第13話 セーター

「ねえ!お揃いにしようよ〜セーター」

「え〜!いいねいいね!」

放課後、夕日が差し込む教室。

珍しく保健室ではなく、1番仲の良かった彼女たちがいる教室に私はいた。コロナ禍で、オンラインを通じて仲良くなった3人組、同じ学校なのに不思議な出会い方をした。私と、メガネが良く似合う彼女と、いつもニコニコしている彼女。


10月の肌寒くなってきた季節、ワイシャツの白い輝きは身を潜め校則の範囲内で個性を表すセーターが主流になってきた季節。

メガネが良く似合う彼女が私たちにお揃いのセーターを着ようと提案してくれた。


お揃いって、女の子たち特に大好きな言葉だよね。

大事な友達と、好きな人と、家族と。

お揃いのものを持っているとそれだけで幸せになれるハッピーアイテムだもんね。

でも私は嫌だった。

この子達といまは1番仲がいいし、きっとそれはお互いこれから別々の道を歩んでも続くだろう

でももし続かなかったら?

家のクローゼットにかけられたセーターを見て毎回思い出して辛くなるのが怖い

今までなるべくお揃いのものは作らないようにしてきた。

私から絶対お揃いにしようなんて言わなかった


「この色がいいんじゃない〜?」

「え〜確かに、この色私たちっぽいね笑紺かベージュどっちがいいんだろう」

「正スカは紺だとぱっとしないし、ベージュの方が正スカにも替スカにも合うんじゃない?」

「たしかに!これにしよう!」

私たちはベージュのセーターを選んだ。


セーターは生地の伸縮性がなくて、私はブカブカなのが好きだったからあまり着なかった。

お揃いのセーターを買ってから2ヶ月後、人生で初めて人との縁を切った。3年間ずっと仲良かったメガネちゃんに別れを告げた。

セーターは結局、両手で数えられるくらいしか、着なかった。


季節も移ろって、春の芽吹きが見え始めた頃

ギリギリの状態で通った高校を卒業した。

私と、ニコニコちゃんは卒業式に参加したけれど、メガネがよく似合ってた彼女は参加しなかった。

私はベージュのカーディガンを羽織って、もう1人の彼女はお揃いのセーターを着て式に臨んだ。


それから2年、いつもニコニコしている彼女の計らいで、私とメガネが良く似合う彼女は仲直りをすることが出来た。

人との縁は切れてももう一度繋がるものなんだなと、びっくりした

お揃いのセーターはもうこの世にないけれど。

前よりもすこしだけ、お揃いのものが欲しいと思うようになった私は子供になったのだろうか、

それとも大人になったのだろうか。


そんな懐かしい夢を、みた。

この真っ白い部屋から卒業出来る日も、そう遠くはないよと笑いかけるようにスイートピーの花は今日も綺麗に咲いている。

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