第43話 色とりどり
色とりどりの着物たち。
振袖専門店なんてところも沢山ある現代、私が選んだのは本当に何気なくふらっと入った着物屋さんだった。
老舗の着物屋さんで、そこで見た振袖に心奪われた。
「お着物、お好きなんですか?」
おばあちゃんくらいの店員さんににこやかな笑顔で話しかけられ、少し羽織ってみましょうよと言われて店の中に入って
「すみません、母に電話してもいいですか。どうしてもこの着物が来年着たいんです」
気がついたら、告げていた。私の頭の中ではいくつかの着物屋さんのカタログを見比べて母と決めるつもりだったのに、勝手にもうこの着物を決めていた。
祖母と母は赤の振袖がいいと言っていた。
けれど私は暖色が嫌いだ。
写真を撮ると青色だが実物は青色と緑色を混ぜ合わせたような色になる不思議な色を元としたものだった。
それに、四季折々の花々が散りばめられ、金であしらわれた豪華な振袖だった。
大柄と銀よりも金の方が良く似合う私にとってピッタリな振袖だと思った。
帯は白を基調とし、虹色の花模様が描かれている。
赤色もアクセントで入っていてこれしかないと思った。
なにより気に入っているのは、桜と紅葉があしらわれている事だ。
幼少期より花を見つけては花図鑑で花言葉を調べることが好きだったため、なにか花で意味を表す振袖にしたいと思っていた。
桜と紅葉だなんて、もうそんなのうってつけでは無いか。
ヘアアクセには青い紫陽花、青と白のダリア、白いソリダゴに加えて白と金のかすみ草を選んだ。
この子達にもちゃんと意味を持たせて選んだ。
だから調べて納得が行くものを選ぶまでにかなりの時間を要した。
母親に「あんたあれだけ成人式楽しみにしてたのになんでこんなに準備してないの」と言われた時、はっとした。
こんなに意味を持たせても誰も気づいてはくれないだろう。母親が気づかないのであれば、友人たちも気づくまい。
でもそれで良かった。
誰も気づかないところに誰も意味を持たせないところで持たせている。格別な成人式を迎えられる。
成人式が楽しみで仕方なかった。
ずっと着物を着ることに憧れていた。
人生はじめての振袖を身にまとって、青春を共に分かちあった仲間たちに逢いに行くのが楽しみだ。
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