第46話 ふゆやすみ
冬休み
年越しをしたくないと切実に思った
冬休みにはたくさん楽しみなことがあった
人を幸せにすることにいちばん幸せを感じていて、でもそれは叶わなくなってしまって
ずっと過去に囚われていた
冬休みを迎えたくなかった。
冬休み沢山考えていたことがあったけれど水の泡と化した現実を受け入れたくなかった
過去に引きづられたまま、周りはどんどん未来を見すえているのに真っ暗になってしまった自分を受け入れられなくて、真っ暗闇に堕ちた。
もう死のうと思った。
飛び降り?首吊り?入水?どの方法を取ろうか
クリスマスも終わり年末が近づいている。年なんて絶対に越したくない。来年もまた頑張らなきゃ行けないなんて嫌だ。
みんな自分勝手に生きてるんだから私もいいでしょ、これが私の人生だからと遺書も用意した。
スマホのパスワードを友人に伝え、死んだことを連絡して欲しい人も伝えた。
見終わらなかったドラマも全部見た。
棺に入れて欲しいものを書いた。洋服、本、私の好きな食べ物。
日中なのに真っ暗に閉ざした部屋の中で最後、電話をかけた。彼との電話も最期だと思うと自然と泣いていた
これで旅支度はできた。あとは逝く手段を用意するだけ
医学論文を読み漁った。研究の時よりも読んだ。
自殺未遂患者、自殺願望者がとった事例
ネットで調べても手順なんてでてこない。出てくるのは繋がりもしない電話番号だけ。だけれど論文にはちゃんと1から10までの手順が記載されていた。
あとはネットで準備するだけ、手軽な値段で簡単に用意出来るこの時代に感謝した。
それと、看護学生であることに。人体のこと知っていなければ難しい方法だから
お母さんに呼び出された。
「塞ぎ込んでてもしょうがないんだから出かけよう」
最期に思い出なんか作りたくなかった。
ドライブをした。あんたの好きな月が出てるよと言われて見上げると、綺麗な形の月が空高く昇っていた。
「あんたはさ、色々考えすぎなんだよ。考えてもしょうがないことばかり考えてるから生きるのが苦しくなる。死んでもいいけど天国でちゃぁんと私の事待ってるんだよ。待ってなかったら許さないからね。」
家に着いて車をおりた時、そう言われた。
今宵見上げた月が最期の月になるのだろうか。
母を天国でまつのは、きっと40年とそこらかかるのだろう。一人ぼっち何も無いところで待つのなら、もう少しだけ生きて待っていてもいいのかと思った。
ヘリウムは、まだカートに入ったまま頼めずにいる。
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