第42話 20歳
「どうしてみんなにあんなこと言っちゃったの?あれじゃ、もっとみんなからからかわれちゃう」
「どうせ僕の言うことなんてみんな分かってくれないよ。ただ肌の色が違うってだけで菌が移って自分まで真っ黒になるとか言ってる奴らと一緒にいたくない」
近所に、同い年で誕生日まで一緒の子がいた。
その子は黒人と黄色人のハーフで、黒人よりの見た目をしていた。低学年の頃は良かったのに、社会で黒人差別の勉強をするようになった頃から彼に対するいじめが始まった。段々と彼は学校に来なくなった。
だから私はその子の家に毎日行って手紙を届けた。
今日はどんなことがあったのか、学校であったことを細かに話す私の話をよく聞いてくれていた。
「大きくなったら何になるの?」
「僕はお医者さんか頭のいい先生になる。そのために沢山勉強するんだ」
「すごいね…頭いいもんね、応援してる!」
「君は?」
「保育士か助産師さん!赤ちゃんのお世話するんだ!」
「そっか、頑張ろうね。卒業してからもよろしく」
「うん!卒業おめでとう」
小学校の卒業式にも彼は出席しなかった。
だからわたしが卒業証書を渡しに行った。
彼は小学校の子達の9割が進学する中学ではなく、市内の別の中学校へと進学した。
あれから8年、1度だけ近くのショッピングモールて遭遇してからは会うことは無かった。
時は移ろいあっという間に成人式が来た。成人年齢が引き下げられたから20歳の集いというらしい。長々しく喋る市長とお偉いさんのお話を聞き終わって外に出た時、後ろから声をかけられた。
「久しぶり!元気にしてた?」
そこに居たのはあの時私の後ろで泣いていた彼だった。
「え、え!?うそ大きくなったね!久しぶり!」
「覚えてる?僕ら誕生日一緒のさ、」
「覚えてるよ忘れるわけないじゃんか笑」
話を聞くと、医学部に進学して今は医学生をしているらしい。私も今は看護学生だと話をして今度ご飯に行く約束をした。
「お互い夢叶えるために頑張ってるんだね」
「本当に頑張ったね…医学生なんて、まさか身近な人からお医者さんが出るとは思わなかった笑一緒の職場で働くかもだね笑」
虐められていた彼は成人式に来ないと勝手に決めつけていた。けれど来て、みんなとわいわい話している姿をみて本当に安心した。
やっと肩の荷がおりた、そんな気がした。
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