第4話

安祐美は病院から実家に帰った。

もう和樹の所には帰らない。彼のことは好き、好きだからこそあの待ってばかりで不安ばかりの苦しい生活はもうイャ・・・。


和樹は毎日安祐美に連絡を入れた。

「もう君を泣かすようなことはしないから帰ってきてくれ。」

いくら連絡を入れても安祐美からの返事はなかった。


母は興信所に再度調査を依頼した。今度の調査結果では女の影は無かった。

母は岡に相談した。

「岡さん、安祐美はもう和樹さんとは別れたいと言っているの。でも和樹さんはやり直したいと言っている。再度調べたけど和樹さんに女の影も無いんです。どうしたらいいかしら。」

「もう安祐美さんは絶対に戻る気はないのかしら。流産のことがあるから今は気持ちがゆれているだけということは無いの? 一度当人同士を合わせてみたらどうかしら。 」

「そうね。あまり急ぐのも良くないわね。もう少ししたら私から和樹さんに話してみるわ。」

母は安祐美の気持ちもわかるが、本心は別れて欲しくなかった。

「和樹さん、一度安祐美とゆっくり話してみてください。日時はこちらからご連絡します。立ち合いにはこの間ご紹介した岡弁護士にお願いしようと思います。いかがでしょうか。」

「わかりました。ご連絡をお待ちしております。」

和樹にとって離婚はあり得なかった。そうでないと計画が狂ってしまう・・・


話し合い当日・・・

「安祐美、悪かったよ。いくらでも謝るから機嫌直してくれ。戻ってきてくれ。」

「私、和樹さんのこと・・・信用できないの。結婚する前と後ではあまりにも態度が違う。ただ私と結婚をしたかっただけなの? 」

「そんなことないよ。このあいだまでは本当に忙しかったんだ。信じてくれよ。海外とのやり取りはどうしても夜になってしまうんだ。だからつい会社に泊まってしまった。」

話合いは平行線だった。

岡が言った。

「安祐美さん、和樹さんはこう言っています。一度戻る気はない? もう少し一緒に暮らしてみたらどうかしら。出来ない?」

「少し考えます。」

その日の話合いはこれで終わった。


安祐美は和樹の顔を見て心が揺らいでいた。(やっぱり彼のことは好き・・・でも好きな人に裏切られるのは辛い・・・) なかなか結論が出なかった。

和樹は毎日安祐美に連絡を入れた。何としても安祐美に戻ってきてもらわないといけない。さすがの和樹も少し焦っていた。


安祐美の誕生日に立派なバラの花束が届いた。母の誕生日にも同じように花束が届いた。それ以外にも出張先から名産が届いたり、何かにつけてプレゼントを送って来た。その和樹のこまやかな気遣いにだんだんと絆されていった。

「和樹さんはまだあなたのことが好きなことはわかるじゃない。一度大人になって戻りなさい。」

母は安祐美に言った。

「そうね。なんだか私が悪いみたいに思うよね。これじゃあ・・・」

不本意ではあったが安祐美は一度和樹の所に戻ることを決めた。

和樹に連絡すると直ぐに迎えに来た。

「さあ、帰ろう。」

いつもの優しい目で和樹は安祐美に手を差し伸べた。

この顔を見てしまうと安祐美は悪い気分ではなかった。


和樹は優しかった。

付き合っている時と同じくらいに安祐美を大切に扱ってくれた。安祐美も徐々に打ち解けた。しかし、相変わらず週に2日位は家に戻らなかった。

それでも前とは違うので安祐美は少し安心して生活を送っていた。

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