第52話 優しさ
「そんなの気にしなくていいんだよ、向こうが悪いんだから。なんでそんなこと気にしてそんな傷ついてるの」
「だって、なんでだろうね笑自分でもバカバカしいと思うんだけど考えたら止まらなくて。向こうがどんな気持ちなのかって向こうの立場になって考えたらもうなんか、それもそれでしんどい」
「優しすぎるんだよ。人生損するよ」
喧嘩なんてした事は無い。喧嘩はできない。
怒りという感情が欠如しているみたいで、相手を怒らせてしまって怒る喧嘩は沢山あったけれど、私が怒って喧嘩になったことは本当に、家族としか無かった。
怒りの感情が生まれても即座に悲しみに変わって涙となってどこかに消えてしまう。
相手にこれを伝えたら傷つけてしまうかな、それなら私が抱えてあげよう。心の広い優しい人間だからねと言い聞かせて何も無かったことにするのが得意だった。
だから人から優しいねと言って貰えるのも当たり前で
違う、違うんだよ。本当は嫌なことも色々あるし全部受け入れられるわけじゃないんだ。
けれど20年間でもうこの生き方が身に染みすぎて勝手にそうなっちゃうの
唯一2人だけ、何も考えずに自分の感情をぶちまけたことがあった。
1人にぶちまけた時、後悔は何も無かった。何も本当になかったのに夢に出てくるからその子のことが忘れられなかった。ぶちまけた日から1年とすこしして、私たちはまた連絡をとって会うようになった。高校時代の親友はやはり、縁を切れず私の親友なのだろう。
2人目、絶対に言わないと思ってたことを気づいたら言っていた。1度引き金を引いてしまったら機関銃は止まらない。ものすごく大きな後悔に襲われた。
違う、いや違くない、本心では一応あるが絶対に見せたくない本心だった。言ったらスッキリするとよく言うが嘘ではないか、全くスッキリしなかった。
それから、程なくして。短い月日の間に沢山の人生経験を積んで一つだけ、分かったことがあった。
無限大、無償だと思っていた私の中の優しさは、無限ではなかった。
「優しいね、いつも受け入れてくれてありがとう」と言われた時、何故かこの人とは一緒にいれないと思った。
不思議なことにどれだけ酷いことをされても、どれだけ刺されても無条件に優しさを持って与えたいと思う人がいる。難しいのかもしれないけれど、それでもと思ってしまう。
その反対、どれだけ優しさを持ってもらって共有できても受け入れられない人がいることを初めて知った。
やさしさとは、何者なのだろうか。
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