第57話 君と

「何考えてる?」

「なんだろうね笑ごめんねぼーっとしちゃってた」

会う時は大抵ご飯食べて、少し近所の公園を散歩して「お腹すいたから帰る前にラーメン食べてから帰る」と改札口まで私のことを送ってくれたらラーメンを食べに行ってしまう。

毎回「誘ってよ〜」というけど、食べたいけれど胃の容量そこまで今は大きくないから諦めて電車に乗って帰る。電車の中で1人になってから、何がしたいのか分からなくなって、窓の反射で映る自分と討論会を始めるのがいつもの流れ。


「近距離ではないよね、僕達。」

「そうだね〜、会いたいって思った時車出せば会いに行けるけど片道2時間は遠いね笑」

「遠距離恋愛みたいだなって思って」

「…遠距離恋愛か、」

今流行りのAIに遠距離と近距離どっちの方がいいのか聞いて見た。彼女はどちらにも良さがあるから結局人次第と言った。


「なんで君は私と会ってくれるの」

「そりゃ会いたいからだよ。一緒にいたいと思う人に会いたいって言うのはだめ?笑」

「ううん、ダメな事じゃない笑でも、」

「友達でいいから、一緒にいたいんだ」

「友達としても一緒にいれる?」

「君がそれを許してくれたから今こうして話せてるよ」

包容力があって余裕のある人。大人の余裕を感じる

けれどご飯食べるのが下手くそなんだよね、すぐポロポロこぼしちゃうから毎回ティッシュを差し出すのが私の仕事

この人と一緒になってたら幸せになったんだろうなって思う

一緒にLIVEに行って、一緒に旅行に行って。お散歩して。お互い不器用な所はカバー出来ていい関係になってたのかもしれない。

ただ心が許してくれない、もういっその事彼と幸せになってしまおうかと思ったことだって何度もあった

けど「それじゃあ彼奴と同じになっちゃうよ」と囁いてくる。近距離なんて、いや実質近距離ではなく中距離なのかもしれないけれどそんなの嫌ってきたじゃないか。


時間が欲しい、今はとにかく時間が欲しかった。

周りの時だけ止まって私の時だけ進んでくれないだろうか

早く4月さえ終わってくれればそれで良いのだ


「一過性の感情で動くのは良くないよ、ちゃんと自分と向き合って」

「でも、もう向き合ったよ」

「まだ向き合えてないよ。」

「そうなのかな」

「客観的に見るとね笑ただ苦しいから全部辞めたいって言うようにしか見えない」

「でももう苦しいよ笑しんどい、かと言ってどうすることも出来ない」

「乗り越えるしかないよ」

「どうやって?」

「きっときっかけはあるはずさ」

もうすぐ桜の咲く季節になる。

あっという間に春が来る。

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短編まとめ @snow_chamomile

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