第10話 起業発表会
大学の偉い人に呼び出されて「今回は起訴されなかったのであなたを除名することはないが、今度同じようなことがあった場合は除名処分とする」といわれる。まあつまり、これで学生生活が再開したのだろう。
僕は自分のアパートから大学にかよい、必要な知識を集めていた。法律、経済、為替、需要と供給、文化、民族、価値、経営、歴史、覚えるべきことは無限にある。それを本だけでなく、教授に教わるのは有意義だった。除名処分にならないでよかったと思う。
その日は国際競争を論じるゼミの日で、驚くべきことにイルマがそこにいた。教授とほかのゼミ生も驚いていた。これまでまったく参加していないにもかかわらず、イルマは不買デモを例にグローバリゼーションのリスクを論じ、自らの考えた指標を計算式に加えて発表してその場を黙らせた。
ゼミの後「今日のもう」とイルマに声をかけられた。「のもう」と僕は答えた。「あんずも来るぞ」と言われたが、正直今日はあまりあんずを見たくない。だが、あんずに会えるのはうれしい。抗えない魅力がここにあった。
その夜、新宿の地下にある安居酒屋のテーブルに座った。そこにレイ君がすでに座っていて「タオたんもくるってよ」とすでに中ジョッキを傾けていた。僕はレイ君の横に座り、あれから起こった出来事を話していた。
「・・・これから、どうするんだ?チング」
とレイ君が言い、それにこたえる前にイルマとあんずがやってきた。場は真面目な話をする雰囲気から離れ、バカな話とエロい話でにぎわった。あんずの長い手足を見ているだけでも楽しかった。
バイトが終わったというタオちゃんもやってきて、彼女にも僕の冒険を話した。「えーっ!!」とか「海鼠・・・中国ではお金持ちしか食べられない」とか「警察おっかないね」とかリアクションしてくれる。
その場では真面目な話をする気になれず、イルマは「次いこう」と店を変えた。友人がやっているバーがあるという。僕たちは地上に這い上がり、人の流れに乗ってぞろぞろとあるいた。レイ君にタオちゃんと付き合っているのか?聞くと「言葉と文化の壁は高い」と言われた。そんなものか。「お前のようにはいかない」とレイ君は悲しそうな表情をした。
バーに入る。思ったよりも大きいバーで、奥に行くと個室があった。そこにずかずかと入っていく。
「まずは、水をくれ、人数分だ」
とイルマがオーダーした。人数分の水が配られると「さて、これからどうするんだ?」とイルマが聞いてきた。
僕は水を1口飲んで言った。
「じゃあ、僕の起業プランを発表する」
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