第53話 ミッドナイト
「ねえ、ドライブ行こうよ」
「え今から!?何時だかわかってる!?」
「分かってるわかってる笑22時半だよ、ギリギリスタバいってからでも間に合うね」
いつだってドライブは夜に行きたくなるものだ。
本当は夜景を見に行くのなら20時前の方が綺麗に見える。まだ街は丁度夜ご飯を食べる時間だから起きているのだ。けれど私は24時前後のライトアップが消える瞬間を迎えるのが好きだから深夜帯のドライブによく行く。
毎回助手席に載せる彼女は良く眠くならないものだ、
私だったら行きも帰りも眠ってしまう自信しかない。
「なんで君は夜のドライブが好きなの?」
「なんでだろうね、夜ってさ、なんか好きなの」
「夜行性だもんね笑」
夜起きている時間が長いのは、日中起きていたくないからだ。出来れば一日中寝てしまっていたい
夜中はみんなが寝静まっていて、比べて劣等感に浸ることもない。それになにより道が走りやすい。
自分のペースで走ることが出来て周りの速さについていけなくても平気なのが好き。
「色んなこと思い出したい時に思い出せるのが思い出なんだよね。けれど思い出すと辛いこともあって。現実的にどうにもならない悩みを抱えたそんな時、どうすればいいのかっていう最適解が見つからないんだ」
「見つからないとしんどい?」
「しんどいよ笑探しても探しても見つからないならそれが答えだって受け入れることがきっと楽になる方法なんだろうね。けれどそれも出来ないから必死に探さないようにこうして深夜徘徊してるのかも」
夜は深い話も何故か簡単に出てきてしまう。
日中には隠れてしまう本音が出てきてくれるのだが、毎回飽きずに聞いてくれる彼女には少し感謝している。
助手席に座っていると色んなことが見えることを私は知っている。
運転は運転手の感情がそのまま出るから何を考えているのかも分かるし、なにより助手席に座った人にしか見ることの出来ない景色がある。
彼女の瞳には夜景と対向車のヘッドライトの他に映るものがあるのだろうけれど、何も見て欲しくなかった。
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