第47話 イブの夜
イブの夜
クリスマスイブの日、24日と25日は街がいつもより1層沸き立つ。
木々は鮮やかな電飾で彩られ、街中には手を繋いで温もりと幸せを噛み締めながら歩みを勧める人が増える
例年クリスマスイブの日は大抵学校とかバイトがあって、それが終わったあと友達と漫画喫茶に篭ってケーキをつつくのだが、今年は違う過ごし方をした。
イルミネーションを見に行った。
イルミネーションを見に行って、そのついでに遊園地の乗り物を楽しむはずだったのに気がついたら遊園地の端の人がいないエリアで座りながらマシュマロを焼いていた。
お互い人混みが大の苦手だから逃げてきたと言った方が正解なのかもしれない。
「メリークリスマスって言って?」
「なに急に笑メリークリスマス?」
「はい、いい子にはプレゼントをあげましょう」
マシュマロを焼き切って、オシャレなご飯屋さんに連れてきてくれたかと思えば彼は私にクリスマスプレゼントを用意してくれたらしい。
「え!?これいつ用意したの」
「昨日買いに行ったんだ。目閉じて開けてみて、何が入ってるでしょう」
「なんだろ、この手触りストール…?」
「へへ、正解笑もうひとつは?」
「もうひとつはなにこれ、羊羹?」
「独特なクリスマスプレゼントだな」
彼がよく付けていて、毎回会う度に「寒いでしょ」と言いながら私の首に巻いてくれるストールとお揃いのものと香水をプレゼントしてくれた。
「この香水私が好きな香りのだ…なんで分かったの、柑橘系が好きとしか言ってなかったよね」
柑橘系ともうひとつ、好きな香りがあった。
これは誰にも行ったことのない香り。好き嫌い別れるから私がひっそり家で愛用しているホワイトサボンの香水だった。
「これはね、僕が紅茶の香水つける前に着けてたのとおんなじ香り。君好きそうだなと思って選んだ」
「そうなんだ…もう香水もストールも借りれないね笑」
「巻いてあげることは出来るよ、紅茶の香りは僕の香りだって言ってくれるならホワイトサボンは君の香りにしよう。お互い好きな時に好きな方を借りることが出来るね。 」
「ありがとう、すごいこんな素敵なプレゼント本当に嬉しい。」
外をでて空を見上げると、宝石箱を開いたように星がたくさん輝いていた。
私もあの輝きのひとつになりたいと思う日の方が多い。
けれどそれはもう少しあとでもいいのかな、と思ってしまったクリスマスイブの夜だった。
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