第27話 終わらせないで

「この物語を終わらせないで」

本能が叫んだ気がした


11月と12月は毎年体調を崩してしまう

1年の中でも1番体調を崩しやすい時期

10月が大抵忙しくて、ズルズル引き込まれるように体調が悪くなってダメになる

「しんどい」と気づくのはいつでも体に不調が出てからで今回もそうだった。

1度自覚すると大きな波が何度も何度も襲ってくる

逃げるために自分で物語の結末を執筆しようと何度も筆をとった

けどその度終わらせる勇気も出なくて


朝ぼんやりとしたままの頭で学校までの道をあるく

角からスピードを出した車に轢かれそうになった

「だめ!まだこの物語を終わらせないで」

そう心が叫んでいた。

走ってもないのに心拍数も呼吸もどんどん早くなって思わずその場に蹲った

本能がまだ物語の続きを書きたいと言っているから

書くしかない


そんな生活を続けて約1ヶ月が経った。

もうこの部屋から出なくていい、ずっとこの部屋で物語を描き続ければいいと思っていた

だからここで四季と花に纏わる物語を綴り続ける




「ねえ、答えは出た?」

真っ黒な瞳をこちらに向けながらうさぎは私に問いかける

「ごめん、まだ出ない。でも君と一緒に過ごしてるこの時間はすごく幸せで楽しいなら終わらせたくない。ただ、ここを出て君と一緒に花を咲かせるのが正しい選択なのか分からないの、だってついこの前枯らしてしまったばかりなのに」

「未来が怖いのは僕もだよ。永遠なんてないし君の心がどううつり変わって行くのか分からないから怖い。」

「…一緒にしたいことたくさんあるってお話したね。」

「そうだね。学校帰り待ち合わせをしてラーメンを食べに行ったり、ドライブに行ったり、クリスマスはイルミネーション見に行ったりするのもいいな。」

「お互い音楽の趣味が一緒だからLIVEにも行けるね」

「僕のこと連れて行ってよ笑」

「…月曜日、楽しみだね。早く会いたい」


まだ、決めるべきでは無い。

私の傍に花が咲いた訳では無いから

こうしなければならない、と決めて無理やり咲かせた花はすぐ枯れて消えてしまうけれど、自然と感情の赴くまま咲く花は綺麗に長い時間花が咲き続ける

うさぎに渡す花も芽が出始めた

どんな花になるのか、少し楽しみな気がした

12月5日、全ての答えが出るような、そんな気がした。

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