第28話 さよならは言わないで
四季の色づきを全部消して、霜柱が花を咲かせる
冷えきった空気と、空と、霜柱と。
ついに私の世界にも冬が来たみたいだ。
「決まった?僕をどうするか。そろそろ冬眠しないと」
うさぎが黒い瞳をじっとこちらに向けながら問いかける。かくいう私もじっとうさぎの事を見つめて、決めかねていた。
「…やっぱり、決めてよ。私決められない。さようならと告げることも出来ないし、でもまだ迎え入れることも出来ない気がするの」
「それは出来ないよ笑
君自身に決めてもらわないと意味が無いからね。それとも決めて僕がいなくなることが怖いのかい?」
「…そんなこと、ないよ」
「君は、誰かがいなくなることにとても脅えているね。」
「…そんな事ないよ笑独りでも生きていけるもん」
「強がらなくていいのに。」
「違う、だって、永遠なんてものは無いのは分かってるでしょう!いつだってみんな居なくなってしまう、さよならの準備ができる前にみんな、居なくなってしまうから」
「さよならを告げられるのが怖いんだね」
「…怖いよ笑あなたも言われたら分かるよ、」
「ゆっくり決めればいいさ。毎度聞いてしまってごめんね。」
「ううん、こちらこそ全然答えが出なくてごめん。もう少しで出ると思うんだ、もう蕾は出てるから」
うさぎは、うさぎはね、いい子なの
でもここで感情に花開かせたら本当に私の信条に反するし、何よりこんなのでいいなんて絶対に思えない
もう少し発露するのが後だったらいいのに
そんなことを思ったことも何度もあった
でも冬は1度きりしか訪れなくて
そんな冬が嫌いだったのにどこか心待ちにしてる自分もいて
もう何が何だか分からなくて
ねえどうするべきなのかな
私が決めないとだね
早く花が開けばいいのに。
本当に神様は意地悪だ
もう少し後に出逢わせてくれたならこんなに迷わずにいれたのに、
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