第55話 I love…
「なぜ看護の道を目指そうと思いましたか」
「えっと〜、ドラマを見て憧れたからです。」
「なるほど。ではどんな所に憧れたのですか?」
「ん〜、かっこいいお医者さんと一緒に仕事をして結婚して幸せになっているところ?です」
高3の12月、受験も目前に迫っている大事な時期に私は学校で看護学校の面接練習をしていた。
同じ教室にはもう1人、私と同じ学校を受ける子がいた。同級生であると共にライバルでもある彼女のことをずっと気にしていたこともあり、志望理由を聞いて驚いた。
看護師と医者が恋に落ちてラブラブで幸せな日々を過ごすドラマがとても流行っているらしい。私もドラマで助産師の職業を知ったのでなんとも言えないが、そのドラマは医療の現実を描いている、というよりドSだけどかっこいい医者とおっちょこちょいで可愛い看護師の恋物語をメインにしているものだった。だからこそ医療的にみたらありえないことばかりで。こっちは本気で人生かけているのに、そんな志望理由で看護師を目指す?嘘だろ…と心に余裕のなかった私は怒りの感情を覚えた。
だから私はもっとそのドラマが嫌いになったし、ドラマを象徴する主題歌も嫌いになった。間接的にその歌手が嫌いと決めつけてしまった。ちゃんと曲を聴いたことなんて1度もなかったのに。
「この曲好きなんだよね。1番好きな曲」
好きな人が出来た。好きな人のいちばん好きな曲、気になって調べて見たらあの時の歌手さんの曲だった。
「どうして好きなの?」
「歌詞がいいんだよ。友達がすごくその歌手のこと好きで勧められて聞くようになったんだ」
「なるほど…」
音楽はずっとバックミュージックを楽しむ人間だった。
歌詞なんて全く気にして聞いたことがない。だからいつもハモリとかリズムばかり覚えて歌詞は全く覚えない。
ただ、はじめて彼が好きだという曲を聞いた瞬間、思わず泣いていたのは覚えている。歌詞がまるでひとつの物語のようになっているだけでは無い。メロディや伴奏、コード進行にも深い意味を感じた。
オチのない話をつらつらと書いてしまったが、きっとこのきっかけがなかったら私はこの歌手さんの曲を聞くことは無かったと思う。
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