第8話
姉貴へ調査結果をいつ報告するかを翔は悩んでいた。
司法試験の二次試験が迫っていたので、それが終わってから報告することに決めた。そうでないとさすがに心が持たないと思った。
司法試験が終わった。二人とも手ごたえがあった。
後は結果次第だ・・・
翔は姉貴を実家に呼んだ。母親と岡弁護士、そして達也の5人で席に着いた。
「姉貴、ご依頼通り和樹のこと調べたよ。回りくどいことは省くよ。あいつはバイだ。週に2日男を抱いている。」
「えっ? 」
「会社のあるビルの別の階に和樹の秘密部屋があった。そこは和樹が個人で借りているところだ。そこに男が通っている。あいつ両刀なんだよ。」
「何てこと・・・」
母はあきれて声が出なかった。安祐美は震えている。
「姉貴我慢できるか? もう別れたら・・・その方が良いよ。」
「・・・」
安祐美はあまりのことに何も言えなかった。
「姉貴・・・大丈夫か?」
「・・・私は無理・・・イャ・・・」
安祐美は震えた声で言った。
「離婚手続き始めるよ。いいな。」
翔は優しい声で言った。
「・・・うん。」
安祐美はそれだけ言って自分の部屋に行ってしまった。
「安祐美さん大丈夫かな・・・」
達也が心配そうに言った。
すかさず、翔は二人の母親に言った。
「こんな時に何ですが、この達也は姉貴のことをもう10年以上想い続けています。先日確認したのですが、今も気持ちは変わっていないとのことです。これから姉貴は辛い日々を過ごすと思う。そこで、この達也に救ってほしいと思っています。協力して欲しい。」
翔は二人の母親に頭を下げた。母親たちは顔を見合した。
達也はいきなり翔がこんなことを言い出すから真っ赤になっている。
「びっくりした。そうだったのね。達也君。」
「はい。すみません。」
「謝ることは無いじゃない。私は賛成よ。達也君のことなら翔の兄弟のように思っているし。岡っちも良いわよね。」
「フッ。久しぶりに岡っちって呼ばれた。勿論よ。びっくりしたけどね。頑張んなさい達也。」
「ありがとうございます。頑張ります。」
達也は照れながらも頭を下げた。
直ぐに離婚届を和樹に送り付けた。連絡先は岡弁護士事務所の岡所長だった。
和樹からは直ぐに岡に連絡が入った。秘密部屋の写真や相手の写真を見せた。二人が写っているものはなかったけどそれに対して和樹は特に弁解をしなかった。但し、離婚はしないと言い張った。
離婚調停が始まった。
和樹の結婚の目的はやはり安祐美の父が経営する不動産会社だと岡にはすぐにわかった。この不動産会社は普通の不動産会社とちょっと違って企業相手にビルを貸して管理をするような仕事をしていた。その会社の内情もわかるし、和也はなんとしてもこの会社が欲しかったのだ。
安祐美は慰謝料はいらないからすぐに別れたいと岡に話した。でも岡はそれでは許せなかったので、しっかりと要求をしていた。
和樹は食い下がっていた。なにとしてもこの会社が欲しかったので、株式を買って乗っ取ろうともした。でもそれは予想できることだったので音羽家と弁護士の岡が手を打って食い止めた。
もうすぐ司法試験の結果が出る・・・そんな時期になっていた。
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