第38話 ラーメン
何となく、ただ声が聞きたくなっただけだった。
いつもは絶対私から電話したいなんて言わないのに、言えないのに気がついたら電話をかけていた。
数コール鳴らして、ハッとして切った。仕事の納期が迫っているのに加えて、大学生の顔も持っているからこの時期忙しいと言っていたではないか。
それからまたひとりで天井を眺めていた。スマホのあかりがついてそちらに目を向けると、着信履歴が1件、表示されていた。
「ごめん、電話かけてくれたのに出れなくて」
「ううん、こっちこそ忙しいのにごめん、なんか急に声聞きたくなっちゃった」
「何かあった?」
「…ううん、何も笑声聞くと会いたくなるね、何でだろ今すごく会いたい」
人と一緒にいる時は1人になりたがりのくせに、一人でいるとどうしようもなく誰かと一緒に居ないと、会話をしていないと不安になることが稀にある。
今日はなんだかそんな日みたいだ。
「会いに行こうか?家までは遠くて無理だけど、中間地点までだったら行けるよ。今すごくラーメン食べたい気分なんだよね、行かない?」
時刻は深夜0時50分。私の家から彼の家まで片道50km、車で1時間半かかる。原付しか持ってない彼だが、私は車がある。それなら
「ううん、迎えいく、おうちまで。一緒にラーメン食べに行こう」
「迎えに来る!?大丈夫?むりしてない?」
「むりしてない!やだお家にいてお家に居ないと許さないからね笑」
「じゃあ待ってる。その代わり電話は繋げといて、1人にするのなんか心配だから」
その夜初めて家族の反対を押し切っ車のエンジンをかけた。いつもなら行きたいと思っても親の反対があれば行かないし、行くという決断もしないのに
割と衝動的に動く人間ではある。会いたいと思ったら車で2時間かかろうが、夜行バスや飛行機に乗ろうが、その出発が早朝であろうが行ってしまう
「会いたいと思った時に会うのが1番だよね」
「そっか…そうだよね、会いたいと思った時に会えないのはしんどい、か」
「そうだよ。来てくれてありがとう。」
人生は、人間関係は皮肉で成り立ってるのだと痛感しながら夜道車を走らせた。
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