第6話

翔と達也はバーに入った。思ったよりも落ち着いた雰囲気の店だった。

カウンターに通された。

バーテンが声をかけて来た。

「いらっしゃい初めてね。何になさる?」

結構渋い男だけど口調は女だった。ギャップが面白かった。

「お前何にする?」

翔は達也に聞いた。

「そうね。まずはビール。」

達也は遊んでいる。翔はおかしくてしょうがなかった。

ビールを二つ頼んだ。おつまみのナッツと、きれいに磨かれて冷やされたグラスに注がれた生ビールがカウンターに置かれた。


「お客さん達はだれかの紹介?」

バーテンがまた声をかけて来た。

翔は一か八かで、和樹の名前を出してみることにした。

「和樹知ってる? 岸本 和樹。」

「知ってるわよ。いい男よね。この店に来る男で一番かも・・・あらごめんなさい。こちらの方もいい男よ。」

バーテンは達也にウインクをした。

翔は勢いで聞いてみた。

「ねえ、和樹が気に入っている子ってどの子?」

「そんなこと教えられないわよ。」

翔は店の中を見渡した。例の男がいた。

「あの、白シャツの子じゃない? 和樹の好みだと思うけど。」

鎌をかけた。

「ふっ。好み知ってるのね。お客さんも和樹が好きなの?」

「まあ、そんなところかな。でも俺はあいつの好みではないからな。」

「ちょっと・・・」

達也が翔のシャツの袖を引っ張ってすねている。芝居がうまい・・・

バーテンはその様子を見て達也から離れていった。


翔と達也はビールを飲みほしてバーを後にした。

「達也・・・お前に芝居の才能があったなんて知らなかったよ。」

「俺才能あるかもな。楽しかったよ。でも・・・許せんな。バイだと知ってて付き合うならよしとする人もいるだろうけど、後からわかったらショックだよな。お前の姉ちゃん大丈夫じゃないだろ。俺はやっぱり許せん。」


これではっきりした。あの和樹は男も女も抱くバイだった。あの食事会の時に感じた違和感はこれだった。

さてと、これからどうする姉貴・・・



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