第14話「距離」
「1年後、遠距離になるかもしれない」
大好きな人にそう告げられた。
元々冷えきってた部屋の空気の温度が更に下がった気がした。
「学校さ、明日4限からなんだよね〜」
「え!ほんと!私も午後からなの」
「モーニングいく?」
「コメダ行きたい!」
住んでるところはちょっと遠いけど、お互い通ってる大学が近くてよく遊んでいた。
遊んでいる間に段々と距離が縮まって何時しかお互いがお互いのことを好きになっていて
音楽の趣味も会うしなにより考え方とか価値観が一致しているから一緒にいて楽しいし幸せだった。
そんな彼から告白されてもうすぐ1ヶ月、順風満帆な生活を送っていた矢先に彼から告げられた一言が、ずっと胸の中を駆け巡っていた。
「遠距離って、そっか来年就活だもんね、」
「そう、まだ決まったわけじゃないんだけど今就職したい会社がこの地方じゃなくて、隣の地方で」
「それならすぐ会いにいけるね笑自分のやりたいことを追いかけるべきだよ」
「まだ1ヶ月しか経ってないのにこんな話してごめん、でも就活進めてるとどうしても不安になっちゃって」
「そうだよね、不安になるよね。でも大丈夫だよ、会いたくなったら会おう。会いに行くよ、おにぎり作って持ってくね笑」
大丈夫、と言っておきながら本当は不安でいっぱいだった。遠距離になったら思うように会えない、会社でかわいい女の子がいたら?その子のところに行ってしまうんじゃないか、周りに遠距離しかした事ない子がいるけどあの子は大体半年と少しで「他に好きな子ができちゃったみたいで振られちゃった笑」と私に話してくる
私も、同じ道をたどるんじゃないのかと不安になった
心の距離と物理的な距離はイコールでは無いという人がいる
きっとその人たちは遠距離恋愛を体験したことないのだろう
実際には≠であるのに
「…大丈夫なのかな」
彼に問いかけるけれど一足先に夢の世界へと旅立ってしまったから返事が返ってくる訳もなくて
夜が濃くなるに連れて寒くなっていく部屋の中必死に暖を取るように擦り寄った。
付き合ってからまだ1ヶ月、すぐ別れてしまうんじゃないかと不安がどんどん大きくなっていく
蓋が出来るように今は眠りにつこう
永遠なんてないのなら、今を楽しむべきだよね
いつか来る終わりに怯えて日々を過ごすなんて勿体ない
今日も穏やかな表情をうかべた月が、暗闇を照らすように目を覚まし始めた。
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