第49話 ベルの音
クリスマスソングは嫌いじゃない。寧ろ25日間街中を占領して言って、何事も無かったかのように去っていく歌たちがすきだ。
歌声とともにシャンシャンとなるベルの音を聞くと、今年もこの季節が来たのかと実感させてくれる。
クリスマスソングって、何故恋人との関係を謳った曲ばかりなのだろう。そして何故こんなにも鈴の音が似合うのだろう。
「ごめん、待った?寒かったよねほっぺ冷え冷えだ」
そう言って暖かい手で頬を包み込んでくれる彼は顔を真っ赤にして少し汗ばんでいるから、あながちここまで走ってきたのだろう。待ち合わせ時間ピッタリなのに。
「待ってないよ笑冬だからほっぺ冷たいの!君だって冷え冷えじゃんか」
この人といると楽しい、と思う。同時に悩み事とか嫌な感情がすっ飛んで幸せだとも思う。
去り際寂しがり屋な私の性格に気づいてるのか、必ず巻いてたマフラーを「次会う時に返してね」と言って私に巻いてくれるの、なんでなのだろう
お陰様でこんなに寒い時期なのにマフラーを巻かずに彼との待ち合わせ場所に向かっている自分は、客観的に見てどう写ってるのかな
クリスマスソングが街中に流れるこの季節、嫌いでは無い。けれど恋に浮ついている自分は嫌いだ。
会いたいと思う回数が日に日に増えていって、バイバイするのが寂しくなっている時点でもう既に手遅れなのかもしれない。
今日も彼が巻いてくれたマフラーを身にまとって帰路につく。次会えるのはいつだろうと思案しながら。
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