第10話

翔side

「翔平事故に遭って意識不明だって……。」

と紫苑からの言葉から俺は呆然としてしまった。

「とりあえず日葵ちゃんをここに連れてきたほうがいい!」

「わかった!外は寒いから紫苑はここにいて!」

と俺は急いでひーちゃんのところへ向かおうとした。しかし紫苑は俺の腕を掴んで

「私も行く!!1人になると……翔までいなくなっちゃいそう。」

と紫苑は涙目になりながら言った。俺は紫苑に掴まれた腕をギュッと握り

「わかった。紫苑もきて。」

と紫苑が寒くないよう俺のマフラーを巻き、2人で日葵の元へ向かった。外は雪が積もりはじめ、急いで日葵の元へ2人でいく。空気が冷たくて喉が痛くなる。すると日葵が頭に雪をかぶっている姿を見つけた。

「ひーちゃん!」

「日葵ちゃん!!」

と2人で日葵を呼んだ。紫苑がひーちゃんの雪をとり、手を握ると

「翔平くん……来ない……翔平くんになにかあったの?」

とひーちゃんは俯きながらそう言った。紫苑は

「翔平……今さっき事故に遭って意識不明だって……。」

というとひーちゃんは

「そっか……」

という一言しか言わなかった。こんなとき普通なら

「なんで悲しまないの?」

と聞くはず。だけどひーちゃんは記憶障害で記憶を保持することができない。




紫苑と俺はただ何も言えず降ってくる雪を受け止めるだけだった。







次の日俺はひーちゃんと家にいたときひーちゃんが急にコップを落としひーちゃんは頭を抱え

「いたい……!!かーくん!」

ひーちゃんは倒れ意識が戻らず俺はひーちゃんを病院に連れていった。病院のベットで眠るひーちゃんの横で先生が

「杉浦さんの記憶が戻りつつあります。しかし、いつ目覚めるかは分かりません。」

と言いひーちゃんを入院させることになった。するとひーちゃんのお父さんが電話をかけてきた。

「ごめんね。翔くん。いつも苦労をかけてしまって。」

「いえ。大丈夫です。あのいつこちらに来れますか?」

「多分早くて5日にはそっちに着くと思う。」

と言われ俺は少し怒りがあったが、しょうがないと思い

「分かりました。」

と言い電話を切った。病室で眠るひーちゃんを見て俺が代わってあげたら……と思った。泣きそうになると

「翔!日葵ちゃん大丈夫!?」

と紫苑が来てくれた。紫苑はイスに座ると

「翔。少し外で休んできな。私が日葵ちゃん見てるから。」

と紫苑が言ってくれて、俺の顔色が悪いことに気づいた。病室をでて自販機に向かう。帰りに俺はあるものを見つけた。








「冨樫翔平……?」




ひーちゃんの隣の病室の個室を使っている冨樫の名前があった。


















こんな偶然があっていいのだろうか?

冨樫の病室から少し隙間があったのでチラリと除くとそこには体にたくさんの管がつけられている冨樫の姿があった。見るだけで痛々しい姿だった。俺は息がうまく吸えず、過呼吸になりかけた。冨樫の両親だろうか、話をこっそり聞くと

「翔平頑張れ。負けるな……!」

「翔平……日葵ちゃんのこといつまで経っても待たせちゃダメよ……。日葵ちゃんのこと好きなんでしょ?」

とそこでわかった。冨樫はひーちゃんのことが好きだと。俺は幼い頃からひーちゃんが好きだった。だけどひーちゃんには冨樫がいる……そう気づいたら失恋してることに気づいた。だけど冨樫のおかげで紫苑と出会ってからひーちゃんとはまったく違うタイプだけど紫苑といると笑顔も増えるし、なぜか紫苑が欲しい……そんな気持ちになる。これを恋と呼ぶのか……。










冨樫負けるなよ……ひーちゃんを幸せにしてくれ……










そう心から願った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る