第16話「泣かないで」

「ねえ、泣いてるの?」

「んーん、泣いてないよ笑」

「嘘、強がっても意味ないから。泣きたい時はないてもいいんじゃない?」

「だから泣いてないって」

「大丈夫だよ、誰も見てないよ」

誰かの前で泣くのが嫌だった

初めて人前で泣いた中3の冬

私のせいでひいおばあちゃんが亡くなった

それから半年と、少し。

ずっと泣けなかったのに、泣く資格は私には無いから

気づいたら泣いていた

冬が始まって寒さが厳しく身を包み込む日の事だった



「雪ちゃんはまだ泣けるから大丈夫だよ。綺麗な涙だね」

「桃ちゃんみたいに泣かないで強くいられる人になりたい」

そう言うと彼は少し寂しそうな声色で、

「俺は感情とかないから。雪ちゃんは人よりも感情の色沢山持ってるんだから俺みたいに無くさないでね」

と言って冬の寒さの中に消えた。

人はキャパオーバーすると感情の色が一気に白黒になるのをその時初めて知った。

ひとりぼっちで人を信じられなくなっていた私の唯一の信じられるお友達だった。



「泣かないで」

そういわれたのは初めてだった

そんなことを言った本人も隣で必死に泣くの我慢していて思わず涙が引っ込んだ

いつも別れの時は彼の方が泣いてたのに最後の最後は私の方が泣いてた気がする、そんなこともないんだろうな

沢山泣かせてしまった

暑い日が続き雪も降らないところに住んでいる彼は、私より一足先に春が訪れて綺麗な花を咲かせてる



ほんの少しずつ白黒の世界が再び色づいていく

春の訪れを予感しているのか、冬の訪れを予感しているのか、真っ白の部屋に閉じこもった私には分からないけれど、わかる日もそう遠くない、そんな気がした




雨は通り過ぎたみたい

今夜も綺麗なお月様がきっと顔を出すんだろうな

わたしのところにも月の光が届き始めてる

そろそろカーテンを開けようかな

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