第17話 競争

「上で話が付いた、手打ちだ」


六代目花島組系旭龍会幹部梶浦組組長梶浦仁徳さん、略して梶浦さんは言った。


「でも・・」

「お前にもおいしい部分は渡してやる」

「俺のメンツが立ちません」

「俺の言うことが聞けないのか?」

「そうではないです、スジとメンツの問題です」

「スジもメンツも通ってる、お前がスジとメンツを壊してるんだ」

「このガキをシメないと、ずっとナメた商売をしますよ」

「言ったよ?いま俺言ったよな?上で話がついているんだよ」

「・・・・」

「いま、お前の前に拳銃があるだろ?それを撃ったら戦争になるぞ」

「わかりました」

「そいつらとはかかわるな」


通話が切れた。


「何をした?」と教授が聞く。

「僕はなにも知りません」

「じゃ、お前か」とイルマの手に拳銃を向ける。

「とりあえず、座っていいですか?」

とイルマが立ち上がり、椅子に腰かけた。


***


「極道も競争だって僕はしってますよ、だって日本にもいくつも暴力団があって、戦争したりしてるんですよね?」


「知ったような口きくんじゃねえよ」


「知ったんですよ、コイツほどじゃないけど僕も勉強が嫌いじゃない、僕の知ってる投資家たちから話を聞いて、暴力団にケツもってもらっている飲食店の社長を紹介してもらって、その人から4課の刑事を紹介してもらって、刑事さんからナマコの密漁とシャブの密輸にかかわっている極道がいないか聞いて、また別の刑事さんを紹介してもらって、やっとあなたとあなたの上の組を知ることができたんです、ね、六代目花島組系旭龍会幹部梶浦組元組員現後藤組組長の後藤佐登史さん」


教授の持つ拳銃が震えている。これ以上ないぐらい怒っているのだ。


やめろ。


やめろ、イルマ。


殺人は計画的じゃないって言っていたじゃないか。


「僕はこいつのやる商売が闇ルートでナマコを密漁するよりも、はるかに計画的で長期的な利益になるって話して、同じ内容を関西と九州と北海道のやくざにも話しているって教えて『じゃあ、俺たちのウマイ話ってなんだよ』って聞かれたから海賊船の話を伝えたんです、ちなみにあなたの今握っている拳銃は中国とか北朝鮮で流通しているようなコピー品じゃないですよ、ロシアで手に入れてウラジオストクからやってきた本物のコルトです」


「あっちからは海流があるから不可能なはずだ」


「できるんですよ、ドローンです、あ、プロペラが4つあるやつじゃないですよ、有翼ドローンって言ってちゃんとした飛行機の形をしています、積載量もあるし、飛行可能距離も100㎞を超えてます、それを改造して最北端の海に着水させたんです、それもこれもひろぽんのおかげですけどね」


「あいつ、いまロシアにいるのか」


それについては僕が説明する。

「あの人もすごいですよね、あっという間にウラジオストクのマフィアと友達になって、その拳銃を送ってくれました」


「それがあいつの才能だな」と教授が言う。


イルマがさらに説明する。

「もちろん、コイツ(僕のこと)にもロシア語を覚えさせて、あちらからのナマコ輸入ルートを確立させます、同時に拳銃も、西側で作られたホンモノの軍棚卸品をブンブン飛ばして、日本に入れます、つまり、僕らと手を組んだ組が、圧倒的な数の拳銃を手に入れることができるようになります」


「競争か」


「競争です、もちろん、ナマコの会社とは切り離して、汚い部分はナマコとは触れさせない」


「どんな会社にも汚い部分はあるよ」


「知ってます、あくまでも見えるところは真っ白にしたい」


「これを撃ったら、俺は負けなんだな」


「そうです」


教授は拳銃を置いて、こちらに滑らせた。


それを返して「差し上げます」と僕は言った。


「いらねえよ、こんなのは嫌いなんだ」

「教授のそうゆうところ、僕は好きですよ」


拳銃を手に取り、懐に入れた。僕もこうゆうのは嫌いだ。



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