第9話 子猫
野良猫って自分の居心地のいい場所を見つけて、違うと思ったら旅立ってまた見つけてと、生きていく生き物なのだろう。
おばあちゃんの家には昔、海月と名ずけた子猫がいたの。
名前の通りゆらゆら漂ってる猫だった。
おばあちゃん家に来る時は必ず庭のどこかの茂みか木の上でお昼寝をしていて、最初は逃げられてたけど慣れたのか逃げなくなって
なのに突然いなくなっちゃったの。
ご飯貰えるところ見つけたのかな。
幸せにしてもらえるところを見つけたんだろうな。
「どうせここにいるんだし待ちたきゃ待てばいいよ。次会う時のためにチュールだって買ったんだしね。海月も戻って来たかったら戻ってくるよ」
落ち込む私におばあちゃんはそう言って、私の大好きなツナマヨおにぎりを手渡した。
道行く人を眺めながら海月の帰りをまつ。
たまにほかの野良猫が現れて甘えてくれる度に、この子は私のそばにいてくれる、海月とは違うと手を伸ばしかけて、どこか海月の面影を探して海月じゃ無いことに気がついて伸ばした手を引っ込める日々。
海月さん今何考えてる?
新しい飼い主さんが見つかったのかな
幸せにしていますか
まだ子猫のあなたはどんどん成長して、大人になっていくんだね。
それが嬉しいようで悲しいようで、考える度に切なくなるの
いつか私にも新しい子を見つけることが出来たらこの感情って無くなるのかな
ずっと待ち続けているばかりの私背中を見ながらおばあちゃんはそっと眺めながら、「迷子なのは海月じゃなくてあんたの方なんだね」と、静かに呟いた。
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