないよ」

「ん? そうなのか……?」

「うん、そうだよ」

「じゃあお前と羽島はどういう関係なんだ?」

「私たちはね、幼馴染なんだ。幼稚園の頃から仲良しなの」

「ほう、幼馴染か」


 篠宮と羽島は幼馴染なのか。

 なるほど、だから2人は仲良しなのか。

 色々と納得だ。


羽島アイツのこと好きなのか?」

「ぷくく、そんなわけないでしょ。アタシ、恋愛には興味ないからね」


 篠宮は恋愛に興味ないのか。

 おそらく、初恋もまだなんだろうな。


「坂田くんはどうなの?」

「どうとは……?」

「好きな人いる?」

「いや、いないけど」

「ふふ、そっか」


 なんて会話を続けた。


 ◇◇◇




 ――2時間後――


 羽島たちと解散したあと、僕は自宅に戻ってきた。

 玄関で靴を脱いで、リビングに移動する。


 リビングには優衣がいた。

 僕を見て、優衣はキラキラと目を輝かせる。


「祐二くん。おかえり」

「ただいま、優衣」

「今日は遅かったわね。何してたの?」

「友達と遊んでた」

「ふーん、そう」


 僕は優衣の隣に座る。

 

「ねぇ」

「ん? なんだ?」

「今日ね、同じクラスの男の子に告白されたの……」

「……ぇ……」


 優衣の言葉に頭の中が真っ白になる。

 告白されただと……? 


 胸の奥がチクチクと痛む。

 なんだこの気持ちは……? 

 嫉妬か?

 ははっ、まさかなぁ……。


「本当に告白されたのか?」

「ええ、本当よ」

「そうか……」


 優衣ってモテるんだな……。

 まぁ可愛いもんな。

 モテて当然か。

 

「ソイツと付き合ったのか……?」

「そんなわけないでしょ。ちゃんと断ったわ」

「そ、そうか……」


 優衣の言葉に僕は安堵の胸を撫で下ろす。

 ん? なんで僕は安心しているんだ?

 もしかして、僕は優衣のことが好きなのか?

 だから安心したのか?

 ははっ、ま、まさかな……。

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