第26話 宝物
「ありがとうございました〜」
ペットショップで新しい家族を引き取った。
保育園の時からずっとずっと一緒に居たかった子。
小さくて温かくて、静かで、ストレスに弱い動物なんだって
だから温度調節も養育環境も慎重にお世話しなければいけないの。
「ねえ、君は何を考えながら生きているの?」
意外とうさぎって犬や猫みたいに人懐っこくない。
一定の距離感がある動物、懐いたと思っても全然そんなこと無かったりする。逆に、懐かれてないと思ってもうさぎ側からしたらめちゃくちゃ懐いてたりする。なんて子なんだ。そんなところが好きなんだけどね
「ここにきて楽しい?生きててよかったって思う?」
うさぎは何も答えない。
「ひとりに、しないでね。私もあなたのこと1人にしないから」
める、と名付けたうさぎは大きな黒目でこちらをじっとみながら干し草を食べていた。
「君はどうなんだい、楽しい?生きてて良かったって思う?」
「…分からない」
「君はどうしたいの、僕と仲良くしたいの?」
「…分からない。君が仲良くしたいと思ってくれるのなら」
「それは僕がどうするかであって君はどうしたいのかでは無いね。君は君の意志を持たなきゃ、そうして行動しないと僕も居なくなるよ。秋風のように」
「今は私がどうしたいのか自分でも分からない、ごめん」
そんな夢を見た。
「え、この子誰?」
目が覚めると、真っ白な部屋に一輪の花が咲いていた。
ピンクと白が混ざりあったスイートピー
コリウスの花は跡形もなく無くなっていた。
うさぎの姿を探したけれど、いなかった。
そりゃそうか、ペットショップに行ってお迎えしたのも夢の話であって、現実で起こった話じゃないから。
まだ私に誰かを幸せにしてあげられるほどの余裕も力もないから、その時がきたらでいいのかなとおもうんだ
外でうさぎは干し草を食べながら大きな黒目をじっとこちらに向けている
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