第3話
和樹は久しぶりに悪友たちと会食をした。
「お前、あっと言う間に結婚したな。もっとゆっくり遊んでからかと思っていたよ。」
「どうして。面倒だろ女はいろいろと。早く事を進めれば喜んでいるから楽だ。あとは子供を作れば育児に専念してくれる。」
「キャサリンはどうした? 」
「バレてな、別れたさ。仕方ない。情熱的な女だったから残念だけどな。」
「じぁあ今は潔白か?」
「まあな。」
「お前がこんなに奥さんにご注進とは知らなかったよ。」
「イヤミ言うな。わかっているくせに。」
「会社の方はいつ仕掛けるんだ?」
「まだだよ。まだ早い。」
「そっちは慎重なんだな。」
「価値が違うからな。」
「食えない男だな。お前は・・・」
「フフッ、俺は狙ったものは逃さないさ。それだけだ。」
「ハイハイ。まあ十分気を付けてやるんだな。」
「まあ見てろよ。」
結婚して1年が経った。和樹と安祐美は妊活を始めていた。和樹からの提案だったので安祐美はうれしかった。でも、妊娠可能の周期の時しか抱いてくれなかった。
数ヶ月後、安祐美は妊娠したことがわかった。和樹も喜んでくれた。
安祐美はつわりがひどかった。和樹はまた家に帰らなくなった。
ある日、和樹が家に夜遅く帰ってきた。帰ると浴室に直行した。浴室を温める為かシャワーを出す音がした。
浴室のドアを安祐美は開けた。
「安祐美、まだ起きていたのか。」
「遅かったのね。浴室に直行なの?」
安祐美は少しイヤミっぽく言った。
「汗かいたからな。」
安祐美はワイシャツの前をはだけた和樹の背中に抱き着いた。
うちのと違うボディソープの香りがした。
「イャ・・・どこで、どこで・・・」
安祐美は和樹の足元に泣き崩れた。
「おい・・・」
「ボディソープの香りをさせて帰って来るなんて・・・」
「会社でシャワー浴びたんだよ。」
「うそ! だったらもうシャワー浴びる必要ないじゃない。」
「イャぁ~」
安祐美は駈け出した。
何も持たずに家を飛び出した。
和樹もさすがにまずいと思ってシャワーを止め、脱ぎかけのワイシャツのボタンを数個留めて安祐美を追った。
和樹はあたりを探した。家から外に出て数100メートル行った道端で安祐美がうずくまっているのを見付けた。
「安祐美、大丈夫か? 安祐美・・・」
安祐美は苦しんでいた。和樹は救急車を呼び病院に行った。
安祐美は流産した。
「出ていって!」
病室に安祐美の声が響いた。
和樹は仕方なく病室を出た。そこに安祐美のお母さんが来た。
「和樹さん、どういうことですか?」
「すみません。安祐美と喧嘩をして、安祐美が家を飛び出しそこで倒れてしまいました。」
「和樹さん・・・」
「申し訳ない。流産です。」
「何てこと・・・安祐美・・・」
母は病室に入っていった。
安祐美の鳴き声が響いた。
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