第41話 傘
水色の傘をさしていた。
ひとりでさすには大きな傘だった。
重くて、大きくて、決して一人ではさせない傘だった。
ふたりでさしていたときは少し窮屈で、それでいて少しだけお互い肩を濡らして
それでも良かった。濡れてないよと笑いかけるのに幸せを感じていた。
大切にしていた。
傘を無くすことが得意な私だけれどこの傘だけは無くせなかった。持っていると何故か忘れていないかと気にしてしまうほどに手放したくなかった。
けれどいつの間にかひとりになっていた。
独りだと使えないのに、それでも使おうとした。
「一緒に傘に入ろう」
ずぶ濡れの私にそう声をかけてくれる人がいた
けれど入れなかった。
どうしても持ち手が竹で、水色のビニール傘じゃないとさしたくなかった。
それなら傘を選びに行こうと待っててくれる人がいた。
たまに傘に入れてもらった。
その人はさすのがへたくそで、不器用な人で、でも段々とこの人と一緒に新しい傘を選びに出かけても良いのかなと言う感情が芽生え始めた。
気がついたら水色の傘が手元から無くなっていた。
「きっとそういう事だよ」
一緒にいた友達に言われた言葉がストンと腑に落ちた。
だから、新しい傘を1人で選んだ。
今度の傘は持ち手はプラスチックでキラキラしていて、
水色と白のグラデーションが綺麗な傘。
「ねえ、一緒に傘に入る?」
私の方が背が高いし生きるのが下手くそだけれど
それでもいいのなら
傘を一緒にさしませんか。
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