第3話 「秋風」
一世一代の恋を2回したことがある。
1回目は中学三年生の時、親戚の子を好きになってしまった。
幼いころよく遊んでいた子とひいおばあちゃんのお葬式で再会した私達は毎日連絡を取るようになって、新盆で顔を合わせた時お互い恋心を自覚した。
それから付き合ったはいいものの、親戚同士だから薄い血の繋がりはあるし家族にバレるのは以ての外で彼氏が出来たなんていえなかった。少し距離もあった事に加え中学生、ましてや受験生だったこともあり会うことも出来なくて、隣の県だったけれど実質遠距離恋愛状態だった。新盆以来顔を合わせて居ない状態で付き合うだなんて今考えればすごい話だ。
大学生になったら私の住んでる県に来ると思うからその時は親を説得して一緒に暮らそう、なんて話していた。だからそれまでは会うの我慢しようね、と。
秋も終わり、秋風が周りから去っていって冬が訪れた頃「クラスの女子から遊びに誘われた、2人きりじゃなくて男子女子合わせて4人なんだけど行ってきていい?」と電話で言われた。
不安性でかまってちゃんの自覚はある。それに加えて束縛なんて絶対にしたくなかった私は、「いいよ、楽しんできてねお話待ってる!」と返事をした。男女4人で遊ぶことはよくあることだと思うし大丈夫だ、と自分に言い聞かせていた。
彼はその日の夜電話をかけてきて、「楽しかった、途中誘ってきた女の子と2人きりになっちゃったんだけど偶然だから。でもごめん。」と話をしてきた。
楽しかったならそれでいい、そう本気で思ったのと同時に、彼と同じ学校だったら私もその女の子みたいに毎日顔を合わせていられたのかと少し嫉妬した。
そんな時に事件が起きた。
お互いの両親に付き合ってることがバレてしまった。私たちは別れを決意した。
それからも話すのは辞めないでいようということになり、連絡は取り続けていた。
別れてから1週間たっただろうか、珍しく雪が降って辺りが静寂に包まれた日、電話しようとメッセージが飛んできた。クリスマスも目前、何事かと思ったら彼から「好きな子ができた。」と言われた。
ショックだった。本当にショックだった。
人生でいちばん悲しい出来事だった。
こんなに人って早く好きな人ができるものなのだろうか
私はまだ彼のことが好きなのに、そこからなぜ好きな人の恋バナをきいてしかもアドバイスなんてしちゃってるんだ?と自問自答する生活が始まった。
私はチョコパイをひとつ食べ切ることが出来ない。甘いのが苦手だからだ。彼は無類の甘党だった。
「半分こしようね」という約束を彼はその子と叶えたらしい。
その後彼女とはいい感じになったそうだが、お互い告白する勇気がなく、バレンタインの日にはチョコも交換したが付き合わなかったそうだ。
私はと言うと、あまりその時のことを覚えていない。
荒れていたのは覚えている。
彼のことが忘れたくても忘れられなかった私は、恋という感情が分からなくて人の恋バナをきいて相談に乗ることで寂しさを紛らわしていた。
そんな生活をしていたから、色々なことがあってもともと苦手だった男性を受け付けられない人間になってしまった。
もう自分は男性には恋しないのだろう、そんなことを思っていた大学1年の冬にまた恋に落ちた。
これが2回目の恋。
今度は物理的に遠距離恋愛だった。
付き合ってるときはとっても幸せだった、毎日連絡をとって、こんなに人のことを好きになったことは無いと思える恋をした。中3の時の恋を上回ることが出来るなんて思いもしなかった。
このままずっと一緒にいたいと本気で思ったし本気で願っていた。だからこそ中3の時のような失敗は絶対にしないと、決めていた。
ある日、彼から「高校の同級生と遊んでくる」と言われた。楽しそうに話す彼に、私も近距離だったらこんな感じで遊べていたのかなとおもっだけれど、次会える日のことを楽しみにしながら過ごしていた。
その時感じた前と同じ展開になるのではないかという不安は心の外に出さないように鍵を閉めた。
しかし、神様は鍵を開けてしまった。不安は現実にと変わってしまった。
彼は結局その女の子のところへと旅立って言った。
冷たい秋風が1人になった私の頬をそっと撫でてくれる。
秋は嫌いだ。いつだって私の大好きな人を連れ去ってしまう。
クリスマスなんて来なければいいのに。
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